2013年01月25日

◆デフレとインフレが混在する消費市場 

ヒット商品応援団日記No542(毎週更新)   2013.1.25.

一昨日、日銀から2%の「物価安定目標」設定の発表があった。このインフレ目標の是非と共に、マスメディアにおいてもネット上においても、デフレの犯人探しが盛んである。JMMの寄稿家の一人である、外資系証券会社のチーフストラテジストである北野一氏の「デフレの真犯人」(講談社刊)を読んだが、現場の実務アナリストならではの視座を持った分析で極めて示唆的かつ共感できる内容であった。是非一読をおすすめしたい1冊である。
1998年以降デフレが始まった10年余、政権が変わる度に多くの成長戦略が語られ、ゼロ金利は何年続いてきたのか、この国には「政府」と「日銀」しかないのだろうか、と北野氏は問う。そして、このデフレという経済の低迷には「民間」「企業」にこそ原因があるのではないかと異なる視座を提起する。それがROE(株主資本利益率)で、その間違った経営者の認識こそがデフレの原因であると指摘する。そして、供給過剰が問題であればROEは経営に役に立つが、しかし今日のような需要不足が深刻であれば「売上高」をこそ経営の目標とすべきであると提言する。

私はマクロ経済のプロではなく、更に北野氏が使うデータ類(日米の金利差)への深い理解はないが、デフレへの認識がより鮮明となった。つまり、日本経済を低迷させている犯人は、「物価」が問題なのではない。よく物価が上昇すると企業利益が増し、その先には給与も上がる、というロジックで日銀犯人説が説明されているが、さて物価が上がれば景気は良くなるであろうか。物価上昇に伴う利益が従業員の所得に回り、明日への心配が無い社会であれば、それは消費へと回る、結果景気も良くなる。しかし、ROE(株主資本利益率)を第一義とする経営からは、その利益の多くはまずは投資家へと回り、数年先従業員にやっと回るのか、あるいは全く回らない場合もあるのではないかという疑念、そうした経営の構造そのものが問題であるのだという認識が鮮明になった。
そして、今回の政府の政策であるが、そうしたROE重視経営を脱するための助成として、新規雇用だけでなく、在籍している従業員の給与や賞与を増やして人件費総額を拡大した場合も減税対象にするとした対策がどれほどの効果があるかである。これもまた大いなる実験と言えるかもしれない。

ROEという指標は投資家に対するリターン(期待金利)を最大化することにつながるが、需要がないところにおいては設備、人員、経費などを削減、スリム化することなど、全てが抑制的引き締めへと向かう。具体的には、例えば経費削減はもとより、賃金を下げ、有休設備を売却したり、そうして利益を確保しROEを最大化するのである。このように投資家ばかりに目をやる経営こそがデフレの犯人で、その多くはサラリーマン社長による企業が多く、オーナー型企業の場合は広く従業員や取引先企業などステークホルダーへの目線が行き届いている。そして、その経営であるが、デフレ化された市場に新たな需要を見出し、「売上高」を目標としている「脱ROE」企業群こそがデフレ脱却の旗手であると北野氏は指摘する。より具体的に言うならば、大企業と比較し中小企業の方が該当し、事実そうした企業が市場創造に向かい多くのヒット商品を産み出している。例えば、最近のサントリーの企業風土について実感していないが、「脱ROE」企業とは”やってみなはれ精神”が現場を動かしている企業のことである。


ところでROE重視経営を家計に置き直してみるとまさに同じで、そんなデフレ家計のことを「巣ごもり消費」と呼んできた。例えば家計における経費削減は安さのみで商品を買い求めたり、外食を減らして内食を増やすといった節約工夫、若い世代であれば流行となった弁当族であったりする。賃金はお父さんの減らされた小遣いが該当し、立ち飲み居酒屋ではないが「千ベロ酒場」(千円でベロベロに酔える居酒屋)が繁盛する。若い世代の支持を得て注目されている「俺のフレンチ」も同様である。まさにデフレ時代のデフレ家計・巣ごもり消費そのものである。節約されたお金はどこに向かうか。勿論、貯蓄で、企業における内部留保と同じである。
前回のブログにおいて上半期の消費行動について次のように書いた。

『以前「巣ごもり」しながら首だけを出して、キョロキョロ見回して消費する、そうした行動を「キョロキョロ消費」と呼んだことがあった。まさにこうした消費環境の変化に素早く敏感に反応することとなる。例えば、ちょうど円高を背景に、年末年始の海外旅行者数が増え、しかも少し遠出のヨーロッパ旅行が増えた。このように為替の上り下がりに敏感に反応する。』

こうした「為替の上り下がり」とは、金利の上下をうまく活用することと同じで、消費は常に移動するということである。消費増税法案が昨夏国会で通貨された後、ブログにも書いたが長期金利が低いこともあり、マンションや戸建て住宅購入の検討が始まっていると。そして、住宅ローン減税の延長を含め、その詳細が明確になると共に、巣から出て購入へと向かってきた。軽減税率実施時期を含めた消費増税の内容が決まるに従い、ある時は巣から出て消費へと向かい、次なる変化を見届ける間はまた巣ごもりに戻る。家計における「売上高」とは収入増が見込めることであり、アルバイトのような副業はこれからも増加すると思うが、1〜2年は緊縮・抑制的生活を行ったり来たりすることであろう。


そして、日銀による2%のインフレ目標が実施され物価が高くなる商品も出てくるが、例えば市場がグローバル化しているデジタル家電のような商品は競争市場ということもあって依然としてデフレ価格となる。また食品のような輸入に頼る市場では円安を含め、高騰する。こうしたインフレ商品とデフレ商品が混在する消費市場が出現する。こうした消費環境の下では、更に「キョロキョロ」見回し、それこそ最適な解を見出していくこととなる。今以上に精度ある情報が必要となり、体験・実感といったリアルさが消費のキーワードになっていく。ただ心配なのは1980年代後半のようなバブルにはならないと思うが、土地などの不動産価格が高騰し、資産デフレは解消できることとなるが、同時に住宅購入が難しくなることが想定される。そして、住宅の購入時期を消費増税前にすべきか、後にすべきか、控除内容検討してどちらがお得になるか決めるといった単純な問題ではない。不動産価格が上がれば、当然購入価格に反映されることとなる。

数年前、巣ごもり消費に代表されるような低迷状態にあって、私は「買う余裕が無いのか、買いたい商品がないのか」というある意味デフレの課題をテーマにブログを書いたことがあった。勿論、1998年以降10年間で平均100万円弱年収が減少してきたことを踏まえてであるが、「買う余裕があるのに、買いたい商品がない」唯一の市場がシニア市場である。百貨店に替わって、より専門性の高い編集を行なってきたSC(ショッピングセンター)であるが、その専門店群のほとんどが若い世代及び30〜40代のファミリーを対象としたテナント構成となっている。つまり、シニア世代のライフスタイルに沿った商品がほとんど無いというのが実情である。唯一充実しているものがあるとすれば、ウオーキング、ハイキング、登山といった健康関連商品と旅メニューである。しかも、その旅行であるが、旅行会社が企画した旅ではなく、シニア世代自身が企画する旅である。それは思い出旅行、リバイバル旅行の京都・奈良やハワイ旅行から始まり、若い頃お金が無くて単なる夢であった東欧チェコであったり、南の島バリであったりする。

今、政府はシニア世代が保有する預貯金を孫の教育資金への贈与に際し、非課税枠を拡大させてなんとか保有する預貯金を流通させたいと考えている。これも一つのアイディアであると思うが、その前に、企業は新たな需要を創造するために新たな「売上高」を目標とすべきである。つまり、「買いたい商品」という市場の創造である。私の友人の一人は、まずは自分たち夫婦で使えるだけ使い、子や孫には残さないと断言する。
例えば、若い世代であれば「俺のフレンチ」になるが、シニア世代の場合は「俺たちのおばんざい」(京都家庭料理)になるのか、あるいは「ニッポン巡り 離島キッチン」となる。この「離島キッチン」は昨年東京浅草のEKIMISEに隠岐の島海士町の郷土料理の店がオープンした、その店名である。しかし、家庭料理である「サザエカレー」他数種のメニューのみでリピーターはあまり期待しえない。面白いコンセプトなので、全国の離島にある隠れた郷土料理を再発掘してネットワークさせたら面白い。
昨年12月、好きな沖縄にまた行ってきたが、今回の食のテーマは「大東寿司」であった。沖縄の先にある離島、大東島の郷土料理で漬けにしたサワラのにぎり寿司である。わさびではなく、和からしの漬けで、さわらにはもちもち感があり、江戸前の寿司や関西の押し寿司、あるいは地方毎に具材が異なるチラシ寿司があるように、それらとは異なる珍味な寿司である。そして、離島キッチンと同様に、山間レストランがあっても面白い。

ところで地方活性のための町起こし・産業起こしの動きであるが、東京でのアンテナショップのブームは既に2年前に終わり、B-1グランプリもイベント催事による話題づくりの先が求められている。「離島キッチン」のような新しいコンセプトの下でのネットワーク型ビジネスが待たれている。こうした次の市場の動きはネット通販においても始まっている。2000年代初めに「お取り寄せ」通販が始まったが、全国うまいもの商品は一巡し、次が待たれていた。確か数年前のスタートであったと思うが、47都道府県の地方新聞社がお薦めする埋もれた商品のお取り寄せサイト「47CLUB(よんななくらぶ)」が急成長している。数年先には海外通販に進出すると聞いている。顧客は「未だ知らない何か」を求めているということだ。(続く)  


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2013年01月14日

◆初売りと増税心理

ヒット商品応援団日記No541(毎週更新)   2013.1.14.

日経新聞によると元旦から初売りをしたそごう・西武といった東京の百貨店を始め、福岡の博多大丸をはじめとした百貨店の初売りも5〜10%の前年比となり、総じて順調なスタートを切ったと報じていた。しかし、その内容を見ていくと分かるが、その中心となっているのが「福袋」という超目玉バーゲン品である。百貨店にもよるが、その多くは半額以下となっていて、消費者は事前にネットや売り場を回って調べ上げ、周到な買物をしている。これがデフレ下の基本的な消費行動である。
ところで物価を2%とするインフレターゲット論が盛んであるが、デフレは多くの要件が重なり合っての複合結果である。更なる金融緩和策も必要ではあると思うが、少子化、特に生産年齢人口の減少、グローバル化した競争市場、そして何よりも情報によって揺れ動く心理化された市場であること。これらを踏まえた日本のグランドデザインを描く中で、デフレもまた解決へと向かう。

一方政治では消費税について生活必需品への軽減税率を始め対策としての議論が始まった。国会が始まっていないことから、まだまだ入り口段階であるが、既に自動車取得税や重量税の廃止など業界からの要請も出始めている。その他にも祖父母から孫への贈与税の検討や緊急経済対策における税制分野での法人税率の軽減策など矢継ぎ早に検討情報がマスメディアを通じて報道されている。自動車産業もそうであるが、一番大きな買物である住宅への対策、住宅ローン減税などの延長もそうした議論のなかにある。
こうしたなかで注目すべきが、消費に直接関わる雇用や収入に関する対策で、新規雇用だけでなく、在籍している従業員の給与や賞与を増やして人件費総額を拡大した場合も減税対象にするとした対策である。その概要であるが、人件費増加分の1割程度を減税する方向で調整しているという。 前政権が子ども手当のように家計に直接支援し消費を促すのに対し、現政権は法人税を軽減することを通じた雇用と収入増の促進という対照的な政策の違いを見せている。

こうした緊急経済対策が検討されているのも、米国の「財政の崖」が回避されたと報じられているが、実は本質的課題は先送りされているだけで、更に私がチャイナショックと呼ぶ中国におけるビジネス後退は回復されないままとなっており、昨12月までの貿易収支は速報によると15ヶ月連続赤字となっている。勿論、EUの問題も同様で解決されたわけではない。つまり、今年1月〜3月は極めて悪い景況にあるということである。消費増税を進める為には4月〜6月の経済成長を上向きに伸ばすことが必要でその為の緊急経済対策である。
こうした経済対策によって、例えばサラリーマンの収入への変化はいつ頃からという質問をTV番組が取り上げていたが、お茶の間の芸能ゴシップと同程度の話として受け止めておいた方が良い。消費に直接関係する2大要素は収入と物価である。周知のように1998年以降、収入は右肩下がりとなり、物価も同じ曲線で下がり続けている。こうした同じように下がり続ける傾向に問題があるということである。恐らく現政権が法人を対象とした減税政策によって、収入も増え、物価も上向きになるとした理想的なデフレ脱却に向かうにはうまくいっても2年先ぐらいからと考える。ただ、これも「格差」が課題となった時と同様で、そのスピードは平均的一律的ではなく「まだら模様」のように進んでいく。ちょうど、ITバブル崩壊からの回復基調にあった2003年後半からの数年間は規制緩和によって東京都心だけミニバブルのような様相を見せたことがあった。赤坂、青山、麻布といった3Aエリアには外資系投資関連企業や不動産関連企業のオフィス群が新たに立ち並び、独自な消費が出現した。それら消費を代表したキーワードが「ヒトリッチ」であり、「隠れ家」であった。

今マスメディアを通じた情報、今年から始まる復興税をはじめとした増税や公共料金の値上げ、その先にある1年数ヶ月後に予定される消費増税。一方、緊急経済対策を含めた法人企業への各種減税措置と需要創出のための経済支援措置。単純化すればこうした増税と減税とが網目状になりながら進み、時々の情報によって大きく消費は変化していくこととなる。
緊急経済対策によって60万人の雇用とGDP2%を押し上げるとアナウンスされているが、未来に対し楽観出来るようになるにはまだまだ先になる。あるマクロ経済の専門家は経済再生とはいえ膨大な赤字国債を抱える中で更に10兆3千億円もの財政支出の決断に対し、壮大な実験であると指摘をしている。確か少し前の情報であるが、海外投資家による日本国債保有率が過去最高の8.7%にまで占めるようになった。そして、金利もじわじわと上昇傾向である。起きて欲しくはないが、第二のリーマンショックのような経済事変が起きたとき、海外投資マネーは一斉に引き上げ、日本国債は暴落するという悪いシナリオである。つまり、そうしたリスクを負った財政支出であるということだ。

2013年上半期どんな消費行動になるか、それは以前「巣ごもり」しながら首だけを出して、キョロキョロ見回して消費する、そうした行動を「キョロキョロ消費」と呼んだことがあった。まさにこうした消費環境の変化に素早く敏感に反応することとなる。例えば、ちょうど円高を背景に、年末年始の海外旅行者数が増え、しかも少し遠出のヨーロッパ旅行が増えた。このように為替の上り下がりに敏感に反応する。勿論、為替の動きを予測した外貨建て預金の増減も同じである。
以前コストパフォーマンスが消費のキーワードとして重要になったとブログに書いたことがあった。ここ数年のヒット商品の傾向の一つがコスパ型商品で、LEDや節水型液体洗剤をスタートにHV車や軽自動車、あるいは同じ車でも必要に応じて使うシェアーサービスといった使用価値型商品も同じコスパ型である。
こうしたコスパ的発想は顧客の求める価値観変化に対応したビジネスであり、その先駆者はあの「ステーキけん」であろう。撤退したロードサイドのファミレスを居抜きで借り受け、出来る限り「既にあるもの」を生かす、つまり飲食経営の大きな負担となる店舗・厨房への初期投資を軽減する考え方である。かけるコストは唯一メニューを安く提供することとし、急成長した企業である。最近では「俺のフレンチ」も同様の発想で顧客支持を得ている。また、LCCにおける顧客サービスも同様である。こうした提供者の側も、「既にあるもの」を生かしきる経営も「コスパ型」で、顧客側も「何に」お金をかけているかが分かるビジネスである。これがデフレ下のビジネス原則になっている。「キョロキョロ目線」とは単に安さやお得だけでなく、その裏側にある考えまでも判断・消費しているということだ。そこには見かけの安さとは異なるしたたかで賢い消費者像が浮かび上がってくる。

そして、東日本大震災以降マスメディアから消えた言葉がある。消費欲望を喪失したかのような若い平成世代を「草食系」、あるいは日経新聞においてはもう少し広げ「under30」と呼んだ世代の消費である。今日は成人の日であるが、どんな消費行動をとるのであろうか。いくつか新成人への意識調査が実施されているが、90%もの新成人が「将来への不安」を感じている。3年半程前、そうした平成世代の消費について次のように書いたことがあった。

『その代表とでも言われている草食系男女を評し、車離れ、結婚離れ、社会離れ、政治離れ、・・・・多くの「離れ現象」に「私」が表れているところが特徴である。良い悪いではない、好き嫌いでもない、彼らは生まれたときから激変する1990年代の現実を幼い目で直視してきた世代である。団塊世代が戦後60数年という時を駆け抜けたと同じように、わずか10数年で駆け抜けてきたようなものだ。しかし、モノ不足を体験してきた私のような団塊世代とは全く異なる価値観を持つ。私たち世代の若い頃、例えば車は憧れのモノであった。少ない給料から頭金をつくり、ローンを組んで手に入れる。そして、働きながら少しづつモノを生活の中に満たしてきた。百貨店についても同じような夢のある存在であった。しかし、草食系男女にとって、モノは欲望の対象ではないように見える。モノを含め、あらゆることに「距離をおくこと」で自分を守っているかのようである。・・・・・・・・・以前、私が使ったキーワード、繭の中の「20歳の老人」が、今のところ最も彼らを言い当てているような気がする。』

この繭(まゆ)とは「下流社会」を書いた三浦展氏言うところの仲間内という「村社会」のことである。「村」という社会を気にしてばかりいて、周りの空気を読むから物欲が縮小してしまい消費不況の原因は若者が作る「村社会」のコミュニケーション、情報病に罹っている、という指摘である。最大関心事である周り、友達村社会という関係を維持するキーワードが「だよね」という差し障りの無い、軽い相づちである。対立や争いごとを好まないそうした軽い関係ですら無くすことが出来ない、ただ増え続ける関係に謀殺される世代。電車の中で誰もが目にする象徴的光景であるが、8〜9割の若者は等しく携帯電話・スマホを手にしてメールを確認している、いや確認せざるを得ない関係に呪縛されている世代である。それを三浦氏は「情報病」と呼んだ訳だ。

さて、その世代にとって消費増税をどのように受け止めているかである。この世代の消費傾向の一つが「村」という社会で確認し得る商品やサービスを消費する。村社会から逸脱するような強い個性、主張するようなモノは馴染まない。モノが乏しかったシニア世代が主張あるモノにこだわり、そのこだわりにお金を支払うのに対し、若い世代はそうした消費に意味を見出すことは無い。ある意味、仲間の間で互いに「だよね」と相づちを打てる範囲内での商品・サービス、均質な商品群である。個人化社会というバラバラ関係を痛切に感じていることの表れである。結果、その消費を見ていくと分かるが、若い世代を主対象としたショッピングセンターには同じブランドばかりが編集され金太郎飴の如くである。こうした消費傾向の象徴が今風下宿のシェアーハウスであろう。
ところで将来に不安を感じている若い世代は消費増税に対しどんな消費を見せるか。私の考えは、シェアーハウスのような、仲間内のコミュニケーションも取れ、しかもシェアーすることでお得というコスパ型暮らしである。更に言うならば昨年のヒット商品である通話アプリのLINEのような無料となる商品。こうした新しい合理的な暮しがこれから発案されてくることが予測される。価値観でいうと、所有価値ではなく、使用価値を求めた生活となる。レンタル、シェアー、生かし切る、つながり、無料、こうしたキーワードからビジネスメニューが生まれてくる。そして、消費の表舞台には出てこない「貯蓄」が最大のヒット商品となる。(続く)  


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2013年01月03日

◆更なるイノベーションを

ヒット商品応援団日記No540(毎週更新)   2013.1.3.

新年明けましておめでとうございます。
例年新聞各紙の元旦号から時代のテーマや空気感のようなものに触れながら、市場創造という視点からどんな一年であって欲しいかをブログに書いてきた。昨年は「総デフレ時代の着眼」というタイトルで、デフレの意味合いを少し広げ、供給過剰による「旧来価値の下落」とし、少々荒っぽかったが銀座の「土地価格の下落」によるビジネス変化や売れない雑誌にあって唯一部数を伸ばしている宝島社の付録付き雑誌販売のような「情報価値の下落」といった事例を踏まえながら、それでは顧客が求める新価値とは何かについて書いた。そして、結論として旧来価値ばかりの過剰さからの脱却とは「本質に戻ること」だと提言した。

その本質回帰の事例であるが、昨年度も売れないCD業界にあって、AKB48が年間ランキングトップ5を独占したとオリコンから発表があった。全く同じように一昨年もAKB48の一人勝ちで、その理由として音楽の本質は「ライブ」にあるとブログに書いた。AKB48も秋葉原駅から数分の古いビルに常設館を持ち、”会いにいけるアイドル”というコンセプトでスタートした。その本質は何かと言えば、”会いにいける”というライブ感であり、例えば握手会もそうしたライブの延長線上にある。ある意味、ライブな顧客関係の構築にあったということだ。そして、見事なのは、総選挙というメンバー同士の競争を顧客同士の競争に発展させ、AKB48の「センター」という栄誉を仕組みとして目指させた点にある。
そして、今日のAKB48を創ったのは、恐らく数十名程度の熱狂的なフアン、いわゆるAKBオタクによってである。現在年間ランキングトップ5を独占するようなマスプロダクト化が進行しているが、このオタクが居なくなるとき、急速にブームは終わる。そうしたオタクをつなぎ止め、更にはnewオタクを創るために、センターを勤めた「前田敦子」を卒業させ、更には地方へ、世界へとオタクの世界を広げる活動をしているのはそうした背景からである。
オタクの履歴を遡ってみていくと分かるが、1980年代前半、手作りラジオのような電気技術系のマニアやポップカルチャーというよりカウンター(反既成)カルチャーとしてマンガやアニメに傾倒した熱狂フアンが秋葉原に集まったことからオタクの街アキバがある。2チャンネルから始まった電車男、コスプレメイド喫茶もしかりである。勿論、その延長線上にAKB48があることは言うまでもない。

昨年度の日経MJヒット商品番付けにも入った「俺のフレンチ・イタリアン」についても「本質とな何か」について示唆的である。1980年代〜1990年代にかけて飲食業における主たる投資は店舗であった。店の雰囲気も味のうち、素敵な時間を過ごしてもらうための工夫を凝らした店づくりを競い合ってきた。例えば、厨房に近いテーブルをシェフズテーブルとし、上顧客にはそうした席を用意しサービス強化によって売上を上げてきたのもそうしたことの一つであった。しかし、バブル崩壊後そうした業態は1990年代後半からのデフレの波と更なるITバブルの崩壊&リーマンショックの荒波にもまれ、徐々に消えていった。結果、急成長したのが食においてはファストフード業態であり、ファッションにおいてはファストファッションであった。
「俺のフレンチ・イタリアン」が挑戦したのは、「食」の本質は2つの質によってで、一つは食材でもう一つがプロの技術によってであると。店舗にはお金をかけない。全て居抜き物件とし、お金をかけるのはまず食材で、高級食材をふんだんに使い、しかも一皿1000円未満に抑える。とにかくフレンチを体験してもらおうという、お試し的意味もあるかと思う。そのかわり1階席は立食いスタイルで、2階には少しのテーブル席を用意。ゆったりとした時間や雰囲気を楽しんでもらうのではなく、ファストフーズ感覚で本格フレンチの味そのものをを楽しんでもらうことによって、今まで無縁と思われてきた未開拓市場、若い世代から圧倒的な支持を得た。従来業態の真逆という発想転換によって、新たに若い世代市場を開拓した。バブル崩壊によって衰退してきたフレンチの本質を今一度業態を変えることによって再生したということだ。「俺のフレンチ・イタリアン」を展開しているのはVALUE CREATEという会社で、社長には元ブックオフの創業者であった坂本孝氏であるという。こうした真逆の発想で新しい市場を開発可能としたのも頷ける話である。

こうした本質とは何か、を問うことによって多くの領域で新しいビジネスの芽が出始めている。今から6年程前に大阪の旅行代理店「つばさツーリスト」の活動をブログに書いたことがあった。フランスやスイスの田舎であるならばいざ知らず、自らを田舎専門旅行代理店と呼び、都市生活者が失ってしまった日本の田舎、自然と向き合う「体験世界」を提供する小さな旅ビジネスである。当時、関西のTV局であったと思うが、提携先である農家の人にとって、重労働である薪割りやその薪を使って蒸し上げた餅米を餅つきにして食べる田舎体験旅行がお金になるとは思いもしなかったとコメントしていた。都市生活者にとって、特に子ども達にとって薪割りは新鮮で面白い遊びのような体験であるとブログに書いた。その後、周知の社会体験を子ども達に提供したキッザニアは圧倒的な顧客支持へとつながっていく。
こうした失われた体験を入り口としたビジネスが農業分野にも出てきている。その代表的企業がマイファームである。相変わらず食料自給率は40%を切り、一方では耕作放棄地が増え続ける。こうした実情に対し、農地の有効活用として体験農園を実施したり、更には就農のためのアカデミーを運営したり、NPOとネットワークを組んで、作った作物を通販したり、・・・・・・多様な農業ビジネスを立体的に展開している会社である。理屈上はこのように表現できるが、3K(きつい、汚い、臭い/危険)と呼ばれてきた現実の農作業をスマホを使って作況やコストの一元管理など行なう。更にはツイッターやFacebookを駆使した顧客発見と作物の流通販売を行なう。つまり、若い世代が慣れ親しんだIT技術を駆使した自然との向き合い方スタイルによる農業が始まっている。耕作放棄地の多くは高齢化に伴った後継者がいないという問題であるが、農業の本質を問う答えの一つとして、こうした新しい農業への取り組みは後継足り得ると考える。日本の農業は生産性が極めて低いとされているが、規模の経営だけが高い生産性であるとは言えない。IT技術の知恵ある活用によっては生産性向上は勿論のこと、従来から成功のモデルケースとして言われてきた6次産業化がITによって広く可能になってきたということである。

昨年秋から消費増税によって起きる様々な変化についてブログに書いてきた。新政権になり、景気浮揚のための経済対策が組まれその結果次第ではあるが、消費増税が現実のものとなってきた。消費税5%が実施された1998年前後には多くのイノベーションによるビジネス変革が起きていた。例えば、IT技術の活用によって、多品種少量販売が可能となり、従来業態の転換が始まった。その代表企業がユニクロや渋谷109系の専門店であり、そうした企業群のなかにはインターネット商店街楽天市場もあった。そして、大手GMSであるヨーカドー、イオンによる消費税分還元セールが大人気となる。また、マクドナルドによる半額バーガーも大ヒット商品となる。結果、こうした変革に挑戦したグループは生き残り、一方旧来のビジネスに安住してきた企業は次々と破綻し、1998年の倒産件数は18、988件に及ぶ。以降収入は右肩下がりのなかでデフレ経済へと向かっていく。
そして、デフレの壁を乗り越えた企業が今日の市場を牽引している。新政権の課題は景気回復、特にデフレからの脱却を主要な政治課題としている。更なる金融緩和策をはじめとした「アベノミクス」は円安と株価高を生んでいる。金融の専門家ではないのでこのまま推移するかどうか分からないが、資産デフレの解決は一定のメドがつくかもしれない。しかし、消費を促すもの、それは未来は明るいと思えるか否かである。その明るさへの第一は、収入が増え楽観的心理に向かうことである。こうした情況に至るにはかなりの時間を要する。つまり、当分の間なだらかなデフレは続くということだ。過去行なってきた家電、自動車、住宅などへのエコポイントといった官製販促、官製消費刺激策は需要の先食いであり、デフレを止める本質的解決にはならない。しかし、そうであればこそ次へのビジネスチャンスはある。そのためにも今一度本質とは何かを問い直すことだ。今年もまた、そうした着眼事例をブログに書いていくつもりである。(続く)  


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