2010年12月19日
◆断捨離の先に
ヒット商品応援団日記No476(毎週更新) 2010.12.19.
年末の大掃除時期ということもあり、「断捨離(だんしゃり)」に注目が集まっている。やましたひでこ氏が提唱する一つの生活思想であるが、つい思わず買ってしまい、使われずに部屋の片隅にしまわれ、捨て去られることなく溢れ返ってしまう生活。そうしたモノ達と自分との関係を本質的に問い直し、考え方を変える新しいライフスタイルの提唱である。従来からある暮らしの整理整頓術といったハウツーとしてのそれではなく、モノにとらわれない暮らし方、生き方の提唱で過剰な時代のキーワードの一つとなっている。1990年代初頭のバブル崩壊以降、「豊かさ」とは何かを問い続けて来たなかの一つの答えで、豊かさとモノとの関係への考えとしてある。
ここ4〜5年、特にリーマンショック以降顕著であるが、「下取り・リサイクル」や「「わけあり商品」のヒット商品化、「アウトレット人気」や「セルフスタイルの進行」、・・・・・こうした消費現象、こうした巣ごもり生活から生まれた生活思想の一つとして断捨離もある。ただ、思想足り得ていないのは、今までの考えを改め生活を一新する入り口とはなってはいるが、その奥、その先に「何」を見出すかが明確になっていない点である。
ところで、この断捨離の先に何を見出すかであるが、私の場合は禅語にある「無一物中無尽蔵(むいちもつちゅうむじんぞう) 」という言葉を思い起こさせる。何一つないところに、すべてのものが蔵(かく)されているという意味であるが、道元禅師は生きていくのに最小限のものがあればいい、「放てば手に満てり」と教えてくれている。断捨離に倣って言うならば、断ちなさい、捨てなさい、離れなさい、その先にどんな生活を置くかである。私の表現からすれば、過剰なものを削り、更に削ぎ落とし残るもの、それが「先」にある世界である。シンプル・イズ・ベストと言っても良い。食でいうと、素材を生かす、塩味だけ、手をかけない、ある意味本質・本当に戻ろうという潮流である。
この潮流を視点を変えて言うと、例えば現在のデザイン潮流は、ノンデザイン・デザイン、シンプルデザインが求められているということである。あるいは、ノンエイジデザイン、ノン(ユニ)セックスデザインといってもかまわない。そうした潮流の意味は、デザイン主体が顧客の側に移ったということである。自分の好み・テイストが表現しやすいように、余計なデザインをするなということである。
断捨離は市場のパイを小さくする、消費を抑制するといった意見がある。私は四十年ほどマーケティングを仕事としてきましたが、消費欲望を刺激するだけのマーケティングから、本来あるべき過不足なく届けるマーケティングという原点に回帰すべき時を迎えていると考える。
今年のヒット商品番付に「200円台牛丼」が入っているが、低価格な外食が不足しているから大きな支持が得られているのだ。このブログでも何回か書いてきたのでこれ以上書かないが、1998年以降年間収入が減り続け10年間で100万円弱もの収入が減ったという経済背景がある。「過不足」なことは何か、これを見極めることがマーケティングの原則である。過剰を削ぎ落とすのも顧客、不足を埋めるのも顧客、そうした消費者を私たちは「成熟顧客」と呼んでいる。ここ数年の巣ごもり生活とは、こうした「次なるシンプルライフ」を熟成させてきたということだ。(続く)
年末の大掃除時期ということもあり、「断捨離(だんしゃり)」に注目が集まっている。やましたひでこ氏が提唱する一つの生活思想であるが、つい思わず買ってしまい、使われずに部屋の片隅にしまわれ、捨て去られることなく溢れ返ってしまう生活。そうしたモノ達と自分との関係を本質的に問い直し、考え方を変える新しいライフスタイルの提唱である。従来からある暮らしの整理整頓術といったハウツーとしてのそれではなく、モノにとらわれない暮らし方、生き方の提唱で過剰な時代のキーワードの一つとなっている。1990年代初頭のバブル崩壊以降、「豊かさ」とは何かを問い続けて来たなかの一つの答えで、豊かさとモノとの関係への考えとしてある。
ここ4〜5年、特にリーマンショック以降顕著であるが、「下取り・リサイクル」や「「わけあり商品」のヒット商品化、「アウトレット人気」や「セルフスタイルの進行」、・・・・・こうした消費現象、こうした巣ごもり生活から生まれた生活思想の一つとして断捨離もある。ただ、思想足り得ていないのは、今までの考えを改め生活を一新する入り口とはなってはいるが、その奥、その先に「何」を見出すかが明確になっていない点である。
ところで、この断捨離の先に何を見出すかであるが、私の場合は禅語にある「無一物中無尽蔵(むいちもつちゅうむじんぞう) 」という言葉を思い起こさせる。何一つないところに、すべてのものが蔵(かく)されているという意味であるが、道元禅師は生きていくのに最小限のものがあればいい、「放てば手に満てり」と教えてくれている。断捨離に倣って言うならば、断ちなさい、捨てなさい、離れなさい、その先にどんな生活を置くかである。私の表現からすれば、過剰なものを削り、更に削ぎ落とし残るもの、それが「先」にある世界である。シンプル・イズ・ベストと言っても良い。食でいうと、素材を生かす、塩味だけ、手をかけない、ある意味本質・本当に戻ろうという潮流である。
この潮流を視点を変えて言うと、例えば現在のデザイン潮流は、ノンデザイン・デザイン、シンプルデザインが求められているということである。あるいは、ノンエイジデザイン、ノン(ユニ)セックスデザインといってもかまわない。そうした潮流の意味は、デザイン主体が顧客の側に移ったということである。自分の好み・テイストが表現しやすいように、余計なデザインをするなということである。
断捨離は市場のパイを小さくする、消費を抑制するといった意見がある。私は四十年ほどマーケティングを仕事としてきましたが、消費欲望を刺激するだけのマーケティングから、本来あるべき過不足なく届けるマーケティングという原点に回帰すべき時を迎えていると考える。
今年のヒット商品番付に「200円台牛丼」が入っているが、低価格な外食が不足しているから大きな支持が得られているのだ。このブログでも何回か書いてきたのでこれ以上書かないが、1998年以降年間収入が減り続け10年間で100万円弱もの収入が減ったという経済背景がある。「過不足」なことは何か、これを見極めることがマーケティングの原則である。過剰を削ぎ落とすのも顧客、不足を埋めるのも顧客、そうした消費者を私たちは「成熟顧客」と呼んでいる。ここ数年の巣ごもり生活とは、こうした「次なるシンプルライフ」を熟成させてきたということだ。(続く)
マーケティングノート(2)後半
マーケティング・ノート(2)前半
2023年ヒット商品版付を読み解く
マーケティングの旅(1) 「旅の始まり」後半
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春雑感
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Posted by ヒット商品応援団 at 13:47│Comments(0)
│新市場創造