2017年09月11日

◆顧客情報を「読み解く競争」の時代  

ヒット商品応援団日記No686(毎週更新) 2017.9.11.

前回「再び、人力経営の時代へ」というタイトルでブログを書いた。主に「消費」という視点、「訳あり需要」の次はどうなるかということから顧客接点の重要さについて書いた。実はその背景には続きがあって、ここ数年今までとは異なる「再編」が起きていることから、「人」の重要性について書いた。
もう一つ重要なファクターとなるのが、テクノロジーの進歩であろう。ITからIotへ、そしてAIへという進化はインターネットを介したテクノロジーの進化である。この点については「パラダイム転換から学ぶ」(働き方が変わる)の中である程度進化の過程については書いて来たが、技術革命という点について言うとすれば、数年前から指摘されて来たテスラ・モーターズに代表されるEV革命であろう。このEV革命を後押しするように、中国をはじめEU各国はガソリン車からEV車への転換を国の政策課題として取り上げ推進し始めた。HV車に経営の軸を置くトヨタはどうなるであろうかといった論議が経済誌に取り上げられているが、今回はもう一つの大きな再編について私見を皆いて見たい。

確か2年ほど前になるが、牛丼大手の「すき家」が人手不足から24時間営業の店を次々と閉店していったことがあった。それは単に人手不足というより「ワンオペ(一人運営)」という経営のシステムそのものに問題が起きていたことによる。そうした24時間営業、あるいは深夜営業店はファミレスを含め次々と閉めていくこととなった。
ところでユニクロの柳井社長が昨年からビジネスを根本から見直さなければならないと再三再四コメントして来た。その多くはデフレ時代のファストファッション、その価格設定を中心としたものであったが、日経ビジネスオンライン及び週刊ダイヤモンドがインタビューを掲載しているが、第二の創業を迎えていると。そして、EV革命の重要なファクターであるインターネットによるファッストファッションの革命について「情報販売」を踏まえた精度ある需要予測に基づく製造ー販売の新たな仕組みを構築するための拠点「有明プロジェクト」についてのコメントであった。今までの製造小売業(SPA)から新たな情報システム産業に挑戦しようという試みである。

この背景には追いつき追い越せとして来た米国のリミッテッド(GAP、バナナリパブリック、オールドネービー)の低迷・混乱がある。周知のようにメインブランドであるGAPは大規模なSPA(製造小売業)チェーンとして世界のかじゅありファッションの先頭に立った。しかし、これも知られているようにファストファッションである H&Mや ZARA、あるいはフォーエバー21との競争が激しく、価格においても、ファッション鮮度においてもその中途半端さから2015年からは右肩下がりへと向かった。そして、今年に入りすでに新聞報道にもあるように北米のGAPブランドについて、約4分の1に当たる175店舗を閉鎖。本社では250人の人員削減を断行し、世界70店舗以上を閉め、事業整理を進めているという。日本においても「オールドネービー」吉祥寺店など閉鎖が始まっている。
このリストラ内容を見てもわかるのだが、GAPアウトレット・ファクトリーについては閉鎖されていないという点に見事に表れている。これは昨年夏のユニクロ柳井社長の値上げ失敗のコメントと同じ理由からである。
低価格帯のguが好調でユニクロは低迷というのも、フォーエバー21が日本市場に導入した時、”上から下まで1万円で揃う”というのが一つの特徴であった。日本市場も北米市場も従来のブランドには固執しないということだ。売れているのを見ればこうした低価格帯商品か、ツケ払いで一躍人気となったファッション通販のZOZOTOWN、あるいは下北沢や裏原宿の古着ショップである。

ところでそのユニクロが目指す世界についてだが、人工知能の能力が人間を超える「シンギュラリティー(技術的特異点)」の時代がすぐそこに迫っているという認識である。インタビューに答えて次のようにその世界を明らかにしている。

『技術の進歩によって、業種による差が急速になくなっています。「製造業」や「流通業」といった従来型の産業分類は、もうすぐなくなるでしょう。服を作っている企業なのか、システムを作っている企業なのか、ということはすべて関係なくて、唯一、顧客のニーズに自分たちの得意技で応えられる企業だけが生き残っていくと思います。
 そういう意味で、すべての企業が新たな創業期を迎えているんです。僕らも今、創業している最中です。これは僕だけでなく、企業全体で取り組まないとダメだと思っているので、一体感のあるオフィスを造り、ここに集まってもらいました。社員一人一人が起業家だと思って、この変化に取り組んでもらいたいですね。』

「SPA(製造小売業)」から「情報製造小売業」への変革ということであるが、ショップは店頭在庫や顧客の購買動向を正確に知るため、ICチップを埋め込んだRFID(無線自動識別)タグを全商品に取り付ける方針も示している。つまり、店舗、ショップの意味合いが根底から変わるということである。物としての商品はもちろん売るのだが、集まった情報を分析して「どの店」では「いつ頃」「どんな商品」が「どのぐらい売れるか」がわかるようになるということである。つまり、顧客を真ん中に置いて、各部署・商品企画や生産体制・関連企業がこの情報を元にシステマチックに動く、既にそうした無味で発展しているコンビニ業態に酷似していると言えよう。かなり前になるが、早朝のコンビニで意外にも米飯弁当や丼ものが売れる理由がわからないという課題があった。勿論立地によってだが、夜勤明けの夕食替わりにということがわかったのだが、ユニクロに置き換えれば従来の「シーズン物」と行った概念が変わっていくということである。

当然「人」の働き方も変わっていく。極論ではあるが、顧客接点では販売員から情報管理運営者へとかわり、「情報」を読み解く一人となる。今年の夏は東日本では寒い雨天の日が続き、おでんが飛ぶ方に売れた、そんなことが予測できる仕組みがコンビニと同様ユニクロにおいても行おうということである。
このように小売業のみならず、全ての企業が情報産業化という顧客情報を「読み解く競争」に入ったということである。そのようにAIを位置づけるということである。そうした再編の時代がすぐそこまで来ている。であればこそ「人」がますます重要な鍵となる。何故なら、定量情報をいくら精度高く分析しようとも、日々行き交う情報、顧客の声という定性情報は、現場の人間しか入手することはできない。現場で情報を読み解くとは、こうした顧客の声という定性情報に基づく能力が問われているということだ。前回のブログ「再び、人力経営の時代へ」の中で、雑貨専門店のロフトを取り上げたのもこうした背景からである。同じ雑貨専門店の東急ハンズの場合も現場の顧客の声から多くのアイディアフルな新製品が生まれている。顧客情報を読み解き使う時代に向かっていることは間違いない。(続く)

タグ :ユニクロ

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Posted by ヒット商品応援団 at 13:26│Comments(0)新市場創造
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