2019年07月07日
◆消費増税前のドタバタ劇
ヒット商品応援団日記No742(毎週更新) 2019.7.7

10%の消費増税まで3ヶ月を切った。お得なポイント還元を入り口としたキャッシュレス決済が身近な流通企業で始まった。周知のように、クレジットカード、電子マネー、そしてスマホなどによるコード決済にコンビニ各社が続々と参入し始めてきた。その矢先最大手のセブンイレブンのセブンペイに不正アクセスがあったと報道されている。どの企業も請求支払いという経済関係以外に、顧客と直接コミュニケーションできるポジション獲得を目指す競争が激しくなってきたと言うことだ。それまでのポイント市場の先頭を走ってきたTポイントが顧客へのポイントの他に、加盟した専門店などへの顧客データ情報を提供してきたが、今や顧客接点のある流通企業自ら顧客と直接コミュニケーションし、ポイントというお得をキーワードに継続した顧客単価アップ戦略へと大きく舵を切ったということである。当然、それまでのPCにおける不正アクセスなどの問題はスマホに及び、不正使用のみならず、顧客自身の情報が抜き取られるということも起きてくるであろう。
ところで2008年のリーマンショック以降の消費をキーワードとして整理すると、まず「わけあり」が物販のみならず、ホテルや旅館なといったサービス業にまで広く生活に浸透した。そのわけあり競争の最大眼目は「低価格」であった。その後2014年には消費税8%が実施されるのだが、記憶を辿ればそうだったなと思い起こすように、「駆け込み需要」とその反動による「極端な消費の落ち込み」となり、デフレ消費は加速する。この時も5兆円規模の経済対策を実施したが、成長軌道に乗せることはできなかった。そして、安定した消費期に入る一定の時間経過を踏まえ、多くの企業は値上げに踏み切るのだが、ユニクロを始めほとんどの場合失敗する。こうした「お得」競争の中で、一方では新たな業態に注目が集まる。その代表事例が「俺のフレンチ」のような立ち食い業態で、しかも食材は本格であるが店舗はリノベーションによる低コスト。つまり、従来のビジネス投資概念を変える経営が始まった。その経営の先にあるのがネット通販やメルカリなどのCtoCといったネット上で顧客同士が売買するといった新しい流通も始まっている。また、以前2017年度の「ふるさと納税」における返礼品の「お得度合い」についてブログにも書いたことがあるが、すでに寄付という善意ではなく、デフレにおける「お得」市場にふるさと納税も入ってしまったという時代にいる。ちょうど10年ほど前のわけあり市場という概念が実質的なものとして日常化してしまったということと同じ構図である。
そのお得市場であるが、昨年注目されたスマホ決済PayPayが昨年12月に100億円キャンペーンを実施した。このキャンペーンについてはその広告効果については大きなものが得られたと思うが、一部家電量販店や高額商品などでの使用に偏ったものとなり、わずか10日間で終了してしまった。しかし、利用頻度を高めるために、利用限度額を制限してしまった結果はどうであったか?このPayPayの事例を見ても分かるように、20%という「お得」は利用額が小さければ利用しないということであった。今回の7pay導入の意味合いは電子カードnanacoからの切り替えの意味が大きく、7payへと統合されていくであろう。その後不正アクセスが起こるのだが、被害顧客は約900名で被害金額は5500万円であると記者会見で報告されている。ところで、運営会社の記者会見で不正アクセスの防御法として二段階認証をなぜ取らなかったのかという質問に答えることができなかっただけでなく、その意味を知らなかったことが明らかになり、最大手のセブンイレブンとしてはなんともお粗末な決済サービスであることが露呈した。この程度の理解で、顧客データを基にしたプロモーションなど果たして可能なのか御門に思える。しかし、それ以上に深刻なのは、犯人にはSNSを通じて複数のIDとパスワードが送られている事実である。個人データの中でも最も重要なセキュリティを必要とするIDとパスワードである。情報化社会という便利さの裏側には、過剰な情報によってどんどん見えなくなっていく時代の象徴でもある。
SNSに対する個人情報の保護が世界的な問題となっているが、それはAIと共に次代のキーワードとなっているいわゆるビッグデータの問題でもある。かなり前になるが、「なりすまし」が社会問題化した時があった。簡単に言ってしまえばい、パスワードさえ分かれば他人のPCに入り込んで本人になりすますといった悪意あることが問題となったことがあった。今は同じようにスマホに簡単に入り込んで本人の知らないところで、クレジットカードからスマホにお金を移動させ買い物をするといった犯罪も当然起きてくる。
ところで先日全国の路線価が発表されたが、ここにきてマンションをはじめとした不動産市況に暗雲が立ち込めはじめている。その市況であるが不動産経済研究所によれば、首都圏5月度のマンション市場動向であるが、発売は10.4%減の2,206戸。都区部が36.3%減と大きく落ち込む。また価格は戸当たり6,093万円、単価89.4万円で単価は5カ月ぶりに下落。近畿圏のマンション市場の6月の動向は、発売は6.2%減の1,388戸。5カ月連続で前年同月を下回る。m²単価は2カ月連続のダウン。契約率は67.7%、12カ月ぶりに70%を下回るとのこと。
ここ数年、首都圏をはじめとしたマンショッ価格は上昇し、2017年にはバブル期以来の高水準であった。しかし、2018年の首都圏の新築マンションの平均価格は6年ぶりに下落へと転じ、前述の不動産経済研究所のレポートのように2019年に入っても低水準で推移している。背景には建設工事コストの増大からマンション価格の引き下げに踏み切れないという事情と共に、高層タワーマンション人気の価格設定に下支えされているとの専門家の指摘もある。中古マンションのリノベーション市場に消費移動は見られるが、それも消費者の眼は多様な選択肢へとシビアに向けられているということだ。但し、不動産不況になるかと言うとまだそんな状況にはないようだ。その指標となるのが新規発売戸数に対する契約戸数で、3月は2,410戸で月間契約率は72.2%と好調であったとのこと。ちなみに、前月2月の契約率は低く65.5%とのこと。
一昨年当時はオリンピック特需もあり、2021年ごろまでは旺盛な建設需要が見込まれると多くの専門家は予測していた。しかし、これから数ヶ月の動向を見ていかなければならないが、これまでの「考え方」wp変えていく必要が生まれてくるかもしれない。
こうした不動産市場の状況を見ていくと、いつか辿った道ではないかと危機感を覚える。ユニクロの失敗からどう立て直し順調へと転換したかは以前にもブログに書いたので重複はしないが、結論から言えばユニクロならではの固有の世界を見つけたからであるということに尽きる。その固有の世界とは「ライフスタイルに沿った服」のMD開発であり、他の企業より先駆けた「素材開発」によるものでいわば独走状態にあるということである。競合するGAPともH&Mとも異なるコンセプトポジションをとっており、唯一遅れているのはネット通販の世界となっている。
言葉で言うとなんだと言うことになってしまうが、オンリーワンを目指していると言うことである。そうしたオンリーワンコンセプトとそれを可能とした開発力を持たない企業・事業は極論を言えば現時点においては「値上げ」をしてはならないと言うことである。主にメーカーであるが、今年に入り値上げが相次いだのは、物流コストや原材料の高騰によるものとその理由を説明しているが、実は消費増税後は勿論のこと、真近であっても値上げできないと考えているからである。値上げ時期は多くの場合3月か4月であり、3ヶ月を切った7月以降はおそらく皆無になるであろう。
また、メーカー以外にも3箇所程度の観察にす過ぎないが、SC(ショッピングセンター)のリニューアルに際し、食品や飲食の導入テナントのメニュー価格を上げているところと、逆に下げているところとに二分された状態が見られた。今のところ、値下げしたSCの専門店は順調であるが、値上げしたSCの専門店は思ったような売り上げが取れず苦戦しているという実情となっている。
何故、こうした増税前の主要な企業の「動き」をブログに書いているのかも、大きく言えば日本のGDPの60%近くにもなった消費国、成熟国の今後のあり方を左右するのではないかと言う「感」がするからである。仮説や推測というより感に過ぎないのだが、「お得」に企業も消費者も、過剰に反応し過ぎているのではないかという認識からである。一人ひとりの消費が日本経済の進路を決めていく時代にある。であればこそ、もっと俯瞰的に全体を見ていかなければならない。
今回のセブンpayのドタバタ劇についてもそうだが、「お得」の本質を理解していないと私は考えている。余裕のない国、企業も個人も見えなくなってしまった感がしてならない。消費増税前の「お得」に右往左往しているが、キャッシュレスにおけるコード決済のポイント還元競争も10月になれば終わる。新聞報道程度の理解でしかないが、トランプ大統領の発言のように、8月になれば日米通商交渉の内容、どんな要求がなされているかが表面化するであろう。そして、米中における貿易戦争は長期化するうえに、日韓においても出口の見えない経済摩擦が起き、更に「余裕」のない空気が社会を覆ってくる。少し前のブログに「80 50問題」を入り口に日本の社会構造それ自体が新たなフェーズに入ってきており、社会の空気は一層澱んだものとなっている。「お得」競争はこれからも続く。そして、10月以降の消費市場は縮小していくであろう。こうした状況にあっては基本に忠実であることが問われている。その基本とは何か、言うまでもなく顧客主義以外にはない。(続く)

10%の消費増税まで3ヶ月を切った。お得なポイント還元を入り口としたキャッシュレス決済が身近な流通企業で始まった。周知のように、クレジットカード、電子マネー、そしてスマホなどによるコード決済にコンビニ各社が続々と参入し始めてきた。その矢先最大手のセブンイレブンのセブンペイに不正アクセスがあったと報道されている。どの企業も請求支払いという経済関係以外に、顧客と直接コミュニケーションできるポジション獲得を目指す競争が激しくなってきたと言うことだ。それまでのポイント市場の先頭を走ってきたTポイントが顧客へのポイントの他に、加盟した専門店などへの顧客データ情報を提供してきたが、今や顧客接点のある流通企業自ら顧客と直接コミュニケーションし、ポイントというお得をキーワードに継続した顧客単価アップ戦略へと大きく舵を切ったということである。当然、それまでのPCにおける不正アクセスなどの問題はスマホに及び、不正使用のみならず、顧客自身の情報が抜き取られるということも起きてくるであろう。
ところで2008年のリーマンショック以降の消費をキーワードとして整理すると、まず「わけあり」が物販のみならず、ホテルや旅館なといったサービス業にまで広く生活に浸透した。そのわけあり競争の最大眼目は「低価格」であった。その後2014年には消費税8%が実施されるのだが、記憶を辿ればそうだったなと思い起こすように、「駆け込み需要」とその反動による「極端な消費の落ち込み」となり、デフレ消費は加速する。この時も5兆円規模の経済対策を実施したが、成長軌道に乗せることはできなかった。そして、安定した消費期に入る一定の時間経過を踏まえ、多くの企業は値上げに踏み切るのだが、ユニクロを始めほとんどの場合失敗する。こうした「お得」競争の中で、一方では新たな業態に注目が集まる。その代表事例が「俺のフレンチ」のような立ち食い業態で、しかも食材は本格であるが店舗はリノベーションによる低コスト。つまり、従来のビジネス投資概念を変える経営が始まった。その経営の先にあるのがネット通販やメルカリなどのCtoCといったネット上で顧客同士が売買するといった新しい流通も始まっている。また、以前2017年度の「ふるさと納税」における返礼品の「お得度合い」についてブログにも書いたことがあるが、すでに寄付という善意ではなく、デフレにおける「お得」市場にふるさと納税も入ってしまったという時代にいる。ちょうど10年ほど前のわけあり市場という概念が実質的なものとして日常化してしまったということと同じ構図である。
そのお得市場であるが、昨年注目されたスマホ決済PayPayが昨年12月に100億円キャンペーンを実施した。このキャンペーンについてはその広告効果については大きなものが得られたと思うが、一部家電量販店や高額商品などでの使用に偏ったものとなり、わずか10日間で終了してしまった。しかし、利用頻度を高めるために、利用限度額を制限してしまった結果はどうであったか?このPayPayの事例を見ても分かるように、20%という「お得」は利用額が小さければ利用しないということであった。今回の7pay導入の意味合いは電子カードnanacoからの切り替えの意味が大きく、7payへと統合されていくであろう。その後不正アクセスが起こるのだが、被害顧客は約900名で被害金額は5500万円であると記者会見で報告されている。ところで、運営会社の記者会見で不正アクセスの防御法として二段階認証をなぜ取らなかったのかという質問に答えることができなかっただけでなく、その意味を知らなかったことが明らかになり、最大手のセブンイレブンとしてはなんともお粗末な決済サービスであることが露呈した。この程度の理解で、顧客データを基にしたプロモーションなど果たして可能なのか御門に思える。しかし、それ以上に深刻なのは、犯人にはSNSを通じて複数のIDとパスワードが送られている事実である。個人データの中でも最も重要なセキュリティを必要とするIDとパスワードである。情報化社会という便利さの裏側には、過剰な情報によってどんどん見えなくなっていく時代の象徴でもある。
SNSに対する個人情報の保護が世界的な問題となっているが、それはAIと共に次代のキーワードとなっているいわゆるビッグデータの問題でもある。かなり前になるが、「なりすまし」が社会問題化した時があった。簡単に言ってしまえばい、パスワードさえ分かれば他人のPCに入り込んで本人になりすますといった悪意あることが問題となったことがあった。今は同じようにスマホに簡単に入り込んで本人の知らないところで、クレジットカードからスマホにお金を移動させ買い物をするといった犯罪も当然起きてくる。
ところで先日全国の路線価が発表されたが、ここにきてマンションをはじめとした不動産市況に暗雲が立ち込めはじめている。その市況であるが不動産経済研究所によれば、首都圏5月度のマンション市場動向であるが、発売は10.4%減の2,206戸。都区部が36.3%減と大きく落ち込む。また価格は戸当たり6,093万円、単価89.4万円で単価は5カ月ぶりに下落。近畿圏のマンション市場の6月の動向は、発売は6.2%減の1,388戸。5カ月連続で前年同月を下回る。m²単価は2カ月連続のダウン。契約率は67.7%、12カ月ぶりに70%を下回るとのこと。
ここ数年、首都圏をはじめとしたマンショッ価格は上昇し、2017年にはバブル期以来の高水準であった。しかし、2018年の首都圏の新築マンションの平均価格は6年ぶりに下落へと転じ、前述の不動産経済研究所のレポートのように2019年に入っても低水準で推移している。背景には建設工事コストの増大からマンション価格の引き下げに踏み切れないという事情と共に、高層タワーマンション人気の価格設定に下支えされているとの専門家の指摘もある。中古マンションのリノベーション市場に消費移動は見られるが、それも消費者の眼は多様な選択肢へとシビアに向けられているということだ。但し、不動産不況になるかと言うとまだそんな状況にはないようだ。その指標となるのが新規発売戸数に対する契約戸数で、3月は2,410戸で月間契約率は72.2%と好調であったとのこと。ちなみに、前月2月の契約率は低く65.5%とのこと。
一昨年当時はオリンピック特需もあり、2021年ごろまでは旺盛な建設需要が見込まれると多くの専門家は予測していた。しかし、これから数ヶ月の動向を見ていかなければならないが、これまでの「考え方」wp変えていく必要が生まれてくるかもしれない。
こうした不動産市場の状況を見ていくと、いつか辿った道ではないかと危機感を覚える。ユニクロの失敗からどう立て直し順調へと転換したかは以前にもブログに書いたので重複はしないが、結論から言えばユニクロならではの固有の世界を見つけたからであるということに尽きる。その固有の世界とは「ライフスタイルに沿った服」のMD開発であり、他の企業より先駆けた「素材開発」によるものでいわば独走状態にあるということである。競合するGAPともH&Mとも異なるコンセプトポジションをとっており、唯一遅れているのはネット通販の世界となっている。
言葉で言うとなんだと言うことになってしまうが、オンリーワンを目指していると言うことである。そうしたオンリーワンコンセプトとそれを可能とした開発力を持たない企業・事業は極論を言えば現時点においては「値上げ」をしてはならないと言うことである。主にメーカーであるが、今年に入り値上げが相次いだのは、物流コストや原材料の高騰によるものとその理由を説明しているが、実は消費増税後は勿論のこと、真近であっても値上げできないと考えているからである。値上げ時期は多くの場合3月か4月であり、3ヶ月を切った7月以降はおそらく皆無になるであろう。
また、メーカー以外にも3箇所程度の観察にす過ぎないが、SC(ショッピングセンター)のリニューアルに際し、食品や飲食の導入テナントのメニュー価格を上げているところと、逆に下げているところとに二分された状態が見られた。今のところ、値下げしたSCの専門店は順調であるが、値上げしたSCの専門店は思ったような売り上げが取れず苦戦しているという実情となっている。
何故、こうした増税前の主要な企業の「動き」をブログに書いているのかも、大きく言えば日本のGDPの60%近くにもなった消費国、成熟国の今後のあり方を左右するのではないかと言う「感」がするからである。仮説や推測というより感に過ぎないのだが、「お得」に企業も消費者も、過剰に反応し過ぎているのではないかという認識からである。一人ひとりの消費が日本経済の進路を決めていく時代にある。であればこそ、もっと俯瞰的に全体を見ていかなければならない。
今回のセブンpayのドタバタ劇についてもそうだが、「お得」の本質を理解していないと私は考えている。余裕のない国、企業も個人も見えなくなってしまった感がしてならない。消費増税前の「お得」に右往左往しているが、キャッシュレスにおけるコード決済のポイント還元競争も10月になれば終わる。新聞報道程度の理解でしかないが、トランプ大統領の発言のように、8月になれば日米通商交渉の内容、どんな要求がなされているかが表面化するであろう。そして、米中における貿易戦争は長期化するうえに、日韓においても出口の見えない経済摩擦が起き、更に「余裕」のない空気が社会を覆ってくる。少し前のブログに「80 50問題」を入り口に日本の社会構造それ自体が新たなフェーズに入ってきており、社会の空気は一層澱んだものとなっている。「お得」競争はこれからも続く。そして、10月以降の消費市場は縮小していくであろう。こうした状況にあっては基本に忠実であることが問われている。その基本とは何か、言うまでもなく顧客主義以外にはない。(続く)
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