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2013年11月20日

◆駆け込み需要の本質

ヒット商品応援団日記No565(毎週更新)   2013.11.20.

阪急阪神ホテルズによる2回にわたる記者会見後、メニュー偽装や虚偽表示が次々明らかになり、その裾野は広がるばかりである。日経MJもやっと11/15号で取り上げその実情を伝えている。私は意図的であるか、無自覚・無知であったかは別にして、虚偽表現の方がメニューらしくなり、またそれに見合う価値が生まれる、そんな情報の時代に陥りやすい罠を「時代病」と呼んだ。そして、そのブログの最後に次のように書いた。

「こうした時代であればこそ、見えない技、見えない気遣いや配慮、細部にこそこだわる、・・・・・・こうしたプロによるホテルやレストランは勿論存在し、またそのことを十分感じ取り共感するフアン顧客もいる。残念ながら消費増税は明確な法律違反ではない、いわば脱法的行為、抜け穴のような表現や仕組みといった時代病をまん延させる。しかし、そのことが分かったとたん顧客は一切消費などしないであろう。あまり良い表現ではないが、消費増税は本物だけを生き残らせる。いや逆に本物への集中現象があらゆるところで多発する時代となる。』

案の定というか、きわめて早い反応だと変な感心をしてしまったのが、「エビ問題」の中心にあった伊勢エビの価格高騰である。日経新聞によれば、市場の卸値はこの1週間で 3割ほど跳ね上がった。年末年始を華やかに彩る伊勢エビの価格高騰は食卓にも 影響を及ぼしそうだ、と。 この値上がりは、虚偽表示問題により、本物への需要が高まったからであると。私に言わせれば、「本物への集中現象」の一つということだ。

こうした集中現象は他の領域でも起こるであろうか、もちろんメニュー偽装や虚偽表示問題が直接的には起因しているが、その根底にはロングライフ志向という成熟時代の大きな価値潮流がある。キーワードとしての「ロングライフ」を少し説明するとすれば、永く使い続けたい、愛着が湧く、馴染んだ感じ、どこかほっとする、そんな価値世界である。大量生産大量消費の「使い捨て時代」から、少量生産少量消費の「使用時代」へと置き換えてもかまわない。また、本物志向と表現してもその意味は変わらない。
ところで、予測通り消費増税を前に大きな買い物順に、住宅、車、インテリア、そして各種家電製品へと駆け込み需要が進展している。そして、今年の冬は寒いということもあり、重衣料商品も売れ始めている。それら消費の根底にある価値観がロングライフである。

都市に生活していると実感するのだが、次々と変化情報(=刺激)が押し寄せるなかで、それでもなお使い続けたい、食べ続けたい、住み続けたい、とする価値観がロングライフであるが、情報に左右されない感覚が逆にとぎすまされる感がする。それを表面的には保守的、オーセンティックな世界のように見えるかもしれないが、実はモノの本質に迫るということである。例えば、素材にこだわっているといったように「こだわり」を売り物にしているが、実は理想とする「何か」のためにこだわるのである。ロングセラー商品の多くはそうした理想とする「何か」を持っており、ランキングなどには入ってこない商品である。価格は割高になるが、永く使うことにより結果コストパフォーマンスも満足させる商品となる。高騰する伊勢エビなどはそうした価値観のなかにある象徴的商品であろう。
また、安いのは品質や味などが落ちると勝手に決めつけてはならない。安さにはその訳があり、形状は悪いが味は同じであるとわけあり理由を店頭で明確にしたスーパーオーケーのように、顧客を信じる「オネスト(正直)」をポリシーとした小売業もある。消費者はそうした安いわけの理由と価格を踏まえ判断しているのだ。「こだわり」と「わけあり安さ」を見事に使い分けた生活者、成熟した消費者がいるということである。

駆け込み需要によって、来年4月以降の景気が心配であると言われるが、それは消費現場を知らない人たち、特にマスメディアに属する人たちのコメントである。当然のことであるが、来年4月以降消費は落ちる。課題なのはどんな消費へと変わるか、どんな消費の移動(お金の使い方)を見せるかである。
今回のメニュー偽装、虚偽表示問題は情報に基づく消費から実感・体験消費への変化を更に加速させることになる。詐欺、詐欺まがいのネット通販サイトが5000にも及んでいると推測され、商品が送られてこなかったり、送られてはきたが偽物の商品であったとする被害が急増している。無店舗と有店舗による実感型クロスメディア販売への取り組み。あるいは顔の見える商品、生産者自らが小売り現場で販売する、そうした売り方や商品、いわゆる産直型商品への人気の集中。更には家庭菜園ではないが、自らが育て収穫し消費する、そうした一種のクリエイティブライフのようなライフスタイルへと向かっていく。こうしたクリエイティブライフ、あるいはロングライフといったライフスタイル概念はパラダイムチェンジ(価値観の転換)と共に使われてきたキーワードであった。しかし、消費増税前の駆け込み需要のなかに見えることは、概念ではなく現実の生活へと転換が始まった消費風景である。(続く)

お知らせ:このブログを始めてから約7年半ほどになります。少しでも現場のマーケッターを応援したいということからこうしたブログと共に地方において勉強会を開催してきました。そうした意味で地域ブログにも同じ内容を掲載してきました。来年は消費増税という混乱と激変の年になることが想定されます。そこでより具体的応援となるようにビジュアルを組み込んだブログとしてリニューアルいたします。また、現場にて活躍されている仲間にも投稿してもらい、「次」に向かうための学習の場を目指したいと考えています。
  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:58Comments(0)新市場創造

2013年11月05日

◆時代病

ヒット商品応援団日記No564(毎週更新)   2013.11.5.

前回阪急阪神ホテルズによるメニュー偽装について書いたが、その後次から次へと多くのホテルやレストランで同様の不祥事の発表があった。阪急阪神ホテルズが行なった最初の記者会見の過ち、特に破綻した船場吉兆のような刑事事件にならないために、具体的には不当競争防止法に抵触しないように「誤表示」であったと強弁したこと。そこには大切にすべき「顧客」がいない、そのことに消費者の反発が大きかったからだ。そんなことを受けての不祥事発表であった。
その阪急阪神ホテルズの2回目の社長辞任を踏まえた会見では、その辞任理由として、やっと阪急ブランド、阪神ブランドが毀損してしまうことへの責任であるとの説明があった。
ブランドを形成するには多くの人の手と時を経て創られる。ブランドは企業にとって大きな財産の一つである。この財産は一人ひとりの顧客によって創られ、それが継承されブランドとなる。こうした得られた信頼を土台にした期待値の創造は、つまり心理価値にウエイトを置いたものは、当然偽装という負の情報刺激が大きければ一挙にブランドにおける心理価値はマイナスへと大きく振れることとなる。阪急阪神ホテルズはやっとそのことに気づいたということであろう。そして、同じようなメニュー表示をしていた全国のホテルやレストランが後を追うように記者会見がなされた。

実はかなり前になるが、長きにわたって活動している老舗企業ついて調べたことがあった。平たく言えば、つぶれない、その持続力は何か、ということを明らかにしたかったからである。その背景には日本ほど老舗企業が今なお活動している国はないという事実がある。創業200年以上の老舗企業ではだんとつ日本が1位で約3000社、2位がドイツで約800社、3位はオランドの約200社、米国は4位でなんと14社しかない。何故、日本だけが今なお生き残り活動しえているのであろうか。その答えの一つが宮大工の金剛組にあった。創業1400年以上、聖徳太子の招聘で朝鮮半島の百済から来た3人の工匠の一人が創業したと言われ、日本書紀にも書かれている宮大工の会社である。
宮大工という仕事はその表面からはできの善し悪しは分からない。200年後、300年後に建物を解体した時、初めてその技がわかるというものだ。見えない技、これが伝統と言えるのかも知れないが、見えないものであることを信じられる社会・風土、顧客が日本にあればこそ、世界最古の会社の存続を可能にしたということができる。

さて、過剰な情報が行き交う現在にあって、恐らく見えない何かを感じ取ってもらうことは極めてと難しい時代であると言えよう。そうしたなか、商品やメニューだけでなく、伝え方においても「違い」を追求する時代となった。その象徴的キーワードが「サプライズ」である。ちょうど10数年前から、驚くような表現、感情を揺さぶるような劇場型演出が至るところで見られるようになった。あたかも新しい価値が生まれたかのように。その行き着く先が「産地」を変えたり、「原材料」を変えたり、いかにも美味しそうな形容表現、他とは一味も二味も違うメニュー表現へと行き着く。ここに情報の時代の大きな落とし穴がある。
一方、顧客の側においても、夥しい数のブランド化された産地や品種、あるいは店名やシェフ名といった情報だけでそれだけで満足してしまう駄目な顧客、表面的なブランドオタクもいる。ある意味自らの五感で味わうことのない駄目な顧客がメニュー偽装の土壌を作っているという否めない現実もある。

来年4月には新消費税8%が実施される。円安を含めたエネルギー価格の上昇は物価へと波及し、収入が増えないなかでのインフレ経済となる。今回の不祥事は単なる一部の企業だけのことではない。悪意のない単なる誤表示やヒューマンエラーを含めるとかなりの広がりのある時代病とでも言うべき傾向が見られる。特に、JAS法という明確なガイドラインのあるメーカーは別として、そうした法的規制のゆるい外食産業は厳しい経営にあってこうした時代病にかかりやすい。
しかし、こうした時代であればこそ、見えない技、見えない気遣いや配慮、細部にこそこだわる、・・・・・・こうしたプロによるホテルやレストランは勿論存在し、またそのことを十分感じ取り共感するフアン顧客もいる。残念ながら消費増税は明確な法律違反ではない、いわば脱法的行為、抜け穴のような表現や仕組みといった時代病をまん延させる。しかし、そのことが分かったとたん顧客は一切消費などしないであろう。あまり良い表現ではないが、消費増税は本物だけを生き残らせる。いや逆に本物への集中現象があらゆるところで多発する時代となる。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:44Comments(0)新市場創造