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2016年12月25日

◆真逆の時代に向かって 

ヒット商品応援団日記No667(毎週更新) 2016.12.25.

まもなく新年を迎えようとしているが、この1年起こったことはこれから先5年10年のパラダイム転換となるようなことばかりであった。簡単に言ってしまえば、時代のベクトルが逆方向に向かう潮流が表に出てきたということである。実は2016年に入り年頭ブログでは「混迷の年が始まる」というテーマで次のように書いた。

『年明け早々、外にも内にも、嫌な事件が続発している。昨年横浜都筑区の傾きマンション事件の時、「再び、心は内へと向かう 」とブログに書いたことがあった。杭打ちどころかほとんどの商品は見えないところで作られており、一度の嘘はたちまち疑心暗鬼を生むそんな心理市場となっている。CoCo壱番屋は異物が混入しているのではということから自主的に廃棄処分としたが、ペヤングやきそばもそうであったが、日本マクドナルドのその後を良き反面教師として学んでいる。よくリスクマネジメントというが、そんなテクニカルなことではなく、心底顧客を信じ公開し真摯に応えるという商人として至極当たり前のことが求められている。そんな混迷の年が始まった。』

「見えないところ」で生まれている問題や危機に対し、こうした暗い予感のブログを書いたのだが、これは昨年11月に起こったパリ同時テロを踏まえてのことであった。以降国内外には従来の常識や価値観、思い込みとは真逆の変化が次々に起こった。特に、海外で生起している新たな潮流については「見えない世界」そのものであった。半年後、英国では6月23日に欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う国民投票が行われた。多くの予想、特に日本のマスメディアやEUに関する国際政治の専門家はこぞって離脱はないと予想&断言していた。
ちょうど2016年を半分経過した夏に、これまでの価値観とは異なる大きな潮流が政治に、経済に、社会に、当然ながら国内外に起き始め、未来塾において「パラダイム転換から学ぶ」と題したブログを私は書き始めた。それは一種の気づきであったが、スタートした最初のブログではその気づきを次のように書いた。

『英国ではEUからの離脱が国民投票によって決まるという「大転換」の地震が突如として発生し、日本も過去大きな転換を経験してきたことを思い起こさせた。そして、その転換から生まれる変化の痕跡は今なお街のいたるところに残っている。そうした痕跡を抽出し、それがどんな転換期のマーケティングとしての意味があるのか、無いのかを読み解いていくシリーズとする。その巨大地震から生まれる転換を引き起こしているのが「グローバル化」である。ローカルからグローバルへ、そうした価値潮流は経済的利益を背景に日本のみならず世界のメガ潮流として戦後続いてきた。しかし、今回の英国のEU離脱に見られるように、統合から離脱・独立へという内向きな精神的価値観が強く見られた。』

こうした今まで進んできた従来の価値観、当たり前として受け止めてきた価値観、そのキーワードが「グローバル化」であった。日本の場合、資源を持たない国ということもあるが島国という歴史的な地政学上、「海道」を通じた周辺諸国との交流は必然としてあった。短絡的ではあるが日本にはその宿命としてグローバル化があったということである。歴史を紐解けばわかることだが、江戸時代の鎖国政策はある意味明治維新政府によって創られたことが多く、特に庶民レベルでは「海道」を通じた周辺諸国との交流は中世以降行われてきたことは既に明らかになっている。沖縄が好きでその生活文化を調べたことがあった。「海道」の交差点であった沖縄には、朝鮮半島から、あるいは中国はもちろんフィリピンどころかインドネシアからもたらされた文化が食などに今尚色濃く残っている。

そして、米国では英国のEU離脱の時と同様、ヒラリークリントンが僅差でも勝つであろうと、これまたマスメディアも専門家も予測していたが、見事に真逆のトランプが勝利し、次期大統領となった。そして、金融アナリトを筆頭に株価は急落するであろうとこれまた予測していたが、急落の翌日からは真逆の上昇となり、今尚続いている。つまり、トランプ当選=ドル安=株安、クリントン当選=ドル高=株高という今までの常識とは全く異なる世界が現出している。勿論、米国FRBによる長期金利の利上げが想定されてのこともあるのだが、真逆の現象が起こっている。付け加えれば、EU離脱によって英国経済はダメになるであろうと言われてきたが、これまた真逆の結果で英国株価は史上最高値を更新し、英国経済も好調を持続している。
ところでそのトランプ次期大統領について「逆襲が世界に広がる」というテーマで次のようにブログに書いた。

『日本のメディアは常にそうであるが、暴言王とか、差別主義者、排外主義者といった極小部分のみに焦点を当てたおもしろ報道しか行って来なかった。しかし、トランプ氏が言う米国第一主義とは言葉を替えれば国益を最優先する愛国者であり、中西部の田舎のおじさん、おばさんの代表であるということだ。そして、グローバル化から取り残された白人労働者、破綻した鉄鋼などの製造業工場群、そうした人たちの思い、本音を代弁したと言うことだ。そうした意味でグローバル化=自由貿易協定のTPPには反対であるし、保護主義的になるであろう。』

そのトランプ次期大統領は政権中枢の人事が進められているが、「100日間行動計画」の発表を含めそうした人事や発表された主要政策を新聞紙上などで見る限り、それまでのオバマ大統領8年間の政策とことごとく異なる、極端ではあるが真逆の政策を取るのではと推測される。例えば、
○理念・理想:オバマ/理想主義(自由と民主主義)→トランプ/現実主義(ビジネスという物差し)
○貿易政策:オバマ/自由貿易(TPPの推進)→トランプ/保護貿易(2国間貿易)
○エネルギー政策:オバマ/脱石油(多様化の推進)→トランプ/?(石油誘導)
○金融政策:オバマ/金融危機を踏まえた規制強化→トランプ/?(規制撤廃)
○雇用・労働政策:オバマ/移民の促進&オバマケア→トランプ/空洞化の抑制、オバマケアの一部解体
そして、財政上どこから資金を捻出してくるのかわからないが、「減税」と「公共投資」によって雇用を創出し、消費を活性化させるという経済政策は米国では「トランポノミクス」と言われているようだが、ある意味「バブル誘導」を意図していることは明らかである。これが成功するとなると世界経済が回復基調になるであろうとの観測から米国を始めとした株式市場が活況を呈しているとの分析もある。
また、トランプ政権人事を見てもわかるように身内を除いて産業界における個人ネットワークと軍人出身者がほとんどである。いわゆる政治のプロは極めて少ない。そうしたことを俯瞰的に見ていくとオバマに象徴される「自由と民主主義」といった理念・理想を追う政治ではなく、トランプはその都度全てをビジネスライクに割り切る「打算」で動くことが推測される。国連も、G7も、そうした枠組みもこうした観点から見ていくこととなる。つまり、従来の常識や価値観から外れることによる「不安定な状態」「見えない世界」がこれから続くということだ。

ところで今年の「ヒット商品番付を読み解く」にも書いたことだが、その中で「本格的なサブカルチャーの時代」が到来したと。勿論、「ポケモンGO」や「君の名は。」を筆頭としたヒット商品を指してのことだが、裏返せば「物消費」から「カルチャー消費」「文化消費」に移行した、今までのパラダイムから転換したということである。ある意味、クールジャパンは次のステージに上がってきたということでもある。文化が先、物は後というビジネスモデルの時代になったということだ。これは右肩下がりのモノづくり、しかも少子化の時代を象徴するランドセル業界にあって、日本アニメに出てきたランドセルを見て「カワイイ」「クール」と感じた海外の女性たちからオーダーがあいつぎ空港などの免税店に置かれ、新たな価値を生み、つまり新たな市場が生まれている事例もある。ランドセルだけでなく、若い世代の車離れが進む自動車業界にあって、そのトップを走るトヨタが2017年のFIA世界ラリー選手権(WRC)の参戦体制を発表した。1999年をもって、WRCから撤退したトヨタだが、モータースポーツを通じたクルマ文化を豊田章男社長自ら総代表となって参戦するという。これもある意味では車好きユーザーに対する新たなクルマ文化の再創造と言えなくはない。

これは今後の日本のビジネスを考えていく場合、新たなテクノロジーの開発と共に文化型コンテンツを一つの戦略着眼を担っていくものとして考えていくということである。特に、これから起こるであろうトランプ米国と日本企業との衝突を回避し、競争を勝ち抜く良き戦略になり得ると考えられる。すでに評価されているクールジャパンだが、固有な日本文化を単なる観光誘致の手段として終わらせるだけでなく、戦略的に使っていくことが問われているということである。輸入制限をしている中国にあって、映画「君の名は。」は特別枠として上映され興行成績も良いと聞いている。そして、何よりもピコ太郎のPPAPが教えてくれたように、これから真逆の強風が吹き荒れ混迷の時代が深まったとしても、日本文化というコンテンツビジネスの風は世界中を席巻できる時代にいるということだ。
また、国内に目を移してみても、ファストフーズにおけるメニューの復活や老舗への再注目も、実は過去という「文化」の復活ということである。日本マクドナルドが15年ぶりに復活させた「かるびマック」も1998年〜2001年という「時代の空気」「懐かしい時代」を発売したということである。レトロ、リバイバル、復刻、再登場、・・・・・・それらヒット商品は歴史が詰まった「思い出」消費を再創造しているということである。そして、そこにはまぎれもなく思い出したい「文化」があったということである。忘れ去られた「過去」「歴史」の中に、文化コンテンツが眠っているということだ。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 13:43Comments(0)新市場創造

2016年12月11日

◆2016年ヒット商品番付を読み解く 

ヒット商品応援団日記No666(毎週更新) 2016.12.11.

日経MJによる2016年のヒット商品番付が発表された。2016年上期にはヒット商品はほとんどなく、そのヒットが出てこない傾向を読み解くことは難しかったが、夏以降立て続けにヒット商品が表舞台に上がってきた。以下がその番付である。

東横綱 ポケモンGO 、 西横綱 君の名は。 
東大関 シン・ゴジラ 、  西大関 AI (人工知能)
張出大関 ピコ太郎  、  張出大関 リオ五輪
関脇 日産せレナ、 関脇 PSVR 
小結 大谷翔平、  小結 広島 

上期には、東横綱には安値ミクス、 西横綱にはマイナス金利特需といったデフレを象徴するようなキーワードが並んだが、もちろんこうした傾向は今なお続いている。下半期には度々ブログに書いてきた2つのヒット商品「ポケモンGO 」と 「君の名は。」が東西横綱に番付された。まあ誰が番付しても理解・納得できるヒット商品であるが、今年について面白い傾向がいくつか見られるので読み解いてみることとする。

ひととき夢中になれる、熱中できることを求めて

7月24日のブログ「ポケモン探しの旅が始まる 」で次のように指摘をした。
『暗い情報ばかりであるが、去年の夏と今年の夏との消費における最大の違いがあるとすれば、それは「ポケモンGO」であろう。・・・・・・場所によって現れるポケモンが150種類ほどあって変化があることから、そのポケモン探しはやればやるほとはまっていく。それだけ探すための移動は広く激しくなるということだ。・・・・・低迷する消費の救世主、勿論2016年ヒット商品番付の東の横綱は間違いない。』
そして、レアなポケモン探しに熱中することによって、交通事故をはじめとしたトラブルが多発し社会現象にまでなった。こうした「ゲームを遊ぶ」ことによる社会現象のスタートは1980年代半ばのあのロッテから発売された「ビックリマンチョコ」であった。チョコレートを食べずにおまけシールを集めることに熱中し、チョコをゴミ箱に捨てないようにと社会現象にまでなったメガヒット商品である。特に10代目の「悪魔VS天使シール」は凄まじく月間販売数1300万個と記憶している。ビックリマンチョコの場合はアナログ世界である一方、30年後という時代の推移を表しているのだが、ポケモンGOの場合は、GPSの活用という「今」ならではのリアルとバーチャルが融合したゲームで、しかも世界各地で楽しめる「遊び」である。ちなみにポケモンGOのダウンロード数は5億件を突破したとのこと。そして、「次」のポケモンGOのステージとして、ポケモン探しがビックリマンチョコの時のようなシール集めを超えて、捕らえたポケモンで家族や友人との交換や対戦相手と行うゲームに発展していくのではないかと推測されている。いずれにせよ、これからもポケモンGOに夢中といった現象は続く。

感が動かされる世界を求めて

「追い求める」もう一つが西横綱の「君の名は。」である。興業収入が200億円を超え、映画のモデルとなった岐阜県飛騨には多くのフアンの「聖地巡礼」が見られたという。この聖地巡礼はアニメ(虚構)世界では珍しいことではなく、今から10年ほど前になるが、あきたこまちの包装に美少女イラストを起用してネット通販で売り出したことがあった。初めてということもあって、数ヶ月で2500件、30トンものあきたこまちが売れ、その萌え米誕生の地である、秋田県羽後町に若い男性が押し寄せることがあった。こうした「聖地巡礼」という社会現象はポケモンGOにも通底することだが、モノ価値から、物語を読み解く面白さ=情報価値への転換商品である。この時、虚構世界からリアル(聖地)へと行ったり来たりして楽しむ、そんな時代にいるということである。
さて、本題の「君の名は。」であるが、その描写の綺麗さもさることながら、私が感じたのは新海誠監督が主題歌を歌うバンド「RADWIMPS」のフアンであると語っているが、コラボレーションによって生まれた新しいスタイルの音楽アニメといっても過言ではないように感じる。RADWIMPS(ラッドウィンプス)というバンド名の意味は、ウィキペディアもよれば「すごい」「強い」「いかした」という意味の軽い俗語「RAD」と、「弱虫」「意気地なし」という意味の「WIMP」を組み合わせた造語である。つまり、「かっこいい弱虫」「見事な意気地なし」「マジスゲーびびり野郎」などの意味である、と言う。今まで消費という舞台では草食系とか、低欲望社会の申し子のように言われてきたが、このバンド名の如く、今時の若い世代のセンシティブでナイーブな特徴が良く表現されている。
そして、映画の内容であるが、ごくごく普通の日常の中の幸せってなんだろうではないが、幸せへの渇望や喪失感を心の中に秘めた入れ替わった2人の主人公のストーリーとして展開される。楽曲ごとに世界が一変し飽きさせない映画となっており、少々伏線があって複雑化しているが、見事に観る者の「感」が動かされる映画となっている。特に歌詞がよく劇中歌「前前前世」における”心が身体を追い越していくんだよ”といったフレーズも、あるいは繰り返す言葉遊びも、そうしたセンスは未だかってないものであった。こうした「幸せ」というテーマ世界は若い世代だけでなく、宮崎アニメにおけるエコロジーと同様世代や性差、さらには人種を超えた「時代」が求める本質的なことであり、映像の綺麗さに一瞬ジブリ映画と見間違うが、またジブリ映画とは異なるテーマアニメとして世界各国で高く評価されていくと思う。そして、10年近く前にunder30とか草食世代と揶揄されてきた世代だが、今やっと表舞台へと上がってきた。

サブカルチャーの時代が本格化した

ポケモンGO以外にも関脇にPSVRという仮想現実を遊ぶゲーム機が入っており、「君の名は。」もジャンルとしてはアニメ映画である。更に映画「シン・ゴジラ」が東大関に番付されている。「シン・ゴジラ」の監督はあの新世紀エヴァンゲリオンの監督である庵野秀明氏である。CGを駆使した映画であるのだが、ゴジラによって破壊されるビル群の「リアルさ」に息を呑む映像となっており、庵野秀明氏における創作がアニメからリアルへという一つの変化(進化?)を見せているのも面白い。「シン・ゴジラ」の「シン」とは「新」「真」「神」などの意味が含まれているということで、そのリアルさには今までにない迫力を感じる。ところで今なお根強くいる新世紀エヴァンゲリオンフアン、いやオタクがどんな思いで「シン・ゴジラ」を観たか聞いて観たいものである。
いずれにせよ大仰ではあるが、サブカルチャーという文化、クールジャパンの進化が日本経済を牽引していく時代がはっきりと結果として出てきたということだ。
実はローカルジャパン東京の小さな話題であるが、先月墨田区に「すみだ北斎美術館」がオープンした。墨田区は江戸時代葛飾北斎が生まれ育ったところであるが、その生涯にわたる多くの作品が展示され、美術館はぎゅうぎゅう詰め状態の人気であった。私はその中でも「北斎漫画」を観たかったのだが、その北斎漫画」こそ今日のコミックやアニメのルーツとなっているものである。
こうしたサブカルチャーが観る者、遊ぶ者に「熱気」をもたらしたことは確かである。文化が経済を牽引する時代、しかもカルチャーではなく、サブカルチャーによってである。これは小結に番付された広島についても同様である。この広島にはオバマ大統領の広島訪問なども含まれてはいるのだが、あの広島カープのリーグ優勝、「神ってる」と言わせたほどの逆転試合の連続であった。この広島カープの優勝についてはブログにも書いたので多くは書かないが、万年Bクラスの弱小球団、ある意味裏舞台のチームといったらカープフアンに怒られるが、そんな球団がぶっちぎりの優勝を果たしのである。巨人でもなく、阪神でもなく、小さな市民球団がである。このように、「表」ではなく、「裏」にあったもの、隠れていたものが表に出てきて観る者に「熱」をもたらした半年であった。
サブカルチャーと言えるかどうかは問題があるかもしれないが、張出大関のピコ太郎(PPAP)も突如として世界的な話題となった。周知のようにYouTubeに投稿された動画が拡散したことによるものだが、モノマネなどの関連動画を含めると8億6000万回もの再生回数があったとのこと。今年の忘年会はピコ太郎で決まりとなると思うが、AKB48の「恋するフォーチュンクッキー」と同様自己表現時代にあっては「わかりやすく」「ものまねができる」ことが、ヒットのカギとなっている。また、違った視点に立てば、サブカルチャー拡散の基本条件に合致していたということである。

復活、そして老舗続々

AIやVRあるいは、関脇の日産せレナもそうであるが、新しい技術による革新的な商品が生まれてきている 。一方、この1年間過去のヒット商品の復活についてブログに書いてきたように、復活商品が数多く表舞台に上がってきた。日経MJも書かざるを得なくなったようだが、前頭にはこうした商品が番付されている。
まずは吉野家の「豚丼」、日本マクドナルドの「400円ランチ」や最近では「カルビマック」というデフレマインドに応えた復活商品が人気となっている。吉野家の「豚丼」は8ヶ月間で2700万食という大ヒット商品となった。日本マクドナルドも過去のヒット商品を立て続けに発売し、そうした成果によって売り上げの右肩下がりが止まり、赤字経営から脱却し始めた。
こうした外食のみならず、任天堂は1980年代にヒットしたいわゆるファミコンの復刻版を発売。以前より小型化しているが外形は昔とほぼ同じで、発売4日で26万台を突破し品薄状態が続いているという。また、売れないCDなどの音楽業界で、じわじわ右肩上がりなのがアナログのレコート盤である。
こうした表舞台でのヒット商品ではないが、古くからある街場の飲食店やパン屋、あるいは地方の老舗が注目されており、その中から小さなヒット商品、ニューレトロ商品も誕生しているようだ。レトロ、老舗、復活、こうしたキーワードは消費のみならず、今という「時代」のキーワードになってきている。実はまだ食べてはいないのだが、神奈川県平塚にある大正十三年創業という地元ではよく知られている高久製パンが作るカレーパンはまさにそうしたヒット商品の一つである。この弦斎カレーパンはカレーライスまんまを入れたカレーパンで、福神漬けまで入っており、こうしたアイディア溢れる、しかもロングセラー商品はいくらでもある。つまり、「過去」の中にヒット商品があり、過去を知る世代のみならず、知らない若い世代にとって新しく、新鮮であることが多い。OLD NEW、古が新しいということである。ポケモンGOも、そのキャラクター古くからあるものでGPSを使うといった遊び方は異なるがこれもOLD NEW商品と言えなくはない。

こうしたヒット商品を俯瞰してみていくと、横溢するデフレマインドを突破する入口のヒントが見えてきている。それが新しい技術によってであれ、過去あったヒット商品の復活であれ、今まで気付かず隠れていた商品であれ、「こころ揺さぶり」「熱中できる」、それがたとえひと時であってもだが、新海誠監督ではないが、「小さな幸せ」を運んでくれる、そんな商品が待たれているということだ。(続く)


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Posted by ヒット商品応援団 at 13:42Comments(0)新市場創造

2016年12月04日

◆雑エンターテイメントの広がり  

ヒット商品応援団日記No665(毎週更新) 2016.12.4.

今年のヒット商品には誰もが「ポケモンGo」や「君の名は。」を挙げることになるであろう。こうしたヒット商品の分析は日経MJによるヒット商品番付の発表を待ちたいと思っている。こうしたある意味消費の表舞台に出てきたヒット商品とは別に、消費の裏側で、大きな話題になることはないが、静かに売れている、そんな商品の傾向を取り上げてみたいと思う。

こうしたブログを書こうと思ったのも、先日久しぶりに大阪ステーションシティのリニューアル後の「ルクアイーレ」を見て回ったことによる。(この詳細については未来塾「街から学ぶ」 東京・大阪編 をお読みください。)特に見たかった売り場が新たに作られた2階の「ワールド雑貨マルシェ」であった。雑貨というと10数年ほど前から北欧がテーマとなっており、「ルクアイーレ」の7階にある売り場には周知の「フライングタイガー」を始めいくつかのブランドが出店している。実は私が見たかったのは「ワールド雑貨マルシェ」というネーミングのごとく市場感覚あふれる雑集積の売り場である。ちなみに下記のような小さなショップが見やすく、手に取りやすい形で視線を遮蔽するすることなく低い売り場として構成されている。
・マックスブレナーチョコレートバー(MAX BRENNER CHOCOLATE BAR):イスラエル発、NY他世界で人気のチョコレートブランド(西日本初出店)
・カーサヴィアバスストップ(CASA VIA BUS STOP):レディースファッション雑貨(梅田初出店)
・日本市:中川政七商店の生活雑貨(大阪初出店)
・シュシュ(CHOUCHOU):上質なギフト&雑貨類、アクセサリー&ファッション雑貨
・伊勢丹コスメ
・伊勢丹アーバンマーケット:ファッション雑貨
・マノン:デンマーク食器、ヨーロッパ雑貨とインテリアアイテムのセレクトショップ
・キキ&ララ・ゆめ星雲 おもいやり星:リトルツインスターズ40周年記念ショップ

イスラエルのブランドもあれば国産ブランドもある。女性の好みである可愛らしい雑貨が集積された売り場であるが、ブランド単体としてのそれではなく、全体として「雑貨市場」がつくられており、あれこれ楽しさ巡りができるようになっている点にある。つまり、全体の編集力、そのあり方を見て回ったのである。そして、見て回った後にチョット一休みにと奥まったところにはスターバックスが配置されており、フロア全体についてもよく考えられている。

こうした市場感覚、自由に見て回れる、本来買い物の楽しさが満喫できる売り場空間が多くのジャンルで広がっている。これは「食」に於いても特徴的に出てきており、いわゆる市場であるが、その市場感覚は併設されている「食堂」にも表れていてメニューの多さと価格の安さで、賑わいを創っている。東京であれば昔ながらの「ときわ食堂」はもちろんのこと、商店街にある多くの店に○△食堂といった新しい業態がここ数年増えてきている。数年前から若い世代を中心に流行り始めたバルもそのスペイン居酒屋から進化し、より広くメニューを用意した食堂スタイルへと変化している。
先日江戸時代の絵師葛飾北斎の作品を集めた「すみだ北斎美術館」に行ってきたが、その最寄駅であるJR両国駅の横に「粋な江戸」をテーマにした食の小さなテーマパーク「江戸NOREN」がオープンしていた。旧駅舎を活用した商業施設であるが、その中でも一番活気があってほぼ満席(全306席)に近かったのが築地食堂 源ちゃん」であった。
築地の活気とにぎわいを将来に向けて継承するため、中央区が設置した生鮮市場「築地魚河岸」が11月19日オープンした。鮮魚店、水産物店、青果店約60軒が入居した商業施設であるが、食のプロ向けと一般客・観光客に分けてオープンしたのだが、一般客・観光客が押し寄せすし詰め状態が続いていると報じられている。こうした常設市場以外にも関東近県の漁港や道の駅では朝市が人気でここも観光地化している状態だ。

雑エンターテイメントというテーマについては「未来塾」に於いて上野アメ横を取り上げ、その「雑」集積の集客効果のメカニズムについて描いたことがある。戦後、いや明治以降の日本は「外」から多くのものを取り入れてきた。ある意味、雑文化国家日本といっても過言ではない。紀元前文字を持たなかった日本は世界の中のいわば後進国であった。そして、当時先進国であった中国からもたらされた文字、漢字をひらがなに変化させ固有の文化を創ってきたように。消化不良もあったと思うが、外から多様なものを取り入れ咀嚼してきた歴史がある。それは食にとどまらず、例えばスポーツの世界においても同様でその象徴が「駅伝」であろう。今や世界のエキデンというチームスポーツになった駅伝であるが、その誕生は東京奠都(てんと)50周年を記念し、大正7年に京都三条大橋をスタート地点に東京上野まで508キロを3日間で走るスポーツとして始まっていた。勿論、マラソンを下敷きにした競技であるが、そのマラソンが行われたオリンピックはギリシャを中心にしたヘレニズム文化圏の宗教行事であった。駅伝が広く浸透していったのも個人の利益よりチームの栄光、1本の「たすき」に心をつなぐスポーツという精神性を重視する点にある。まさに日本人の精神文化をよく表したスポーツである。
あるいは英国から取り入れたテニスのその後の開発経過からあの柔らかなゴムまりが生まれ、そして今や日本からアジアに輸出されているという。プロテニスでは錦織圭選手が活躍する一方、こうしたソフトテニス(軟式庭球)をも輸出するというまさにこれぞ日本ならではのスポーツであり、その着想は見事である。このように外の世界を取り入れることに巧みな民族である。

話が横道に逸れてしまったが、変化の激しい時代、しかもデフレマインドが蔓延している状況にあって、「これが正解」という答えはない。以前にも必要なことは「賑わい」にあるとブログにも書いたことがあったが、その本質は消費することの楽しさをどう創っていくかに答えの入り口があるということである。
かなり前になるが、横浜の松原商店街を取り上げた時に、急成長した100円ショップのダイソーについて次のように書いたことがあった。
『東広島に誕生したダイソーは国内2800店舗、海外840店舗、3700億円を超える売り上げという、その成長には目を見張るものがある。特に、バブル以降デフレの時代の旗手の一社であったダイソーを当時多くの顧客が支持したのは次の3つの魅力であった。
1.「買い物の自由」;
すべて100円、価格を気にせず買える。買い物の解放感、普段の不満解消。「ダイソーは主婦のレジャーランド」。
2.「新しい発見」;
「これも100円で買えるの?!」という新鮮な驚き。月80品目新製品導入。(現在ではもっと多く導入となっている)
3.「選択の自由」;
色違い、型違い、素材違い、どれを取ってもすべて100円。
一言で言えば、”100円で「こんなものが買えるのか」という新鮮な感動”であった。このダイソーが松原商店街において見事に共振しているのはこうした買い物の楽しさにある。そして、この買い物の楽しさは、消費金額の差はあるが、ある意味日常化したアウトレット人気に通じるものである。』

ダイソーに限らず「楽しさ」の原点はここにある。過疎、高齢といった地域での買い物難民も増えつつあるが、そうした地域には移動スーパーの「とくし丸」をはじめ空白市場に参入しはじめているが、顧客の中心となるシニア世代にとって必要に迫られた買い物ではあるが、それでも顧客接点においては会話のある「楽しさ」が溢れている。そして、このとくし丸は野菜宅配のオイシックスが買収し、同じビジネスモデルで2019年3月期には売り上げ100億円超、トラックの台数は500台以上への拡大を目指すと言われている。
こうした移動販売であれ、通販であれ、あるいは顧客と直接顔を合わすことのないネット通販においても小売の原則「楽しさ」の工夫は必要である。

この楽しさ創造のポイントとなるのが今回のテーマである「雑」集積によるものである。この雑をどのように取り入れていくのか、「外」から仕入れる多様なルートを持たない街場の小さな店がまずすべきことは顧客要望の中からその着眼・ヒントを見出すことだ。ロングセラーを続ける街場の食堂や居酒屋のメニューは常連顧客からの要望によって生まれたものが多い。結果、50ほどあったメニューは次第に増え、100を超えメニュー表には載せられないほどとなる。ある意味、効率から一度離れてトライしてみるということである。
あるいは東京新橋にサラリーマン御用達の行列の絶えない立ち食いそば屋「丹波屋」がある。この店の春菊のかき揚げそばも美味しいのだが、店を手伝うネパール人のアルバイト女性が作る本格インドカレーが人気で、このカレーを求める顧客も多い。こうしたサイドメニューから生まれたヒットメニューであるが、これも「雑」による楽しみの広がりと言えよう。こうした考え方には回転すしのくら寿司におけるラーメンやシャリカレー、うな丼、牛丼なども同様である。一応サイドメニューとしているが寿司を中心にした雑集積メニューということだ。

つまり、食べる前に、あれこれ選ぶ楽しさ、そして新しい発見という面白さを提供してみようということである。市場巡りならぬ、メニュー巡りである。こうした心理は街歩きにも通じるものである。横丁路地裏という「裏」の他に、埋もれて見過ごしがちになっていた「雑」の中に自分好みを見つける、そんな楽しみ方である。
そして、もう一つ大切なことは、顧客という成熟した消費のプロがいることを忘れてはならない。品質と価格のバランスへの理解を踏まえた新たな発見を求めてということである。ユニクロの値上げの失敗はこの価格とのバランスを見誤ったことであり、牛丼の吉野家が以前と同じ価格で豚丼を復活させ、最近では日本マクドナルドが過去のヒットメニューを次々と復活させているのも、ヒットメニューの理由と共にこの価格バランスを再学習した結果による。理屈っぽく言うならば、客単価を追うのではなく、客数を求める時代ということだ。
その客数を追い求めるということは、「雑」の中から自分の好みを見出し、ライフデザインできるまでに成長してきた顧客に応えるという認識を持つということである。まずは効率を前提とするのではなく、「雑」の楽しさを提供し、次の段階で顧客支持のあった「雑」を中心に再編集するということである。楽しさ提供という編集力が問われて時代にあっては、損して、徳(得)を取るということに他ならない。(続く)
  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:51Comments(0)新市場創造