2013年03月26日

◆アベノミクス・考

ヒット商品応援団日記No550(毎週更新)   2013.3.26.

3月21日国交省から公示地価が発表された。5年続けて前年より下がったが、大都市圏はリーマンショック以降落ち込んでいた地価がほぼ下げ止まったと。金融緩和による資金が不動産に流れ、更には円安による海外投資家による不動産投資。そして昨年秋以降の消費増税前に住宅購入という3大要因によるものと専門家は分析している。
こうした情況に接し、ITバブル崩壊後の不動産への規制緩和から東京が大きく変わった光景を思い起こさせた。品川の再開発から始まった湾岸エリアの再開発における「高層化」は2004年の六本木ヒルズのオープンに象徴されるように、3Aエリア(赤坂、麻布、青山)の地価を高騰させ、ファンドマネージャーという職種が脚光を浴びた。そうしたなかから「隠れ家」というキーワードと共にその消費の主人公として「ヒトリッチ」という都市固有のライフスタイルが出現した。東京における消費という視座に立てば、ミニバブル的様相を呈していたのである。
さて、今回のアベノミクスがどんな景気、消費をもたらすか、当時と同じように不動産ビジネスが活況を示し始め、美術品マーケットも動き始めたという。

このブログを書き始めた時、米国サーベラス社による西武ホールディングへのTOB発表が報じられた。有価証券報告書の虚偽記載問題で上場廃止になり、2005年経営再建のために西武HDへの資本増強に応じたファンドがサーベラス社である。ちょうど小泉構造改革の頃で、西武HDは昨年中に再上場の予定であったが、株の売り出し価格などをめぐってサーベラスト社と現経営陣と対立し、今もめどがたたないという。そこでサーベラスは株式の3分の1超(議決権ベース)を持って経営への影響力を高めようと今月11日、TOBで西武HD株を最大4%分買い増すと発表したニュースである。現経営陣との対立点は不採算路線の廃止を含め、ホテルサービス料の値上げ等、上場前に株主価値を高め、結果ファンドへのリターン最大化をはかると言われている。
ところが、昨年からの円安、株高、金融緩和、そして地価の上昇と政権交代による変化が進行しているのだが、何故サーベラス社は再上場のチャンス、リターンの最大チャンスを逃したのか不思議である。先を見通せなかったとはファンドとして失格ということになるのだが。ファンドも東日本大震災に対する小口の復興ファンドや古くは長野飯田市のおひさまファンドのような社会的意義の強い価値あるものもあるが、どうも今回のサーベラス社の動きは「禿鷹ファンド」、マネーゲームの再来と言われてもやむおえないと思う。

横道にそれてしまったが、「アベノミクス」がこのまま進展するとして、海外の投資家だけでなく国内投資家も動き始めているので資産デフレはストップしていくものと思われる。しかし、一部の富裕層や特定の金融・不動産関連業種にとっては活況を見せることとなるが、街の八百屋さんやラーメン店といった国民経済全体へとつなげていくには、やはり需給ギャップを解決するための「需要創造」が不可欠である。未だどのマスメディアも取り上げてはいないが、2004年〜2005年当時指摘されていた負の側面、「格差」の拡大という懸念である。勿論、企業規模や雇用形態による所得格差、都市と地方、世代間、あるいは業種間。既に都市東京においては海外投資を含め、マンション・住宅需要が活況を呈している。一方、地方の地価は相変わらず下げ続け、シャッター通りの光景は変わらないままである。あるいは円安は4月からの値上げにつながると同時にその恩恵を受けた北海道や沖縄には海外観光客が押し寄せている。
この複雑にからみあった需給ギャップという問題であるが、供給過剰が言われて10数年経つが、過剰な設備面は別にするとその中心は雇用となる。欧米先進国ではこの供給過剰は失業率という指標によって数値化され不況と共に高くなっていくものであるが、日本の場合、非正規雇用の増大という問題はあるが、いわゆるワークシェアーリングとなって結果として失業率の増加には向かわない方向に進んでいるのではないかと思う。

さて、その需要創造であるが、多くの専門家が注視するのがやはりTPPということになる。このブロック経済圏における完全自由化に対し、政府は関税をかけなかった場合のプラス・マイナスの変化について報じられた。試算の根拠などについては専門家にまかすとして、この市場経済化はどんな変化をもたらすか、一つの事例を思い起こさせた。それは貨幣経済が日本全国、庶民にまで浸透した江戸時代における初めての市場経済化という変化についてである。
私たちは江戸時代を封建社会と呼んでいるが、この「封(ほう)」とは領内という意味で、領内での自給自足経済を原則とした社会の仕組みのことである。こうした村落共同体をベースとした経済も度重なる飢饉と貨幣経済の浸透によって、天保の時代(1800年代)に大きく転換する。その転換を促したのが「問屋株仲間制度」の撤廃であった。今日でいうところの規制緩和で素人も参加できる自由主義経済の推進のようなものである。しかし、幕府は問屋株仲間からの上納金(冥加金)がとれなくなり、10年後に元に戻そうとするのだが、この10年間によって市場経済へと大きく変わっていく。
江戸時代の商人は、いわゆる流通業としての手数料商売であった。しかし、この天保時代から、商人自ら物を作り、それまでの流通経路とは異なる市場形成が行われるようになる。今日のユニクロや渋谷109のブランドが既成流通という「中抜き」を行ったSPAのようなものである。理屈っぽくいうと、商業資本の産業資本への転換である。

実は、この「封」という閉じられた市場を壊した中心にあったのが「京都ブランド」であった。この京都ブランドの先駆けとなった商品が「京紅」である。従来の京紅の生産流通ルートは現在の山形県で生産された紅花を日本海の海上交通を経て、軽工業都市京都で加工・製造され、京都ブランドとして全国に販売されていた。ところが1800年頃、近江商人(柳屋五郎三郎)は山形から紅花の種を仕入れ、現在のさいたま市付近で栽培し、最大の消費地である江戸の日本橋で製造販売するようになる。柳屋はイコール京都ブランドであり、江戸の人達は喜んでこの「下り物」を買った。従来の流通時間や経費は半減し、近江商人が大きな財をなしたことは周知の通りである。
勿論、京紅だけでなく、従来上方で製造されていた清酒も同様に全国へと生産地を広げていくこととなる。醤油、絹織物、こうした物も江戸周辺地域で製造されていく。そして、製造地域も東北へと広がっていく。従来海上交通に限定されていた物も陸上交通も使うようになる。こうして「下り物」としてのブランドが広がっていく。ある意味、産業の構造自体が大きく変わっていくということだ。結果、京都は軽工業都市としての成長・繁栄を享受することなく、今日のような文化観光都市へと変化していくこととなる。

今、私たちはグローバル経済の問題、TPPやEUとのEPAと向き合っている。遡ってみれば、既に江戸時代から消費が市場の在り方、生産、流通、価格を決めてきた。江戸時代、人口40万都市が世界一の120万まで膨れ上がり、過剰消費と思われるほど市場が広がったことによる問題点、一極集中、都市と農村の経済格差も、今日のグローバル経済に酷似している。江戸時代の過剰消費時代を元禄時代と呼んでいるが、今日で言うところの「バブル期」であった。江戸も200年を過ぎると既成は腐敗、堕落し、解決策を見出せない幕府は幕を閉じ明治維新へと向かう。
ところでTPPとも関係するが、2月の貿易収支は7775億円のマイナスで8ヶ月連続になると発表があった。そして、時事通信の試算によるとこの2年間の累計赤字は12兆円を超える計算になると。これは東日本大震災による輸出の減少、尖閣諸島問題による中国への輸出減少、更にここ数ヶ月間の円安が追い打ちをかけたことによると。輸入の増大は周知のように液化天然ガスの拡大であり、これらからエネルギー輸入依存という構造的問題と、最早輸出を国の根底に据えた貿易立国とは言えない情況になったということだ。産業構造のみならず、日本社会、生活の次なるグランドデザインを描くことが求められている。

そのグランドデザインであるが、少し短絡的な見方になるが、日本が江戸時代の江戸となるか、もしくは京都になるのか、大きな岐路に立たされていることは間違いない。前者の江戸を目指す方針は「成長路線」「外需志向」であり、後者の京都を目指す方針は「成熟路線」「内需志向」となる。恐らく前者を採る人はTPPに賛成であり、反対論者は後者となる。いずれにせよ結論を得るにはあまりにも情報が少なすぎる。ただ、1960〜70年代にかけて米国との貿易摩擦に耐え、それこそ国益のために国士の如く戦ったあの大蔵官僚の下村治のような人物が出てきて欲しいものである。(続く)  


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2013年03月18日

◆消費税還元セールの禁止?

ヒット商品応援団日記No549(毎週更新)   2013.3.18.

政府与党は12日、来年4月以降に予定されている消費税率引き上げに際し企業が増税分を円滑に価格転嫁できるようにする特別措置法案を了承したと報じられた。具体的には「増税分を消費者に還元」といった値引きセールを禁止するもので、下請け業者などにしわ寄せがないかを調査するほか、公正取引委員会の勧告措置なども盛り込む法案であると。
周知のように1998年4月5%の消費税導入に際しては、イトーヨーカドー、イオンといった大手小売業が「消費税還元セール」を実施し、圧倒的な顧客支持を得て成功させた背景がある。しかし、スムーズに価格転嫁を行なわせることと還元という名称は別にしてセールを禁止することとは別問題である。

過度な安売り競争は各業界も望まないとは思うが、この10数年間のデフレは収入が落ちた分だけ物価も下がり、ちょうど暮らし向きとしては見合うものであった。大手企業の春闘の回答は総じて年収の3〜5%アップする良きものであったが、問題は大多数を占める中小零細企業であり、非正規労働者の収入である。前回のブログで賃金全体としては下げ止まり、1月の百貨店売上もプラスに転じたと書いた。ただスーパーマーケットの売上は前年比マイナスである。あと1〜2ヶ月の消費動向を見極めなければならないが、高額品が売れ始めてはいるが、スーパー商品のような日常型商品は今なおデフレ状態である。そうした情況を見ていくと政府与党が考えている消費税の「価格転嫁」が文字通りスムーズにいくとは思えない。

ここ数年善かれ悪しかれ安定した消費結果を見せてきたのも、例えば安さばかりが注目される「わけあり商品」も一種の新商品開発であると見るべきである。カタチが悪い、規格外、賞味期限が後わずか、・・・・・・従来であれば廃棄処分されたり加工されてきた商品を格安の「わけ」を明確にして販売し、顧客の圧倒的な支持を得た。あるいは、売上を落とし続ける音楽業界にあって一人勝ち状態のAKB48もアキバのオタク達のものであると蔑んでみられてきた。しかし、その後顧客の広がりはどうであったか。マンガ、アニメといったオタクカルチャーコンテンツビジネスは3兆円にもなろうとしている。
また、前回のブログにおいても取り上げた多くの「隙き間ビジネス」などは消費を活性・促進させてきた。安売りと言われて片隅に置かれてきたLCCは今どうであるか。顧客を魅了するユニークメニュー、例えばピーチの関空ーソウル日帰りツアーが7000円台という航空運賃。ところが、ソウルで買物に使う費用は10万円近いという。そうした新たな市場、若い女性達を開発している。ピーチの経営リーダーは電車に乗って買物に行く感覚でピーチを使ってもらいたいという。これこそが新しい市場の創造である。

ところで中世から始まった日本の貨幣経済は江戸時代の庶民の消費を活性化させたことは良く知られている。その消費では「価格」を根底に置いた商売が多数あった。例えば、庶民の人気を博した小料理屋江戸橋際の「なん八屋」では、何を頼んでも一皿八文で皿数で勘定する仕組みだ。回転しない回転寿司のような業態である。また、浮世絵にも描かれている「ニ八蕎麦」だが、その店名由来には二説ある。一つは小麦粉と蕎麦粉の割合を2:8とする説。もう一つは蕎麦の値段が二×八が十六文という説である。前者の方を正解とする人が多いようであるが、「ニ八蕎麦」以外にも「一八蕎麦」や「二六蕎麦」あるいは「三八蕎麦」があったようで、価格をネーミングとした後者の方が正解のようである。現代の「100円ショップ」業態と全く同じである。

こうした事例の他にも現在にもあてはまるような業態やイベントはいくらでも存在していた。江戸時代の消費文化が熟成した中期から後期にかけては、「夜鳴きそば」という言葉がまだ残っているように屋台や小料理屋は24時間化し、更には食のエンターテイメント化が進み、大食いコンテストなんかも行われていた。つまり、必要に迫られた生きる為の食から、楽しむ食への転換である。その良き事例が「初鰹」で”初物を食べると75日寿命がのびる”という言い伝えから、「旬」が身体に良いとの生活風習は江戸時代から始まった。上物の初鰹には現在の金額でいうと20〜30万もの大金を投じたと言われている。こうした初物人気を懸念して幕府は「初物禁止令」を出すほどであった。しかし、そんな禁止令は有名無実となる。今回の政府与党による「消費税還元セールの禁止」も同じである。こうした規制は役にはたたないことは火を見るより明らかである。

消費増税への対応として、値上げをテストしているマクドナルドと価格競争では勝負出来ないとした「ピーコック」はPB商品の開発力のあるイオンの傘下となったことをブログに書いたが、企業家は「価格を超える」商品や業態を開発すべく常に検討している。単純に増税分がスムーズに価格転嫁できるなどとは誰も考えもしない。工業製品のメーカーにあっても、下請け、孫請け、・・・・・・という構造から脱却すべく自らメーカーとしてのポジションを手に入れるべく必至の努力をしている企業も多い。農水産物の一次産業も地方において徐々にではあるが六次産業を目指すところも出てきている。あるいは既存の流通販路ではなく、自らリスクを負ってネット通販などにも進出する生産者も出てきている。勿論、販売先も国内から海外へと広げてだ。

円安で輸出において業績が改善する企業もあれば、輸入に頼る消費現場では値上げに苦慮する企業もある。そうしたなかでの消費増税の受け止め方である。下請け業者にしわ寄せがいかないようなスムーズは価格転嫁を行なわせるとした法の整備がもしもし成立したとしても、今までもそうであったように法に抵触しない隙き間市場の開発を目指すビジネスが今以上に盛んになる。中小企業を守るなどと表面をとりつくるような姑息な方法はとるべきではない。もし、成長戦略をと言うのであれば、こうしたチャレンジャーにこそ金融を始め支援すべきであろう。この中から、第二のソニーもホンダも、勿論次のワールドビジネスである日本の飲食業、マクドナルドに替わるようなジャパニーズレストランも生まれてくるであろう。
ところで数日前に政府はTPP交渉への参加を表明した。時代は異なるが江戸時代天保の時代においても市場経済が大きく転換した時があった。次回はその転換はその後どんな意味を持つに至るか、TPPの課題と共に考えてみたい。(続く)  


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2013年03月11日

◆デフレ、増税、隙き間市場への着眼

ヒット商品応援団日記No548(毎週更新)   2013.3.11.

前回消費増税へ向けて、マクドナルドが九州地区と山口県で値上げの実験を行なっていることの意味合いをブログに書いた。そして、日経MJ(3/8号)ではJフロントが増税前に傘下の食品スーパー「大丸ピーコック」の「見切り売却」を行なったと報じている。周知のように食品スーパーは最も価格競争の激しい業界であり、Jフロントとして価格対応策を打ちえなかったため増税前にイオンに売却したという内容であった。一言で言えば、セブン&アイやイオンのようなPB商品の開発拡充やスーパーOKのようなわけあり商品のエブリデーロープライスのシステム化による価格対応といった対策を立てることが出来なかったということである。つまり選択と集中策として、グループ傘下の「パルコ」への経営資源を集中させ、「ピーコック」を売却したということである。1年後の消費増税に向けて既に動き始めている。

ところで政府は産業界に対し盛んに賃金アップを要請し、個別企業ではローソンやセブン&アイ、更にはファミリーマートが応え始めている。消費はこうした賃金アップ等の「情報」によって左右される心理市場化されているが、一言で言うならば基本は将来の収入に対し、楽観的であるか、悲観的であるかによって決まる。周知のように、過去10年間で世帯収入は100万円弱減少するなか、2008年秋のリーマンショック後、何が起きたか想起しなければならない。リーマンショックの翌年の春には一斉に「副業」に走る人が増えた。主婦は勿論のこと、サラリーマンも休日には副業へと向かい、勤務先企業もこれらアルバイト収入を認めるところも出てきた。未来に楽観できないということの証左であった。
だが、今年に入り、その収入が少しづつ上向きになり始めている。1月の「勤労統計調査」によれば生活サービスや不動産、医療、福祉で働くフルタイム労働者の賃金が牽引し前年同月比1.3%増となっている。(但し、製造業、電気、ガス、飲食はマイナス)また、百貨店協会による1月度の売上は全国の前年同月比0.2%、東京では0.5%と上向きになっている。この数ヶ月間賃金の動向を見極めなければならないが、過去10数年に渡る賃下げは新興国、特に中国の賃金水準に引きずられてきたものであるが、日本の労働力も国際競争力がつき始めており賃金アップは望めないにせよ横ばい状態が予測される。しかし、残念ながら全体の底上げにはまだまだ時間がかかる。

一方、この春から主に円安による値上げラッシュが多くの消費領域で起きる。このブログで資源小国である日本の構造的課題、上流はインフレ、下流はデフレ、という構造による値上げである。新聞紙上で掲載されているので詳細については書かないが、電気料金、ガソリンといった燃料代に加え、鉄鋼、石油化学、等の産業素材の値上げまで広がってきた。具体的商品名でいうと、トイレットペーパー等の紙製品やポリエステル繊維による衣料、更には鉄鋼では鋼板といった産業素材。勿論、ほとんど輸入に頼っている小麦粉は4月から平均10%弱の値上げになる。
そして、1年後の消費増税を睨み、喫緊の課題である原材料高騰に対する判断が問われている。その判断の基礎は当然のことであるが、消費者の消費心理である。こうした値上げに見合う賃金の上昇はまだまだ難しく、消費レベルでは当分の間デフレは進行する。

昨年秋、消費増税によってどんな変化が生まれるか、あるいは生まれつつあるか、その変化についてブログに書いた。まとめると次のような消費変化が予測される。

1)減少し続けてきた収入に対し、価格価値、同じ商品であれば他より安く、あるいは費用対効果としてコストパフォーマンスの高い商品や業態への消費変化。更なるセルフスタイル化、ブッフェスタイル化の進行。一店、一商品、一エリア、一人への集中現象が起きている。この傾向は更に進行する。
2)東日本大震災の経験を踏まえ、自己防衛的価値観の強まりと新しい合理的価値観、賢明なスマートライフ志向が進む。
3)価格価値以外の新たな価値創造への模索。
・過剰情報時代の「体験」という納得価値。
・「断捨離」の延長線上にある「国民総幸福量」という新しい価値概念。
・ありそうでなかった隙き間市場の発芽。ex、若い世代へのフレンチ。
・新しい価値概念「Reコンセプト」による新業態、新メニューの誕生。

また今後の消費増税対策として参考とすべき業態の一つが「100円ショップ」の動向である。”100円でこんなものが買えるのか”という驚きをもって急成長してきた業態である。周知のように「100円ショップ」の多くは途上国でオリジナル製造した商品の輸入に頼った小売り業態である。各社の仕入先輸入比率は30〜80%と言われているが、輸入比率の高い企業は円安と共に、消費増税への対応をどのように考えているかである。現状では商品の在庫管理を徹底することによって、コストアップを吸収する方向で進んでいるようである。
ところで、「100円ショップ」は100円という「価格の隙き間」を狙ったビジネスであるが、一種のディスカウンタービジネスとして24時間営業という「時間の隙き間」ビジネスを狙ったのがドンキ・ホーテである。また同じ「隙き間」というマーケット着眼であれば、昨年のヒット商品の一つである「俺のフレンチ」は立食いという「スペースの隙き間」であり、「東京チカラめし」は「焼肉丼」という「メニューの隙き間」ビジネスと言えよう。
そして、既存業態においても「隙き間」ビジネスが盛んである。支出を抑える為に「食」においては外食→中食→内食への傾向が進行してきた。しかし、この1〜2年前からファミリーレストランを筆頭に隙き間市場であった朝食を安価なメニューをもって新市場を開拓し始めている。例えば、東京駅を始め、駅のラーメン店では「朝らー」という新メニューでサラリーマン層を開拓している。あるいは野菜たっぷりの長崎ちゃんぽんで女性の気持ちをとらえたリンガーハットも健康という「テーマの隙き間」に着眼したメニューである。今一度、価格の隙き間、時間の隙き間、スペースの隙き間、テーマの隙き間を見直して見るということだ。

こうした新しい市場着眼によるイノベーションと共に、小さなヒット商品が生まれてくる。その着眼であるが、いわゆる「もどき」商品、「もどき」メニューである。食で言うと、古くは「がんもどき」であり、戦後最大のヒット商品では「カニかま」であろう。こうした「もどき」は京都の庶民生活の知恵として今なお受け継がれている。高い牛肉を使わずに、「おあげさん」をその代用食とするといった具合である。「もどき」、「○○したつもり」、「ひととき」こうした工夫ある商品や業態が次々と生まれてくるであろう。デフレの進化は単なる安さ競争だけではなく、このようなアイディア商品と共に進行していく。
デフレとインフレが混在する消費市場にあって、まず着眼すべきは「隙き間」と「代用・代替」である。もっと簡単に言えば、「ありそうで無かった市場」への着眼である。これも消費増税に向かう重要な対策となる。(続く)  


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2013年03月01日

◆デフレ時代の消費心理、そのメカニズム 

ヒット商品応援団日記No547(毎週更新)   2013.3.1.

日経MJ(2/27号)に注目すべき面白い記事が載っていた。面白いとはマーケッターとしてであるが、デフレ下における価格への消費心理についてである。100円バーガーに象徴されたデフレの旗手マクドナルドが苦戦しているという記事である。周知のように全国チェーン店にあっていち早く地域価格制を導入したマクドナルドが福岡をはじめとした九州地区と山口県で1月から値上げの実験を行なっている記事である。ちなみにその値上げ価格例であるが
・100円ハンバーガー→120円
・チーズバーガー120円→150円
*但し、フライドポテトやマックナゲットなどは値下げをしている。
こうした実験の紹介と共に、昨年度が9年ぶりの減収減益となり既存店の不振が続いていると報じている。また併せて不振の背景を探るために、日経MJが独自に消費者調査を行ない、その調査結果は以下となっている。

1)一年前と比べてマックはどう変わった?
・マックの価格が高くなった:31.5%
「高くなった」というマイナス評価が一番大きく、その世代別では若い世代がより高いマイナス評価となっている。(10代:33.4%、20代;47.7%、30代:43.4%)そして、結果マック利用が減った消費者が19.3%。
2)マックの代わりに行くのは?
・牛丼店等のファストフード:40.1%
・コンビニ:37.1%
3)マックでいくら支払いますか?
・300円〜500円未満:41.3%
・500円〜700円未満:26.8%
・101円〜300円未満:17.1%
4)マックに期待することは?
・低価格:63.5%
・味品質の向上:54.4%
・割引:41.0%
そして、代表的な顧客の声を紹介している。例えば、「マックの売りはやっぱ安さ。」(中学生) 「500円払っても十分お腹が満たない。これなら牛丼食べに行く。」(大学生)こうした調査結果を踏まえ、競争市場にあって、顧客は相対的に「マック高くなった」とコメントしている。

さて、こうしたデフレ下での価格設定をどうすべきか、特にマクドナルドの値上げ実験の理由の一つと思われる来年4月に予定されている消費増税への対応策も含めた課題としてある。
この調査結果からも明確に出てきているのが、「価格は相対的」なもので、しかも「ハンバーガーに代わる食」はいくらでもあるということである。その象徴として顧客の声として牛丼とコンビニが挙げられているが、周知のように大手牛丼チェーン3社は「並盛り250円」キャンペーンが常態化しており、更にメニュー変化を取り入れて牛丼、豚丼、鳥丼と多彩である。また、確か4年程前であったと思うが、ヒット商品となった300円を切るお徳弁当はコンビニへと広がり、例えばファミリーマートではチルド弁当に力を入れ、更に「今お得」というキャンペーンが常態化している。

1年以上前から東京の飲食店ではランチはワンコイン(500円)が常態化しているとブログにも書いた。更に、自前のお弁当族が増え、ロフトや東急ハンズのお弁当容器売り場がにぎわっているとも。日経MJが「マック 高くなった」とコメントしているが、消費者が高いと感じるのは至極当然であろう。
他にも多くの同様の事例がある。例えばミスタードーナツの「100円ドーナツ」キャンペーンも同様である。キャンペーン期間中は多くの集客成果が得られるが、キャンペーンが終了したとたん急激に客数が減り、勿論売上も減少する。こうした傾向は以前から見られることであるが、問題はキャンペーン終了後の売上減少幅が次第に大きくなる傾向についてである。

そして、これも4年程前から指摘してきたことであるが、こうした割引やわけあり低価格の常態化とは、あのウオルマートのポリシーである「エブリデーロープライス」(毎日がバーゲン)と同じ経営を目指しているということである。マクドナルドの戦略は「100円マック」を「120円マック」にして増税前に値上げして、来年4月には価格変更はしない、という事前策であると原田社長は日経ビジネスオンライン(3/1)で発言している。
ところで1998年4月の消費税5%導入時にはマクドナルドは「半額バーガー」キャンペーンを行ない圧倒的な顧客支持を得て、その後デフレの旗手のポジションを得ることが出来た。そして、今回の値上げ実験を成功させることが、消費増税への対応策とする戦略である。これは推測の域を出ないが、来年4月には同じように「半額」キャンペーンをするのではないかと思う。「120円マック」は「60円マック」になるということだ。

今回のマクドナルドの戦略は、消費増税前に経営の基礎となるメニュー価格(値上げ、値下げ)を再確立させ、顧客満足度を睨みながら「割引」を使って売上を確保するということにつきる。既にこの手法はザ・マクドナルドであるビッグマックの「200円」キャンペーンで驚異的な売上という成果を得ている。普通に考えると安くすることによってブランドイメージを毀損するかもしれないとして、周辺商品を対象とするのが普通である。しかし、マクドナルドの卓越した戦略性は看板商品、ザ・マクドナルドであるビッグマックを200円にするという極めてインパクトのあるキャンペーン、期間限定という手法の巧みさにある。こうした割引という手法を使うためにも「120円マック」を成功させたいということであろう。もっとあからさまに言えば、120円とすることによって、「マック 高くなった」として利用回数が一時期減っても、割引キャンペーンによって再び顧客を呼び戻せるということだ。これも消費増税をチャンスに変える顧客心理戦略である。(続く)  


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