2013年07月04日

◆消費増税を見据えた戦略が出始めた

ヒット商品応援団日記No558(毎週更新)   2013.7.4.

前回日経MJの2013年上期ヒット商品番付を読み解きながら、都市と地方、特に東京と地方との景気感の違い、格差の広がりをいくつかの消費関連指標・数字を持って分析してみた。そして、7月に入り、原材料高と円安による値上げラッシュがはじまったと新聞各紙が報じている。通常であれば新商品に価格転嫁するのだが、急激な円安によりその時間はなく、価格転嫁できないメーカーは量やサイズを減らして実質値上げしている。流通もこれ以上絞れないほどの工夫をしてなんとか価格を維持している。
一方、今年の1月から九州地区などで値上げのテスト活動を行なってきた日本マクドナルドは値上げをはじめとしたメニュー整理と共に、夏に向けた新商品投入の発表があり、消費増税を見据えたメニュー戦略、価格戦略の概要が見えてきた。また、期を同じくして牛丼各社も同様の新商品投入を行なっている。結論から言うと、マクドナルドも牛丼各社もほぼ同じような戦略を採っていることが分かる。

まずマクドナルドであるが5月に入り既存店の売上減少が下げ止まったと発表があったが、メニュー整理と値上げによるものと想定される。ところで新商品の投入であるが、デフレの旗手、100円バーガーというイメージを一転させる高額商品のシリーズとなっている。
その象徴的商品として、1日限定かつ30万食という数量限定の「クオーターバウンダー ジュエリー」シリーズを土曜日ごと販売、単品価格はなんと1000円。また、夏季限定の商品として「クオーターバウンダー BLT」単品価格520〜570円、「クオーターバウンダー ハバネロトマト」単品価格480〜520円。バリューセットだと830〜870円、780〜820円という高価格帯である。
値上げしたとはいえ100円台の低価格帯商品群、300円台のザ・マクドナルドであるビッグマック、そして今回の高額新商品500円台、1000円といった商品群という3つの価格ライン編成である。新商品の記者発表の時、この高額商品はアベノミクスを意識したものかとの質問が出たそうであるが、原田社長は言下に否定したとのこと。これは消費増税を睨んだ「全方位的商品ライン」であり、高額価格帯による新市場の開発を意図したものであろう。この新市場とは夏場需要を狙ったファミリー層であり、ハンバーガー専門店に流れていったフアンを獲得することと思われる。

このマクドナルドと併行するかのように新商品の投入をはかったのが牛丼各社である。その中心となっているのが吉野家であるが、「牛丼」並盛り280円の投入はデフレの旗手を彷彿とさせるもので、かなりの集客・売上効果が得られたと推測される。そして、新商品であるが、「ねぎ塩ロース豚丼」「牛カルビ丼」各並盛り480円という価格帯メニューである。また、夏場需要の「鰻丼」は並盛り680円、二枚盛り980円となっている。これもマクドナルドの3つの価格ライン構成と同じ発想、戦略と言えよう。
そして、、メインである牛丼と共にメニューとして取り入れたのが「牛カルビ丼」で、これも「ありそうでなかったニュー」「隙き間市場」への参入で急成長した東京チカラめし「焼き牛丼」への対抗策であろう。ちなみに、東京チカラめしは先行する牛丼3社との競争により売上が鈍化していると推測されている。
また、牛丼最大手の「すき家」は鰻丼に力を入れており、「鰻丼」並盛り780円、ちょっと変わった組み合わせである「うな牛」並盛り880円となっている。

このように競争相手を見ながら、メニューの整理、価格ラインの整備を行ない、従来の顧客層以外の顧客を掘り起こす戦略が採られ始めたということだ。つまり、低価格帯市場、中価格帯市場、高価格帯市場、全てを視野に入れた全方位戦略といっても過言ではない。
何故なら、これから半年間でどんな市場変化が新たに起きるか予測しきれないからである。今、東京でブームになっているのが「立ち食い」であり、「セルフスタイル」による極端な低価格ビジネスが拡大しているからだ。昨年までのヒット商品であった「俺のフレンチ」を始め、立ち食い寿司に行列ができるほどである。更に、東京駅の八重洲地下街には一貫75円の立ち食い寿司までもが出現したり、円安という逆風をものともしない業態が出てきた。

元々、立ち食い、立ち飲みは東京新橋にあるオヤジの居酒屋だけでなく、おしゃれな街である恵比寿にも立ち飲みショットバーなど既にあった業態である。また、虎ノ門には港屋という立食い蕎麦屋があり、5〜6年前からランチ時には行列ができる繁盛店があった。立ち食いそばというと駅ホームにある蕎麦を想起すると思うが、港屋はコンクリート打ちっぱなしのおしゃれなモノトーンの空間のある店で、人気の肉そばは850円と結構な価格である。行ってみると分かるが、かなりなボリュームで、それらを飽きさせないで食べられるように生卵や天かすなどが無料で食べられるようにコストパフォーマンス上も工夫されている。若い世代にとって、「立ち食い」は単なる安さだけではない、オシャレな飲食スタイルになっているということである。

今回は飲食をテーマにファストフーズ主要各社の新たな市場開拓を踏まえた「全方位市場戦略」、「3つの価格帯市場戦略」について考えてみた。こうした戦略は、言うまでもなくリーマンショックの経験を踏まえ、どんなことが起きても、消費増税という山を越える準備をしているということだ。つまり、消費増税によって顧客支持はどの価格帯に集まるのか、それらを見きわめるということである。そして、更なるヒントがあるとすれば、スタイル開発、これも価格帯市場を攻略していくうえで、重要なキーワードとなる。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 14:13Comments(0)新市場創造