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2012年11月19日

◆劇場型政治の行方 

ヒット商品応援団日記No538(毎週更新)   2012.11.19.

過剰情報の時代、しかもデフレ下にあって、一定の価格帯、より安いゾーン価格への消費集中が起き、消費増税はそうした集中を加速するであろうと前回のブログに書いた。そして、過剰情報とは、選択肢があるようでいて、実は「何」を「どう」選んで良いのか分からないということである。結果、どのような消費現象が起きるか、一極集中、一店集中、そうした集中は話題を呼び、それらが連鎖して行列が絶えない、という現象となって表れる。

このブログは消費を入り口とした生活者のライフスタイル変化をテーマとし、政治ブログではない。ただ、過剰情報時代の先駆けとして小泉元総理が演出し、自ら舞台へと上がったいわゆる「小泉劇場」というメディア化社会の特徴について書いたことがあった。今回の野田・安倍党首討論における衆院解散劇を見た時、そのサプライズ度は小さいものの、当時の郵政解散を思い出させた。過剰な情報が錯綜するなかでのコミュニケーションの在り方として、意表をついた強烈なインパクトのあるメッセージでないと伝わらない時代の到来であった。そして、私は当時(2005.8.13.)”小泉総理の「ブランド戦略」分析”というテーマで次のようにブログに書いた。

『今回の解散サプライズをより具体的にブランディングの視点で分析をしてみたいと思う。勿論、ブログにはおびただしい意見が出ているが(これはこれで今後の選挙メディアとして活用されていくものとは思うが)政治的にその良否、意見を述べるものではない。さて、「小泉ブランド」を代表する「何か」(=構造改革の旗手)という視点で分析すると、

戦略−1:本業、得意領域戦略/郵政民営化は勿論小泉総理にとってライフワークであり、得意としている領域での競争である。勝負をするならこのテーマでということになる。
戦略−2:一点突破戦略/構造改革は「分かりにくい」テーマである。この分かりにくさを郵政民営化を入り口→構造改革へとした図式のように一点=郵政民営化という特化戦略を採っている。
戦略−3:劇場舞台戦略/特に際立っているのがこの戦略である。総理経験者でこれほどメディアに取り上げられた人はいない。歴代の総理も多くの舞台に上がってはいるが小泉総理はテクニックではなく生来の「役者」としてである。パフォーマンスとして揶揄される場合もあるが、回数化していくに従い、いつしか、それも「小泉らしさ」を形成していく。ブランドとして言うならば、ある種の期待値を抱かせる訳である。』

過剰情報時代における期待値創造を目指すブランド戦略、コミュニケーション戦略の構図としては上記の通りである。小泉劇場と野田劇場の類似点を指摘する政治評論家やジャーナリストは上記「劇場舞台戦略」を踏まえたものだ。そして、こうした劇場型コミュニケーションが成立するのはTVメディアの露出を前提とする。
既成政党vs第三極という図式を創ってTVメディアに露出してきたのが日本維新の会の代表代行である橋下大阪市長である。最近ではその合流が話題となっている石原前都知事も劇場型舞台戦略を採る役者である。菅内閣の内閣官房参与にあの劇作家であり演出家でもある平田オリザさんが演出していたことは周知の通りである。多くの政党が政治家がこうした劇場型サプライズ戦略を採っているのも、過剰情報時代ならではのことである。特に今回は短期勝負の解散であり、この短期勝負を勝たない限り、次の政界再編へのチャンスはないと考えているからであろう。

さて、冒頭の文章に戻るが、『過剰情報とは、選択肢があるようでいて、実は「何」を「どう」選んで良いのか分からないということである。』消費と政治は次元の異なる選択ではあるが、投票行動は人気度ランキングと同じであると指摘する専門家もいる。消費の場合、せいぜいランキング上位1〜2位しか選択の幅はない。東京には東急系のコンビニ型ランキングショップがあるが、ランキングの下位グループ商品は売れ行きは良くないと言われている。書店のプロが選んだ本屋大賞も同様である。
今回の総選挙を戦う政党数は14となっている。過剰政党、政党デフレと言ったら少数政党の方々から叱責を受けると思うが、次の再編を見据えた少数党である。覚えきれない程の政党数にあって勝負を分けるのは、まずは情報量である。その情報量は常に「鮮度」を保たなければならない。橋下大阪市長率いる大阪維新の会が世論調査などの期待値が徐々に下がりつつあるなか、東京という最大メディア発信地にいる石原太陽の党が合流することは、こうした情報の鮮度維持をはかるための戦略である。

小売業においては1週間の間売り場がそのままであったら、この1週間売り場は死んでいたと指摘される。スーパーも百貨店も曜日単位、時間単位で売り場を変化させているのが普通である。いつも瑞々しく注目を惹きつける魅力的売り場づくりは基本だ。例えば、スーパーに買物に来る主婦の6〜7割は売り場を見て、その日の献立を決める。これが基本であるが、昨年秋ぐらいから、一部のオピニオン消費者の間で「塩麹」が注目され始めた。多くの商品はそれで終わる場合が多いのだが、塩麹の場合は塩麹を使ったメニュー・レシピとして雑誌メディアが取り上げ、そしてTVメディアも取り上げて一斉にマスプロダクト化していく。更にはファミレスや居酒屋といった飲食施設にまで塩麹鍋といったように浸透するに至る。そうした広がりは取り入れやすくしたメニュー化と美味しい健康と共にその効能によってである。
選挙での「広がり」という視点に立てば、メニュー化とは政策であり、効能とは当該政党が果たす力、実現力ということになる。第三極で言うならば、連携・合流に際し、橋下大阪市長がこだわっている政策一致こそが広がるパワーとなると考えているからであろう。そして、結果太陽の党が合流したのである。これはある意味必然である。しかし、今回の選挙の争点となる政策は消費増税、原発、TPP、地方分権等極めて多い。政党数も多く、しかもわずか1ヶ月程で選択投票という答えを出さなければならない。
その手法の是非ではなく、小泉劇場が成功したのは上記1及び2の戦略という単純明確で分かりやすかったからである。つまり、ワンフレーズポリテクスと揶揄されたが、極めて分かりやすいメッセージで、得意とする政策テーマ郵政民営化の是非を問う一点突破戦略であったからである。しかし、当時の情報環境から更に過剰で複雑な情報環境となっている。

こうした過剰情報の時代の選択は小泉劇場を経て、今回の政治劇場がスタートした。この10年間の学習体験はどのような結果となって表れてくるのであろうか。過剰情報時代の選択が難しい現実にあって、しかし賢明な選択を消費の面においては既に行動してきたと思う。
そして、政治に過剰な期待はしないといっても、政治は生活そのものであり、選択しなければならない。過剰情報を発信しているマスメディアは機会均等という原則に立ち、14党を次から次へとTV出演させる。そして、あたかも選択出来るようにと政党毎の政策比較表を作る。しかし、そうした表面だけの政策比較は、分かりにくく混乱させるだけである。この10年間学んできたことは、劇場型政治のシナリオや演出の奥にある実像にせまることであった。つまり、その実像とは、個人が信頼し得る個人としての知恵ある真摯な政治家、その目指す政策に投票することであろう。しかし、次から次へと過剰情報の波が押し寄せ、既に興味本位の刺客情報が飛び交い、極めて困難な情報環境にある。結果、残念ながら分からないまま選択することになるかもしれない。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:49Comments(0)新市場創造

2012年11月12日

◆多発する集中化現象

ヒット商品応援団日記No537(毎週更新)   2012.11.12.

個人放送局という言葉を使って、膨大に膨れ上がった受発信メディアの有り様を表現したことがあった。勿論、インターネットの普及によるものであるが、過去10年間で流通する情報量が530倍になったと総務省からの報告もある。そして、こうした情報の消化不良がいたるところで起きている。それが単なる消化不良程度で済めば良いが、「食べログ」のやらせ問題のように、判断基準を丸ごとネット上のランキングサイトや口コミ等に求める生活者が圧倒的に多くなった。そして、スマートフォンの普及は更に便利な道具として身近な、いやスマホ依存症のような情況に至りつつある。簡単に言ってしまうと、情報リテラシーの課題になると思うが、過剰情報時代とは、活用すべき判断基準をなかなか持ち得ない時代のことである。結果、どういうことが起きるか、膨大な情報を前にして一見選択肢が豊かであるように思えるが、逆に限られた特定情報のなかの選択となる。つまり、特定情報への集中現象が多発するということである。

消費基準の多くは、自らの実体験と知識、見るだけでなく触って感触を確かめたり、実際に着てみたり、食であれば食べてみたりして、時には店頭のスタッフに疑問をぶつけたり、そんなリアルな物差しで購入し、消費し、学習してきた。最近ではネット通販サイト運営会社と百貨店といった有店舗とのコラボレーションによって、いわば実体験付き通販という解決策も生まれ、市場の広がりが促されてきた。こうしたバランスのとれた販売もあるが、まだまだ過剰情報を前に特定情報に右往左往してしまうのが現実であろう。こうした情報環境にあって、1年数ヶ月後に実施される消費増税によってどんな変化をもたらすか考えてみたい。

こうした情報環境下にあって、生活者の多くがどんな心理にあるか、デフレ心理について認識することが必要でその心理は以下のように整理することが出来る。

■不況感/10年前と較べ、年100万円弱の収入減。平成23年度のアルバイトを含めた勤労者の収入は前年 比較で年間4万円下がり続ける。つまり、消費を左右する意識「未来に対し悲観意識」が強まっている。
■幸福感/仕事を求めて都市へ、大企業へ、しかし第二次就職氷河期。そして、海外ビジネスへの就職ではなく、内向きな幸福観。
■未来意識/安定、安心、内へと向かう。就職は正社員、公務員人気。意識は過去へ、歴史へ。

つまり、その心理を一言でいうならば、安定を求めて内へ、中心へと向かうということである。そうした心理を消費行動で表現すれば「巣ごもり消費」となる。巣から顔を出してキョロキョロ見回し、関心事が「価格」であればよりお得な低価格へと一斉に向かう「集中消費」となる。巣の中には限られた特定情報しかない。しかし、外の世界に情報を求める時、あまりの「過剰な情報」に立ちすくんでしまう、というのが素直な感情であろう。これが情報の時代の特徴である。但し、前回の「青春フィードバック」で指摘したように、団塊世代だけは比較的自由に「巣」から出たり入ったりしている。

そのような情報の時代にあっては、失敗を含めた体験学習によって関心事はどんどん一定の方向に収束していく。例えば、東京で話題となっているのがワンコイン(500円)ランチであるが、昼時には行列となる。他にも出かけるには遠い山間のレストランにも他には無いオリジナルメニューがあってここでも行列となる。同じように3ヶ月先まで予約で一杯の旅館もあればレストランもある。東京大崎で行列ができるつけめん専門店である六厘舎が東京駅の地下街に移転したが、更に長い行列が出来ている。
ところが2年程前は行列に30分も並ばないと買えなかった商品が今では待つことも無く買うことができる。商品名を出すと問題があるので出さないが、そうした話題商品はいくらでもある。いわゆる「ブーム」に乗った商品で、その話題持続時間はどんどん短くなってきている。そして、売れない商品、売れない店と、ヒット商品、行列店とに二分されることとなる。そこそこほどほどといった販売可能なのはブランドとして確立し、しっかりとしたリピーター顧客・フアン顧客がいる場合だけで、それすらも極めて少ないのが現状である。つまり、2極化というより、一極集中、一店集中、になるということである。商品の鮮度は情報の鮮度であり、時間経過と共に鮮度は落ちてくる。情報にも賞味期限があるということだ。

そうした過剰情報の時代にあって、消費増税はどんな変化をもたらすかである。間違いなく、集中現象が更に多発する。そして、デフレから脱却できない日本経済にあって、想定されることは「ゾーン価格」に集中することとなる。例えば、東京においては前述のようにワンコイン(500円)ランチが人気となっているが、こうした動きに対しあのマクドナルドはフィレオフィッシュを始めとしたマックランチセットメニューを390円としたプロモーションを行なっている。消費増税実施期の2014年4月には4コイン(400円)、更には3コインといった「ゾーン価格」にランチメニューが集中することが予測される。

ところで、この「ゾーン価格」の基本単位は100円である。周知のように2000年代半ば以降ダイソーを筆頭に急成長している「100円ショップ」であるが、リスクを負った自社開発商品にはオリジナル機能ばかりでなく、デザインにも優れたものが多い。こうした生活雑貨だけでなく、生鮮コンビニのローソンもそうであるが、中堅食品スーパーのいなげやでは生鮮三品にも100円売り場ができ、同じ食品スーパーのサミットストアにも100円売り場が作られている。
今年7月に大阪ミナミのアメリカ村にオープンしたデンマークの激安雑貨ショップ「タイガー」もこうした「ゾーン価格」に位置した専門店である。このタイガーは3ヶ月半の売上予算をたった3週間程で売上てしまい、商品供給が追いつかないまま臨時休業を繰り返した。まるでゲリラ豪雨のような売れ行きであった。これも一極集中、一店集中というデフレ時代を象徴する集中消費の事例であろう。

こうした「ゾーン価格」への集中はあらゆるところに波及していく。食の分野では、人気のブッフェスタイル、食べ放題のメニュー価格も内容にもよるが1000円を切るゾーン価格へと向かっている。例えば、スイーツの食べ放題にはティーン女性で行列が作られているが、現在の1500円から1000円を切るゾーン価格に進化していくということである。
食品スーパーはエブリデーロープライスが基本となり、アウトレットも、LCCも常態化し、ほとんどの商品がわけありとなった。過剰情報社会、デフレ経済下の消費は一極消費となり、消費増税はそうした集中消費の多発を更に加速させる。どのゾーンに価格が移行し始めているか、見極めることが最重要課題となった。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:44Comments(0)新市場創造

2012年11月06日

◆青春フィードバック市場

ヒット商品応援団日記No536(毎週更新)   2012.11.6.

ブログを書き始めて7年余となるが、閲覧のキーワードで一番多いのが「未来予測の方法」である。ところがこの一年ほど、特に消費増税法案が国会を通過してから急激に多くなったキーワードが「団塊世代」である。
その団塊世代であるが、今年から年金受給が本格的に始まり、自由に時間を使うことが可能となった。平日の映画館には団塊世代を中心としたシニア世代で溢れており、ゴルフ場にはシニア世代の夫婦とおぼしきカップルがラウンドしている。それこそ国内外の旅行、日帰りグルメバス旅行から、今年1月に地中海クルーズ船の坐礁事故に遭った日本人観光客の多くはこの世代が占めていた。残念なことであるが、直近では中国万里の長城で遭難したのもまさにこの世代だ。
数年前から私はこのシニア世代を「5得世代」と呼んできた。どんな「5得」を持っているかと言うと、

1,「金持ち」/1450兆円の金融資産の内、60才以上のシニア世代が約6割/900億円を保有
2,「時持ち」/365日、24時間が自由時間、しかし暇人とは真逆の忙しい元気人
3,「体験持ち」/人生、趣味、仕事等豊かな経験、その表現舞台を求めて
4,「モノ持ち」/幼少期のモノ不足を経験して得た好きな家、生活道具、コレクション
5,「友持ち」/家族、仲間、ペット、子育てを終えた「友達」

そして、この世代約4000万人の年間消費支出が2011年には100兆円を突破したと言われている。こうした背景から当ブログを参照しているのだと思う。先日友人と話をした時も、ビジネス対象として、今使えるお金を持っているのはシニア世代と政府であると半分冗談まじりに話をした。「誰を顧客とするのか」がビジネス、マーケティングの最大課題となり、このボリュームマーケットを誰もが狙っていることが分かる。
そして、このマーケットはその子どもである団塊ジュニアにもつながっており、「母娘消費」とか「3世代消費」と呼ばれてきたマーケットで以前からパック旅行にもメニューとしてあったものだ。今年の百貨店のおせち料理にもこの「3世代おせち」が登場している。そのお重はと言うと、上から孫向け、真ん中は夫婦向け、下には祖父母向け、といった構成である。勿論、支払いは祖父母である。

このマーケット理解については「団塊世代」というキーワードでブログを読んでいただくと分かるが、「5得」が向かう先の第一は「青春」フィードバックである。この青春フィードバックには2つの意味がある。1つは当然個人の歴史・時間へと「好き」のテーマを遡り、少年少女となって生きてみたいという欲望である。より具体的に言えば田舎暮らしもそうであるし、蕎麦好きが高じて蕎麦屋を開業したり、子どもの頃なりたかったパン屋を始めたり、そんな小さな起業も青春フィードバックの一つである。
団塊世代の青春期はまだまだ娯楽の乏しい時代であった。映画はそんな娯楽の中心を占めていたが、時代と共に楽しみ方も多種多様となり、忘られてしまう存在になりかけている。そんな映画であるが、シニア割引もあって、どの映画館もシニア世代で一杯である。最近では高倉健主演の映画「あなたへ」もそんなヒット作である。特に高倉健は団塊世代にとって特別な存在、青春時代の空気感を象徴した存在であるからだ。
もう1つが、青年期に出会った欧米文化、音楽、ファッション、食事・・・・・。いわゆるリバイバル、復刻として既に市場化されている。その代表的ヒット商品が1966年初来日したビートルズの武道館ライブの復刻版であろう。周知のようにCDではなく、当時と同じドーナツ盤で発売されたが限定販売ということもあり、超レア物となっている。こうしたシニア世代に向けた新商品もあるが、「昭和」をテーマとしたリバイバル商品に新しさを感じる若い世代が増えている。その代表商品がサントリー角のハイボールである。古(いにしえ)が今新しいとした商品である。
ところでこうした「洋」に振れたライフスタイルから「和」のライフスタイルへと、過去へ歴史へと遡っていく和ブーム潮流の中にシニア世代の興味関心事もある。その最大理由は、限りある人生時間という年齢によるもので、変化・刺激の「洋」と、深み・安定、どこか懐かしい「和」、この2つがからみあいながら今がある。いわゆる日本回帰志向の潮流であるが、時代の閉塞感からの脱出の意味も含め、若い世代へと広がり、周知の通り多くのヒット商品が生まれてきた。

さて、その青春という過去を巡る旅であるが、過去はこの60数年によって変貌してしまっている。修学旅行先であった京都や奈良など環境条例によって残っている過去もあるが、その多くは都市化し少年少女期の風景は既に無い。亡くなられた地井武男さんの「ちい散歩」に共感したのもこのシニア世代で、横丁、路地裏に今なお残る昭和の街並や自然、そこに生きる人情溢れた風景に青年期の自分を映し出しているのだと思う。

そうした過去へと向かう「青春」と共に、変化・刺激を求めた「青春」もある。「ちい散歩」の横丁、路地裏散歩の舞台を地球に広げれば、今回遭難に遭った中国万里の長城のトレッキングツアーになる。いわゆる一般的な観光コースから外れたほとんど観光客が行かない万里の長城への旅行で、秘境ツアーの一つである。今が青春、誰も行かない未知への冒険と言っても過言ではない。
こうした変化・刺激を求めた消費行動は実は至る所に出てきている。例えば、今や格安航空の利用が移動選択肢の一つとなったLCCであるが、時間に余裕のあるシニア世代を狙ったもので新しい旅市場の開拓に役立っている。ただ安いからということではなく、話題のLCCに乗ってみたいというシニアもいる。私の友人の一人はJAL系のジェットスターでオーストラリア・ゴールドコーストへと出かけたが、HPの片隅に小さく記載されていたオプションの有料サービスを経験し、LCCの使い方を面白がっていた。つまり、新しい、珍しい、面白い、そんな変化と刺激を求めた消費である。

日経MJなどは団塊世代市場攻略の難しさを記事としているが、今回取り上げた「青春」市場といっても多様な側面を持っており、このことは団塊世代市場に限ったことではない。いずれにせよ、この世代の活発な行動が消費を牽引していくことは事実である。私はリーマンショック後の消費市場を「巣ごもり消費」と呼んだが、唯一巣から出ていたのが団塊世代である。消費増税という困難な市場が予測されるなかで、その突破口は多くの専門家が指摘するようにこの世代であることは間違いない。
映画館ばかりか、今やウイークデーのゲームセンターにはシニア世代のリピーターが溢れ、スマホの主要ユーザーはこの世代へと移ってきた。従来女性だけと見られてきたダンススタジオどころか、ホットヨガまでもが男性シニアを見かけるようになった。つまり、従来のシニアという見方を捨てなければならないということだ。そこに市場攻略の着眼がある。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 14:18Comments(0)新市場創造