2007年07月01日

◆「儲ける」と「役に立つ」

ヒット商品応援団日記No180(毎週2回更新)  2007.7.1.

「儲ける」と「役に立つ」  、この2つのテーマは商売・ビジネスに携わる人にとって永遠のテーマである。そして、最近のミートポーク社における牛肉偽装事件や少し前の耐震偽装事件やライブドア事件といった経済事件の多くは、この2つの命題に深く関わっている。勿論、2つともビジネスには不可欠で表裏、鶏と卵のようなものであるが、この2つをもう少し分かりやすく整理すると、「儲ける」にウエイトを置くのが欧米の商慣習、「役に立つ」にウエイトを置くのが今までの日本の商慣習。数年前から言われている企業価値も簡単に言ってしまえば、「儲ける」と「役に立つ」の2つがテーマとしてある。

今回、私が「人力経営」という本を書いた理由の一つが、この2つのテーマの狭間で悩み、決断を下す経営リーダーの姿であった。例えば、ダスキンもミスタードーナツ肉まん事件を起こし社会の批判を受けたが、その背景にはデフレ下での激烈なコスト削減競争があった。他のファーストフード業界と同じように肉まんを中国で製造していたのだが、日本においては使ってはいけない添加剤を使い、その情報を隠蔽したと社会から指弾された事件である。この危機を救ったのは、「役に立とう」とする経営理念を顧客接点における現場の人の実践であった。今回のミートホープ社の不祥事においても危機管理会社のコメントが数多く報じられたが、本質としての危機管理は経営理念を現場の人がいかに生きるかにかかっている。

「役に立つ」 ことを続け、結果「儲ける」こととなれば理想である。しかし、なかなかそのようにはいかない現実がある。「役に立つ」象徴がボランティアであり、NPO法人である。しかし、継続して「役に立つ」、更にはその「役に立つ」を広げていくには「儲ける」ことが必要だ。最近では、有償ボランティアという仕組みも出て来ており、そもそも株式会社の原点はNPO法人であることを考えれば、非営利活動も「儲ける」ことを考えなければならないということだ。
沖縄南城市にある世界遺産「斎場御嶽(せ〜ふぁ うたき)」への入場が7/1から200円の入場料をとると報じられた。市の財政は厳しく、保全のためにはボランティアにおんぶにだっこでは続かないということだ。本土からの観光客は「未知」の世界を求めてやってくる。しかし、沖縄の人にとっては日常の祈りの場である。観光客からは2000円でも3000円でも徴収したら良い。しかし、沖縄に住む人達からは出来る限り徴収しないで欲しいと思う。

「役に立つ」ビジネスの代表的なものとして近江商人の心得、「三方よし」がある。「売り手よし、買い手よし、世間よし」の中に次のような教えが残されている。
利真於勤(りはつとむるにおいてしんなり)
唐の詩人韓愈の「業精於勤(業は勤において精し)」、から転用して作られた言葉であり、小倉栄一郎によれば伊藤忠兵衛の座右の銘という。商人の手にする利益は、権力と結託したり、買占めや売り惜しみをしたりせず、物資の需給を調整して世のなかに貢献するという、商人の本来の勤めを果たした結果として手にするものでなければならない。そうした利益こそ真の利益であるという意味である。(財団法人「滋賀県産業支援プラザ」より、http://www.shigaplaza.or.jp/sanpou/mini_info/ohmi_businessman.html#5
(続く)

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