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2012年08月25日

◆消費増税と消費変化(4)既に始まっている消費移動 

ヒット商品応援団日記No532(毎週更新)   2012.8.25.

前回は消費増税に際し、引き算消費という「過剰さ」を削ぎ落とす消費行動と足し算消費という食べ放題に代表されるコスパ(コストパフォーマンス)型消費という2つの異なる消費がまだら模様のように出現すると予測した。
消費増税がライフスタイルにどう影響するか、この2つの消費の現れ方は極めて「激的」に進行すると考える。その一番の理由は情報の時代の消費は常に「先行」し、徐々にではなく「イッキョ」に変化するということである。その芽と言っても良いかと思うが、増税が可決した直後から、人生にあって最大の買物である住宅への注目が集まった。勿論、長期金利が安いこの時に住宅を購入しよう、更に今後予測される住宅ローン減税やエコカーのような住宅取得補助金などの官製支援を見据えながらの物件選びである。こうした消費行動はまさにコスパ型消費のさえたるものであると言える。
また、住宅に関して言うと、「スマートライフ」というテーマで新しい合理的生活について少し前のブログに書いたが、いわゆるスマートハウスという創エネ&省エネという新しいコスパ型住宅が増えていく。そして、その際キーワードとなっているのが、コスパシュミレーションである。簡単に言ってしまえば、何年後には創エネ設備投資(例えばソーラーパネルの設置等)の回収を終えるというものである。こうしたどちらかと言うと新規住宅と共に、リノベーション住宅も増えていく。格安でしかも自分好みのデザイン住宅は大きな市場となる。
全てコスパ型消費で、既に住宅メーカーやマンションデベロッパーはシュミレーション営業を開始している。

こうしたコスパ型消費は生活の細部に波及していく。LEDがそうであったように、「最初は高いが、結果お得」商品は単なる節電・省エネを超えた冷蔵庫や洗濯機などの白物家電が既に販売を伸ばしている。こうした商品は従来(過去)の商品との比較においてお得感を明示していくのだが、今後は単品としてのお得から、生活全体のお得へとシュミレーションしていくこととなる。つまり、従来(過去)型引き算という消費、単純に節約する行動とは別の発想への転換である。その象徴例であると思うが、猛暑もあると思うが、冷凍庫の需要が大きくなっている。一定の量をつくり冷凍保存するという計画的で無駄を排除するための冷凍専用庫である。

増税実施まで1年半ほどであるが、家計簿を基礎とした日常の節約術が更に盛んになっていく。お父さんの小遣いも減り、サラリーマンのインタビューでおなじみの東京新橋にも更なる変化が出てくる。リーマンショック後、確か朝日新聞であったと思うが、「千ベロ酒場」というキーワードでお父さんの小遣いを表現する記事があった。つまり、千円でベロベロになれる酒場という意味であるが、その内容は立ち飲み居酒屋でおつまみはほとんどが200円未満、缶詰をおつまみとする立ち飲みもある。こうした居酒屋も千円から800円へ、700円へと変化し、昔懐かしいホッピーなんかが主流になるかもしれない。そして、週一回の立ち飲みがニ週間に一回と回数も減る。
若い世代、under30はどうであるかと言うと、男女共に自分で作る弁当族が増え、500円ランチには行列して食べる。団塊世代の若い頃のデートは映画を見て食事をするといった行動であったが、草食系世代のデート先は自宅になり、コンビニでビールを買い、DVDを一緒に見るといった具合である。そして、浮かせたお金はどうであるかと言うと、勿論、貯金へと回る。コスパ世代と言ってもかまわないほど徹底している。

ところでリーマンショックもそうであったが、それ以前の1997〜8年という不況突入時には新しいデフレ業態が出現している。1997〜8年という時期は拓銀や山一証券が破綻した時期であるが、1990年代初頭のバブル崩壊が失業や収入源となって現れた時である。このタイミングで出てきたのがいわゆるデフレの旗手といわれたマクドナルドや吉野家、ユニクロといった企業群である。リーマンショックの少し前からであるが、この時期出てきたのがわけあり商品群である。TV通販によるたらこの切れ子といった食品から始まったわけあり商品であるが、大量一括仕入れの回転寿司や中元・歳暮の売れ残りアウトレット食品、更にはチョット狭い、見晴らしの悪い部屋を特別価格にした旅館・ホテルといった領域まで、どんどん拡大した。そして、今年にはLCC(ローコストキャリア)元年と言われたように大人気となっている。例えば、1990年代半ばユニクロや渋谷109系のアパレルブランドがSPA(製造小売業)という革新的な方法を切り拓いたが、今やSPAではないファッション専門店は選ぶほどしかないのが実情である。つまり、こうしたローコスト業態はビジネス業態としては作り手も消費側も普通になったということである。

今大人気なのが、ガツン系から始まった食べ放題、ビュッフェスタイル、という足し算消費であるが、その種類やコストはどんどん広がり、そして更に安くなってきている。元々ホテルの昼食バイキングから始まり、グルメバスツアーの食事へ、今や街中の飲食店ではあたり前の風景となった。種類によって価格は様々であるが、数年前2000円弱であったものは1500円弱が主流となっている。ちょうどコンビニ弁当がお茶を入れて500円弱であったものが今や400円弱となったのと見事に符号している。
そして、相変わらず人気イベントなのが、つめ放題で、野菜などの食以外の衣類にまで広がっている。

ところで引き算消費の課題であるが、リーマンショックの直後やそれ以前の不況期突入時には不要不急型商品の市場は縮小してきた。その代表としてファッション・身の回り商品と外食が挙げられるが、従来のようなビジネスを継続するのであれば縮小することは間違いない。いや縮小といったやさしい表現どころか激減する可能性がある。また、こうしたカテゴリーの商品群と共に引き算消費として直接的影響を受けるのが旅行や娯楽産業である。リーマンショック後、米国ラスベガスのカジノが破綻したが、日本に置き換えるとパチンコ・スロット業界は厳しくなるということだ。そして、旅行市場であるが、数年前から円高により海外旅行が活性化しているが、円安へと振れた時、海外旅行は激減する。その振り替え旅行としては、LCCを使ったり、JRの青春18切符といった割引制度をうまく活用する。更に、新東名の開通で脚光を浴びたSAのご当地グルメなど新しい娯楽へと消費移動が起きる。そして、一番の消費移動は、お金をかけないで休日を楽しむ、懐かしい言葉であるが「ピクニック」なんかが盛んになる。あるいはそのピクニック先であるが、緑の多い四季が楽しめる公園を始め、例えばリゾート気分が楽しめる三井アウトレットパーク木更津や郊外型SCといった商業施設にも多くの家族連れが足を向ける。

このようにお金をかけないで済む消費移動が行なわれるということである。
そこでどのような対策をとったら良いのか考えてみたい。「売って終わりの商売から、売って始まる商売へ」、不況期に入った1998年頃顧客満足が大きなテーマであった時に使われた言葉である。このキーワードも忘れられて久しい。情報の時代にあっては、ファッション関連商品は特にそうであるが、顧客の目を飽きさせてはならないと現場では次々と変化を導入し、変化という商品を顧客へと販売してきた。常に鮮度ある商品、鮮度ある店頭、これが最重要視され、顧客関係はその次になって今日に至る。増税に備え、顧客を今一度主人公とし、次なる顧客関係を築くこと、このことを販売の基本テーマとしなければならない。顧客はオシャレをしたくて店頭に来る。オシャレに必要なことはモノとしての商品だけではない。既にあるモノをどう魅せるかであり、そのためのコーディネーション、スタイリングこそが求められる。これが「売って始まる商売」であり、販売員は顧客の良きスタイリストになるということである。

引き算されてもなお残るには、これも忘れられて久しいキーワード、オンリーワン、オリジナリティ、ここだけ、固有、・・・・・いくらでもキーワードは出てくるが、理屈っぽく言えば類似を免れる独自商品であり、技術であり、業態は増税という荒波を超えることが出来る。以前、「潰れない会社の持続力」とは何かというテーマでブログにも書いた。そこで数百年の時を経て成長するブランド価値とは何か、というテーマでもあった。ブランドとは使われ続けるという時を積み重ね、何層にも積み重ねられた使用価値集積の結果である。日本人はそれを暖簾と言ってきた。奉公人が独立をする時には、お祝いの品の中に暖簾が含まれており、世間の信用という何よりの資本財として扱われてきた。ブランドとは時を超えてなお社会が「これはいいよ」と言ってくれるものだと言うことだ。前述の顧客関係もそうであり、信用というキーワードを今一度思い起こすことだ。

そして、もう一つが本質に立ち戻るということである。例えば、よく音楽産業が衰退していると言われ、AKB48しかヒット曲はないと言われている。オリコンによる昨年の音楽ランキングではAKB48が上位5曲を占め、大人向けのヒットした曲がなく、相変わらずCDは売れない状態が続いている。しかし、音楽そのものが不況なのではなく、ライブハウスはどこも一杯であるし、ライブコンサートには多くのフアンが押し寄せている。何故なのか、音楽の本質はライブにあるという至極当たり前のことに気づいたからである。上位5曲を総なめにしたあのAKB48も「会いに行けるアイドル」として秋葉原のビルに常設舞台を持っているではないか。

増税に対し、特別なこと特効薬などはない。大切なことは顧客の消費移動がどこに向かっているかを見極めることにある。利用回数が減っているのか、客単価が下がってきたのか、こうした従来手法の変化を踏まえ、直接的な競合を見るのではなく、従来の消費にふり変わった先は何か、顧客変化それ自体を見極めることにある。リーマンショックの前であったと思うが、円安ということもあって年末年始の海外旅行に行くのはやめ、年始は自宅で過ごす人が増えたことがあった。そして、海外渡航費用の一部は5万円以上もする老舗料亭のおせち料理に替わるという消費移動が起きた。今年の正月は旅行に替わって、おせちのプチ贅沢を楽しむということだ。こうした消費移動という変化を見極めるということが一番大切なことである。そして、既に始まっているということである。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:19Comments(0)新市場創造

2012年08月16日

◆消費増税と消費変化(3)引き算と足し算

ヒット商品応援団日記No531(毎週更新)   2012.8.16.

前回「未来」の象徴である子ども、その手当の使い道に触れながら消費増税への「備え」、自己防衛志向について書いた。その「未来」についてであるが、ビジネスの師であるP.ドラッカーは”未来はわからない。しかし、未来を知るには2つ方法がある。既に起こったことの帰結のなかに未来を見る。または、自分で未来を創る”と指摘してくれている。生活経営という視座に置き換えると、”既に起こった未来”とは大きくはバブル崩壊後に現れた消費現象であり、もっと身近な未来ではやはりリーマンショック以降ということになる。特に、消費の多くは日常であり、身近な未来としての数年間に起こった小さな未来の芽を見出すことである。そして、もう一つが”自分で創る未来”であり、例えばリーマンショック後に広く浸透した「副業」もそうした未来の一つとしてある。この2つの視座から、消費増税への「備え」を見ていきたい。

「国民総幸福量」という新しい価値概念をもたらしてくれたのはあのブータン国王夫妻の来日であった。東日本大震災被災地へのお見舞いもさることながら国会での演説に多くの人が共感したことと思う。その演説にブータン人の精神性にふれた箇所がある。”人の心をとらえて離さない歴史が、ブータン人の人格や性質を形作っています。ブータンは美しい国であり、面積が小さいながらも国土全体に拡がるさまざまな異なる地形に数々の寺院、僧院、城砦が点在し何世代ものブータン人の精神性を反映しています。手付かずの自然が残されており、我々の文化と伝統は今も強靭に活気を保っています。”と語っていた。

一方、日本人の精神性はどうであるか、戦後60数年物の豊かさは手に入れたが何かが失われたのでは、と多くの人が振り返ったことと思う。この「国民総幸福量」という概念、人口わずか70万人のブータン国が注目される少し前に話題となったのが、「断捨離」であった。周知の本であるので詳しくは書かないが、一言でいうと、物が溢れる生活にあって整理整頓のためのハウツーを超えた「断ちなさい、捨てなさい、離れなさい」という一つの精神世界のすすめである。
この本を読んで思い起こしたのが、禅語にある「無一物中無尽蔵(むいちもつちゅうむじんぞう)」であった。何一つないところに、すべてのものが蔵(かく)されているという意味であるが、道元禅師は生きていくのに最小限のものがあればいい、「放てば手に満てり」と教えてくれている。断捨離と同じ意味合いであるが、過剰なものを削り、更に削ぎ落とし残るもの、その「先」に何を置くかである。いわば「引き算の美学」的生活で平たく言えばシンプルイズベスト、シンプルライフとなる。
食でいうと、素材を生かす、塩味だけ、手をかけない、ある意味本質・本当に戻ろうという潮流である。この潮流を視点を変えて言うと、例えば現在のデザイン潮流は、ノンデザイン・デザイン、シンプルデザインが求められているということである。あるいは、ノンエイジデザイン、ノン(ユニ)セックスデザインといってもかまわない。そうした潮流の意味は、デザイン主体が顧客の側に移ったということである。自分の好み・テイストが表現しやすいように、余計なデザインをするなということである。

消費増税に際し、こうした過剰さの削ぎ落としは更にすすむであろうか。勿論、表面上は節約、回数減、市場の縮小と表現されるが、削ぎ落としは「進む」というのが答えである。こうした引き算発想に対し、小売り現場、店頭ではどういうことが要請されるであろうか。消費のプロ、プロシューマーというキーワードが忘れ去られて久しいが、生活の全てに対しプロであることは難しい。シンプルであればあるほど、コーディネーション、組み合わせ、が生活のなかに求められてくる。ファッションであればベストコーディネーション、私だけの着回し術、マイスタイリストと呼ばれるぐらいの「私宛」の専門性が要求される。つまり、物の価値と共に、より高いサービスが競争力を持つということである。このことはセルフスタイル業態であれ、接客サービス業態であれ、通販業態であれ同様に求められるということである。増税分を価格に上乗せできない、と言われているが、こうしたサービス価値がデフレ下にあって競争力として浮かび上がってくる。
そして、単純に増税分を価格に上乗せすることは今まで以上難しくなる。従来であれば、より原価の安い新たな商品開発、新たなメニュー開発、新たな技術開発によって利益を補填・確保してきたが、よりアイディアのあるユニークさが求められる。なるほどと頷けさせる新たな「納得価値」が問われるということだ。引き算による消費に対し、足し算のサービスやアイディアをもって顧客に向かうということである。

こうした傾向と共に、まさに逆の消費、足し算の消費が大きな市場として出現する。既にその兆候は出てきており、成功している業態は「デカ盛り」「食べ放題のビュッフェスタイル」「低価格セルフ式」「わけあり商品」「おまけ・付録付き」・・・・・・いわゆるコストパフォーマンス型消費である。この特徴が大きな潮流として現れたのが2007年でリーマンショックの1年前であったことを認識しなければならない。この年の日経MJのヒット商品番付けには価格戦略を中心に据えた新価格(新しい考え方に基づく価格戦略)によるデフレ型商品が多い。「デカ盛りフード(ガツン系)」、ソフトバンクの「ホワイトプラン」、マクドナルドを始めとした「地域価格」、GMSを始めとした「価格据え置きセール」、エコロジーをもったいない精神の発露とするならば「マイ箸」や「エコバッグ」も単に安いということだけではない新しい価格価値認識によるものだ。

数年前までは食べ放題バイキングはホテルの定番メニュー業態、飲み放題は居酒屋の定番メニューであったが、例えば今やスイーツ食べ放題の専門店チェーンが急増し、若い世代で満席状態となっている。最近では1500円弱で食べ放題のスイーツプラスパスタも食べ放題へとエスカレートしてきた。廃刊が続くファッション女性誌にあってほとんど一人勝ち状態のスイート(宝島社)であったが、今や他の雑誌も同じように付録付き雑誌が発刊され、コンテンツ情報の競争ではなく付録競争の感すらする状態である。つまり、市場、若い女性は付録に新しい価値を見出しており、そうした市場は既に多くの生活場面へと一般化している。
100円ショップとして新たな市場を開拓したダイソーはその後に参入した企業と共に進化している。その進化は単なる安さだけでなく、アイディア溢れる便利商品が並ぶ。そして、ワンコイン商店街も全国へと広がり、ワンコイン(500円)ランチは日常風景となったが、本業は中古車販売であるが、10分100円というレンタカーも出てきた。

この夏休みはJTBによれば過去最高である272万人が海外へと向かうとの予測。東日本大震災による内側へと向かった自制の気持ちも外へと向かってきたこともあるが、そんな心理を後押ししているのが円高である。つまり、安い、お得感が海外、特にロンドンオリンピックもあって欧州方面が多いとのこと。数年前であれば、韓国や台湾といった近場が旅行先であったが、円高によっていわば足し算のように遠くへと旅行先が広がった。
JRの青春18切符はシニアの定番メニューになり、今年から本格稼働したLCC(ローコストキャリア)も既に定番メニューとなってきた。入り口は入りやすい価格、そのお得感を踏まえたもうちょっと先へ、もう一品、もう1日、もう一回、足し算を楽しんでもらうような仕組み、プログラムがプランされている。

このように今やデフレ対策は日常化し、特別なものではなくなった。どれだけ安くすれば競争力となるのか、1990年代から始まった地代や人件費が安い韓国や中国での生産から、もっと安い中国沿海部からその内陸部へ、更にはベトナムへ、あるいは最近ではミャンマーへ、こうしたグローバル経済によるコスト競争はいたるところで消費を基点としてマーケティングされている。周知のように2012年上半期の国内市場においてユニクロ既存店の売上は伸び悩んでいる。勿論、のびしろは世界市場で国内市場ではないが、競争相手であるH&MもZARAも日本市場においては苦戦していると聞いている。
これは私の推測ではあるが、ユニクロは素材開発に力点を置いているが、量販型業態は価格の次なる価値創造がまだ見出せない情況にあると考えている。「お値段以上ニトリ」というコンセプトによって北海道から全国へと急速に展開してきているが、次なる価値あるモノ創造へどこまでやりきれるかという課題でもある。例えば、同じインテリア業界で言うならばイケアのように安さもさることながらデザイン力を魅力としているが、同一商圏内で競争した場合、ニトリはどんな戦略をとるかである。このことは、消費増税に対し新たな価値創造を提示しない限り、売上は下げ続ける、消費は下げ続けることと同じである。

どれだけ原価を抑えられるか、規模のビジネスもさることながら脱法的手段によるコストパフォーマンスによる事故も当然増えてきている。ここ1〜2年を振り返っても、富山の焼き肉チェーン店における集団食中毒、あるいは関越自動車道における深夜バス事故、そして、最終の原因究明はなされていないが福島の原発事故も新たな安全、安心のための基準が問われ、消費においても選ぶ理由の一番目に上がり自己防衛志向を強めている。
つまり、コストパフォーマンスの裏側に潜む安全コストをどう引き受けるかという課題が、メーカーや流通だけでなく直接消費者に突きつけられてきている。
引き算消費には新たなサービス価値が求められ、足し算消費については安心を担保する情報開示が今まで以上に必要になるということである。そして、引き算ビジネスと足し算ビジネスは2極化しながら混在していくのが都市市場と言えるであろう。また、次回に詳しく述べるが、引き算市場と足し算市場の中心顧客であるが、前者はシニア世代であるのに対し、後者は20〜30代の若い世代である。こうした市場特性についても次回私見を書くこととする。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:48Comments(0)新市場創造

2012年08月14日

◆消費増税と消費変化(2)どんな文脈で消費を考えていくべきか

ヒット商品応援団日記No530(毎週更新)   2012.8.14.

前回の続きで、自己防衛志向はどんな生活場面に出てきているかであるが、こども手当の給付についても単純に子どもへの消費に回る訳ではない。博報堂の実施前調査では給付された場合使用時期に関わらず「教育・育児の費用」とするグループが全体の3分の2(67.3%)を占めている。このグループの使用時期を見てみると、「将来的に、教育・育児に使う(42.5%)」が、「給付された年度内に、教育・育児に使う( 24.8%)」を大きく上回っている。また、給付年度内に”生活全般の費用”に使うというグループも24.5%に及び生活財源とする意向も出てきていた。そして、給付実施後の給付結果もほぼ同様となり、大きな消費活性にはいたらなかった。

こどもの将来に使う、とは教育資金として貯蓄するということである。また、生活全般の費用とは生活費の補助である。つまりある程度は消費に回すが、子の未来を考えて貯蓄に回すという極めて賢明な生活者像が浮かび上がって来る。特に、子育て中の専業主婦の場合は生活費に、有職主婦の場合は貯蓄に回す傾向が見られ、使い道については体験型教育に使いたいと答えていた。
こうした賢明さは、未来への不確かさ・不安定さへの裏返しであり、表現を変えれば、自ら未来に備える自己防衛策ということだ。

そして、こうした自己防衛的価値観をより強めたのが、あの3.11東日本大震災である。その影響としてどんな消費が表れてきたかブログを読んでいただきたいが、そのポイントについて、次のようにブログに書いた。

『東日本大震災によってより鮮明となった市場が自己防衛市場である。「絆」とは真逆のように見えるかもしれないが、自然災害などに対しては自らを守る志向が極めて強く出てきている。防災グッズは言うに及ばず、電気自動車を蓄電池代わりとする。帰宅難民化に対処するために自転車が飛ぶように売れ、避難住宅にもなるとしてキャンピングカーまで売れ行きを伸ばした。また、主婦感覚とでも言うべきなのか、賞味期限の長い日持ちする商品が売れている。ソーセージなどがその代表であるが、従来鮮度価値の日配品と言われてきた牛乳やお豆腐にも賞味期限の長い新商品が出てきた。こうした商品以外にも、レトルト食品や缶詰も再認識されている。』

いつ起こるか分からない自然災害に対する備えであり、この備えは「計画停電」という無計画停電がこうした備えをより強くした。大手企業は工場の移転や分散化、あるいは自家発電を含めたエネルギー確保、更には営業時間を変え、工場稼働は曜日を変えた輪番制を取り入れた。個人の側は節電もさることながら、夏場であれば新技術による涼感衣類を始め打ち水といった昔ながらの知恵や工夫ある暮しへと向かった。勿論、こうした自己防衛的備えは今年の夏も同様に続いている。

こうした消費価値観を私は新しい合理的生活とし、「スマートライフ」と名づけた。今や2人に一人が所有するスマートフォンをはじめ、創エネ・畜エネでしかも経済的なスマートハウス、あるいはHVカーもそうであるし、リッター30キロ走る軽自動車も新しい暮しのスマートツールである。
このスマートライフについては既に3年程前に「個人サイズの合理主義」というタイトルでその賢い「合理性」に着目しブログにも次のように書いた。

『個人サイズの合理主義は平成世代ばかりでなく、他の世代、他のエリア(都市と地方)においても浸透していくと考えている。「何が合理であるか」が、あらゆる消費の最大キーワードになってくる。昨年のヒット商品の一つであるパナソニックの電球型蛍光灯のように価格は高いが長持ちし電気代も節約できて結果として安く済む、といった費用対効果を物差しとした合理主義もある。1年前から生活者の消費キーワードとなっている「わけあり消費」も、その「わけ」が合理的判断の物差しとなっている。数年前から始まっている単位革命、例えば大家族の場合は業務用食品ショップで大量に買うことが合理主義となり、単身者やDINKSのような場合は小単位、食べ切りサイズが合理主義となる。1980年代から始まった個性化の時代、好き嫌いが消費の第一義であった時代を終え、価格認識に基づく個人サイズの合理主義の時代に入った。』

こうした新しい合理的価値によって生活の再編集が始まっているということだ。そして、消費増税に対する「備え」も、この新合理的価値を踏まえて始まると理解すべきである。それではどんな「備え」という消費が出現するか、「わけあり商品」の生活全体への広がり、あるいはシンプルライフという表層から進んだ一つの価値観として出てきた断捨離なども新たなスマートライフを構成するものである。そうした新たな芽を含め次回以降具体的に考えてみたい。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 10:14Comments(0)新市場創造

2012年08月12日

◆消費増税と消費変化(1)どんな文脈で消費を考えていくべきか 

ヒット商品応援団日記No529(毎週更新)   2012.8.12.

民主、自民、公明3党による消費増税に関する法案が本来改革すべき社会保障の中身が決まらないまま参議院で可決し実施へと向かった。そして、どれだけの増税になるか、今後予定されている東日本大震災への復興税や公共料金の値上げ等家計への負担がどの程度になるか、マスコミ各社は一斉に報道している。
既に、数ヶ月前から民間のシンクタンクにおいて増税による消費支出への影響が報告されている。例えば、

・三菱UFJリサーチ&コンサルティングは税率5%から8%への引き上げで「名目消費支出はプラス1・1%、実質消費支出はマイナス0・9%となる。これは年度の実質GDPを0・5%ほど引き下げる」と試算している。
・みずほ総合研究所は駆け込み需要のため個人消費が13年度に0・79ポイント押し上げられるとするものの、14年1・87ポイント、15年1・86ポイント、16年2・36ポイント押し下げると試算している。
・日本総研は「2014年度は、実質GDP(国内総生産)が(増税がなかった場合と比べて)マイナス0・9ポイント押し下げられる」としている。
・ニッセイ基礎研究所では「消費税率が予定通り2014年4月に8%に引き上げられた場合は、2014年度はマイナス成長となる可能性が高く、2015年10月の税率再引き上げが困難となる」と予測している。そして、悪影響は長期にわたり、15年度1・5ポイント、16年度1・9ポイント実質GDPを押し下げると試算している。

どのシンクタンクも消費は落ち込み収縮すると予測している。私はこうしたマクロ経済のプロではないが、デフレ下での増税が消費を更に萎縮させてしまうということぐらい、消費現場を見れば分かる話である。結論から言えば、米国ほどではないがGDPの約6割を個人消費が占めていることを考えると、やっと昨年秋口から3.11ショックから回復してきた消費もこれから先は難しい局面を迎える。つまり、景気は悪くなるということだ。そして、そのこと自体を生活者は十分理解している。

消費は「情報」によって左右される心理市場化されているが、一言で言うならば基本は将来の収入に対し、楽観的であるか、悲観的であるかによって決まる。
過去10年間で世帯収入は100万円弱減少するなか、2008年秋のリーマンショック後、何が起きたか想起しなければならない。翌年の春には一斉に「副業」に走る人が増えた。主婦は勿論のこと、サラリーマンも休日には副業へと向かい、勤務先企業もこれらアルバイト収入を認めるところも出てきた。未来に楽観できないということの証左であろう。
この2008年度の日経MJの「2008年ヒット商品番付」の概要は以下の通りであると私はブログにも書いた。

『東西の横綱には「ユニクロ・H&M」と「セブン&アイとイオンのPB商品」、大関は「低価格小型PC」と「任天堂DSのwiifit」、関脇には「ブルーレイ」と「パナソニックの電球型蛍光灯」と続く。東芝のDVDレコーダー「ブルーレイ」が入ったのは、HD-DVDレコーダーの市場からの撤退によってシェアーが伸びたもので、それ以外は全て価格価値に主眼を置いた商品ばかりである。「お買い得」「買いやすい価格」、あるいは「パナソニックの電球型蛍光灯」のように、商品自体は高めの価格であるが、耐久時間が長いことから結果安くなる、「費用対効果」を見極めた価格着眼によるヒット商品である。そうした自己防衛市場への消費移動として理解すべきである。』

この自己防衛志向は以降も基本潮流として続いている。例えば、現政権の目玉政策である「こども手当」はどんな消費へと向かったかにも消費心理として明確に出てきている。確か「こども手当」実施前の博報堂による調査結果、手当の使い道は次のようであった。

『「  


Posted by ヒット商品応援団 at 14:26Comments(0)新市場創造