2013年06月26日

◆好況感と不況感 

ヒット商品応援団日記No557(毎週更新)   2013.6.26.

消費は単なる景気の結果だけでなく、その裏に潜む価値観やお金の使い方、あるいは地域間の違い、勿論年齢や性差、ライフステージなどといった極めて根本的なことを表している。先日2013年上半期ヒット商品番付が日経MJ(6/19号)から発表された。その概要であるが、
・東の横綱 高級時計・宝飾品  西の横綱 住宅ローン
・東の大関 東南アジア観光客  西の大関 コンビニコーヒー
そして、日経MJの上半期ヒット商品の傾向を「高揚と堅実 二刀流」というキーワードで表現している。アベノミクスを受けての消費評価であるが、それは東西横綱のヒット商品に表れている。この高揚(高級時計・宝飾品)と堅実(住宅ローン)という2つのお金の使い方、あるいは消費実態については3〜4月の頃のブログにおいて私も新たな傾向として指摘をしてきた通りである。

恐らく地方のブログ読者は日経MJの記事や私のブログについてどこか実感できないという方が多いかと思う。確かに景気実感について、どの新聞社の調査を見ても75〜80%の人は景気が良くなったとは思わないと答えている。当り前のことであるが、景気が良いとは収入が増えることとほぼイコールであり、収入が増えない以上良くなったという景気実感などありえない。西の横綱の住宅ローンのように少しでも安い金利でローンを組むといった生活防衛のように、賢明な消費判断へと向かっている。日本チェーンストア協会(スーパーマーケット)の売上についての発表も横ばいもしくは微増となっている。(ちなみにチェーンストア販売統計では5月度は99.3%/店舗調整後となっている。)
ところが日本百貨店協会の売上を見ていくと、日経MJが「高揚と堅実 二刀流」という異なる消費を横綱に据えた背景がわかる。その理由・背景であるが百貨店売上は改善傾向にあり対前年比を上回る実績となっている。しかも、東京地区は以下となっており、その地域差は極めて大きい。
◆5月度全国百貨店売上 前年同月比2.6%(2か月連続プラス)
◆5月度東京地区百貨店売上 前年同月比5.1%(5か月連続プラス)
更に、問題の消費者物価指数であるが、4月まではマイナスであったが、5月度はプラスに転じることが予測されている。その最大理由は東京都区部が大きくプラスへと上昇し、全国の指数を押し上げた結果である。
つまり、極端な言い方ではあるが、百貨店の売上結果にも出てきているように、東京の好況感と地方の不況感、それに基づくヒット商品が明確に違いとなって出てきたということである。

そして、東京の景気感と地方の景気感との違いを増幅させているのが「集客力」の違いである。勿論、東京にもシャッター通り化した商店街もあるが、そうした意味合いでの集客ではない、いわば「東京観光」という都市観光力によるものである。日経MJの大関にもランクされているが韓国や中国に替わって東南アジアからの観光客が円安という追い風を受けて急速に増え始めている。以前とは異なった多様な賑わいが東京の街に生まれてきたということである。
そして、インターネットの時代であり、日本での観光やお土産には何を買うか、既に熟知しており、例えばタイの観光客の人気スポットの一つが横浜ラーメン博物感でとんこつラーメンを必ず食べるとのこと。また、東南アジアの人達のお土産にはドラッグストアや100円ショップで買い求めている。従来の中国人観光客のように銀座通りに観光バスを停め、百貨店でブランド品を爆買いしたり、秋葉原では炊飯器等の家電製品を買い求める光景とはまた異なる街の賑わい感を醸し出している。東京スカイツリーや浅草寺といった観光地と共に、こうした新しい集客が景気感を創っている。恐らくこの夏以降は世界文化遺産に登録された富士山観光が活況を見せることとなる。文化がやっと経済をひっぱってきているということである。そうした市場にはアニメなどクールジャパンと言われている文化産業が観光市場の背景にある。

こうした海外観光客のように、新たな顧客が生まれれば新たな消費も生まれる。円安という極めて分かりやすい理由からであるが、昨年度までの円高の恩恵を受けた私たちと同じ関係にある。こうした変化への迎え方であるが、戦後の焼け野原からの復興も、常に目の前の問題にフレキシブルに対応してきたことによって日本の今がある。課題としてあるグローバル化、脱グローバル化といった二者択一的時代は既に終えていると私は理解している。そして、日本ほど早くグローバル化した国はないと考えてもいる。
1990年代初頭のバブル崩壊後、鉄鋼などの重厚長大型産業の低迷だけでなく、次なる仕事を求める中小企業の多くは中国を中心にアジアという新天地へと向かい、空洞化というキーワードが盛んに言われてきた。これもグローバル化によって生まれた課題である。確か2004年であったと記憶しているが、日本の貿易相手国のNo1は米国に替わって中国となった。その象徴ではないが、ユニクロを始めとした企業群の進出は周知のとおりである。そして、アニメなどのクールジャパン産業と共に、ジャパニーズレストランが世界中に進出している。周知の寿司からラーメンに至る日本食レストランであるが、その多くは中小企業である。これも見事なグローバル市場への適応であり、少し大仰に言うならば、ポスト・グローバル時代のビジネスである。

ところで少し前のブログにミニバブルは終わったと書いたが、多少の株価の乱高下はあるにせよ、落ち着くところに収まるようである。既に中元商戦に入っているが、1か月程前から高額贈答商品への注目度が高いとTV報道がなされていたが、それほどではない実態となっている。よくよく考えれば、「お中元」はそれほど大きな消費市場ではない。東京では恒例となっているが、1か月ほど経てば、お中元の売れ残り商品、アウトレット商品を激安で売る百貨店がTV報道されるであろう。そして、これら消費は全てギフトではなく自家消費である。(続く)


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Posted by ヒット商品応援団 at 13:54│Comments(0)新市場創造
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