2007年11月18日

◆空気を読む (KY)         

ヒット商品応援団日記No219(毎週2回更新)  2007.11.18.

先日、2007年度「新語・流行語大賞」にノミネートされたキーワードが発表された。どの言葉が大賞となるかは分からないが、ここ数年の推移を見ていくと一つの「時代」が見えてくる。
2004年度/「チョー気持ちいい」、「気合だー」
2005年度/「小泉劇場」、「想定内(外)」
2006年度/「イナバウアー」、「品格」
2007年度/「KY(空気が読めない)」
2007年度の「KY」は私が勝手に入れてみたのだが、2005年度までの大賞は、あっと驚く感嘆詞、劇場型、サプライズ的な過剰な世界を象徴したキーワードであったのに対し、2006年度からは藤原正彦さんの著書から生まれた「品格」に代表されるような情緒、知性、内から醸し出される雰囲気、といった精神世界へと変化してきているように思える。こうした推移の延長線上で考えていくと「KY(空気が読めない)」が今年度の大賞ではないかと私は思っている。

言葉になかなか表しにくい微妙な世界、見えざる世界、こうした世界を感じ取ることが必要な時代に生きているということである。善と悪、YesとNo、好きと嫌い、美しいと醜い、こうした分かりやすさだけを追い求めた二元論的世界では見えてこない世界を「空気」と呼んだのだと思う。元々中高校生が日常的に「分かっていないヤツ」という意味で使っていた言葉であるが、安倍内閣の国民の意志を感じ取れないさまをマスメディアが援用したことから広く使われるようになった言葉だ。
そもそも漢字、カタカナ、ひらがな、という3つの言語を持っている民族は世界にあって日本だけである。特に、ひらがなは日本固有の言葉であり、人の機微、情感を表現する文化として日本人の精神世界にはなくてはならない言葉だ。

「空気が読めない」とは、想像力の欠如、感じ取る力の喪失、教養力の欠如、といったように表現できるであろう。「空気」を場面や人間関係に置き換えて言えば、ジコチュウや今流行のモンスターペアレント、モンスターペイシェントなんかにもつながっていく。あるいは、もっとネガティブな世界では「いじめ」にもつながっていく。つまり、コミュニケーションの単位が国家や、企業、地域、更には友達やクラブ仲間、家族それぞれの単位の中でのコミュニケーションが機能しなくなり始めているということだ。過剰な情報の時代であるが故に、コミュニケーションできないという現実が「KY(空気が読めない)」という流行語を生み出したと思う。

IT技術の進化により、20年前には会って話すことが出来なかった人達といとも簡単に情報のやりとりが可能となった。しかし、便利な時代にあって、失ったものもある。会話、対話という空気が読めるコミュニケーションだ。昭和回帰、レトロブーム、もっと広げれば和回帰もそうであるが、全てがオープン、互いに見える世界に生活し、仕事もし、生きていた。昭和の時代、狭い部屋の中では子供が今日学校で何があったか、話すまでもなく表情だけで分かる。
マーケティング、ビジネスに視点を移すと、対話、会話は現場にあり、今回の船場吉兆の不祥事はまさに社内外との対話を喪失したことによって起こったことだ。特に、顧客との対話を通じ「空気を読む」ことが極めて重要となっている。カリスマと呼ばれて来た人は皆この「空気を読める」人達である。初代カリスマである渋谷109エゴイストの渡辺加奈さんから、山形新幹線のカリスマ販売員齋藤泉さんまで、全て「空気が読める」人である。つまり、カリスマという人材を含め、人が生き生きと生かされ顧客の気持ちまで感じ取るには、対話という原点に立ち帰ることだ。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 13:43│Comments(0)新市場創造
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