2021年12月11日

◆2021年ヒット商品番付を読み解く  

ヒット商品応援団日記No800毎週更新) 2021.12.11

今年も日経MJによるヒット商品番付が発表された。そこで敢えてコロナ禍2年間のヒット商品番付を併記したが、コロナ禍=巣ごもり需要からどんな変化が生まれているかを観ていく必要があると感じたからであった。つまり、ライフスタイル変化がどのあたりに現れているかで、2022年以降の変化の芽となり得るかどうかに着目したかったからである。

2021年
東横綱 Z世代、 西横綱 大谷翔平
東大関 東京五輪・パラリンピック、西大関 サステナブル商品    
東関脇 シン・エヴァンゲリオン劇場版、西関脇 イカゲーム
東小結 ゴルフ、   西小結 冷食エコノミー
2020年
東横綱 鬼滅の刃、 西横綱 オンラインツール
東大関 おうち料理、    西大関 フードデリバリー
東関脇 あつまれ どうぶつの森、西関脇 アウトドア
東小結 有料ライブ配信、   西小結 プレイステーション5

コロナ禍の1年10ヶ月、巣ごもり需要という大きな括りとは大きく異なる消費行動があるとすれば東西横綱のZ世代と 大谷翔平である。次回の未来塾で大谷翔平(ミレニアム世代)については取り上げているのでここでは大きくは触れないこととする。というのも周知のZ世代の上の世代がミレニアム世代で、ある意味対極とは言わないまでも極めて異なる価値観を持つ世代であるからだ。ミレニアム世代についてはかなり以前から多くのことに興味関心を持たない「欲望喪失世代」、私の言葉で言えば「離れ世代」であるのに対し、Z世代はデジタルネイティブと呼称され、周知のTikTokを流行らせた世代である。ちなみにTokは2018年第一四半期、App Storeのアプリダウンロード数で世界一になり、世界的な流行になったアプリである。
つまり、上の世代とは異なりグローバルな世界を日常としてきた世代と言っても過言ではない。この消費旺盛さに着眼したのがguをはじめとしたアパレル企業で世界的な潮流となっているジェンダーレス商品へと一斉に取り組みはじめた。わかりやすく言えば、その嗜好は体のラインが強調されがちなレディース服を着るのが苦手で、ダボっとした大きめのサイズ感で、かつオシャレにも見える男女兼用できる服と言ったら理解できるかと思う。アパレリ企業だけでなく、無印良品でも、2019年から性別や年齢、体形に関係なく着用できるサイズ感の服を売りにした「MUJI Labo」の服が展開されている。
また、デジタルネイティブ世代と言われてきたように、SDGsにも理解共感する世代である。西大関 サステナブル商品にも出てきているが、それまでのエコロジーから更に地球規模の運動への取り組みで、Z世代のが地球市民あることがわかる。

ところで20年と21年を比較し変化があるとすれば、巣ごもり需要の進化であろう。その象徴として挙げられているのが西小結 冷食エコノミーである。レトルト商品・冷凍食品の需要からの進化で、レトルト商品はご当地カレーのように多様な楽しみ方へと変化し、冷凍食品は自販機にまでその販路が広がってきたと言う進化である。
こうした「広がり」はそれまでのメニューに「ちょい足し」して別の楽しみ方ができる調味料の新たな需要へと繋がっていく。あるいは既存のメニュー、袋麺やコンビニ商品を別のメニューへとアレンジし変えていくアイディア料理にまで広がっていく。例えば、袋麺の塩ラーメンを使ったカルボナーラのように。クックパッドでも各部門でアイディアコンテストを行っているが、その受賞メニューを見ていくと従来の調味料を味噌に変えたりして「味変」を楽しむと言った工夫・アイディアが多い。つまり、既にあるものを「変化」させて楽しむ巣ごもり消費である。食品メーカーもどんな食べられ方をしているか調査していく必要に迫られていると言うことだ。よく言われてきたことだが、ここでも「モノ消費」から「コト消費」への進化の広がり、調理を遊ぶと言った進化である。また、流通の側も新たな変化を見せている。例えば、先日成城石井の店で買い物をしたが、行われていたのはシンガポールフェアであった。全国ご当地フェアなどが人気となっているが、旅気分にひたれるテーマにシンガポールとはさすが成城石井だなと感心した。こうした消費変化に対し、「外食産業」も当然巣ごもり消費を超える進化、新しい価値あるメニュー提供をしなけれならないと言うことだ。

巣ごもり消費における年末年始の旅行需要についてだが、昨年と比較し旅行したいという意向を示している生活者は減少しており、コロナ感染がおさまっているにもかかわらず、コロナ禍以前と比較し遠く及ばない。12才未満のワクチン非接種人口を引いた2回接種人口は90%近くにまで進んでいるが、ワクチン効果が減少していることから感染がまだまだ続くとの認識が生活者に広く浸透している。結果、2年前のような旅行へと向かう生活者はまだまだ少ないと予測される。昨年と同様、安心安全にこだわり、行先・移動手段・宿泊先を選択・する、自宅から近いところに車で移動、近しい家族と少人数で1泊2日が主流となっるであろう。感染防止を最優先 した「新常態の安近短」という潮流である。勿論、GOtoトラベルの再開が年明けの1月末に予定されている背景もあるが、まだまだ2年前の需要には遠く及ばない、いや新たなコンセプト、新たな価値に基づいた旅行メニューが求められていると考えるべきで、従来の「あり方」では「新常識」には合致しないと言うことだ。例えば新しい価値あるメニューの一つがキャンピングブームを踏まえた「グランピング」であろう。ここでも顧客・生活者は変わっているのに、まだまだ提供する観光産業が変っていないと言うことである。

最新の家計調査報告を見てもわかるが、8月~10月の消費支出は減少のままである。リベンジ消費などど盛んに消費を促す言葉が流されているが、従来の商品・サービスを求めることではない。支出は減少しているが、貯蓄はその分増えている。将来への不安という要因もあるが、新しい価値ある商品・サービスの創造が徹底的に足らないと言うことの結果である。今、百貨店の正月おせちに話題が集まっているが、年末年始の旅行をやめた代わりの「代替消費」であり、新しい価値観による消費ではない。
次回の未来塾ではZ世代の上の世代であるミレニアム世代を中心に「コト起こし」の可能性について分析を行っている。この世代は欲望喪失とでも表現したくなるように消費という舞台に登場してこなかった世代である。自動車をはじめ、TV離れ、車離れ、オシャレ離れ、海外旅行離れ、恋愛離れ、結婚離れ、・・・・・・執着する「何か」を持たないまるで欲望を喪失したかのような世代で、私は「離れ世代」と呼んでいる。しかし、その「離れ」の一つであるアルコール離れについて大きく変わりはじめている。特に大阪での事例であるが、新しいメニュ~業態が生まれ行列ができる飲食店が数多く登場している。勿論、アルコールに新しい価値を見出したのではなく、「仲間と集うスタイル消費」が創られ、そこにアルコールもあるという飲食業態である。先月2年ぶりに大阪の街を歩いたが、そうした飲食店には若い世代が今なお行列ができており、街の賑わい復活の「核」となっている。(続く)



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Posted by ヒット商品応援団 at 13:05│Comments(0)新市場創造
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