2010年04月21日

◆つぶやき効果

ヒット商品応援団日記No460(毎週2回更新)  2010.4.21.

ここ2回ほどツイッターに関するテーマについて書いたが、そのキーワードである「つぶやき効果」について、日経MJが「1−3月のヒット商品」について触れている。個人の体験などを踏まえたブログやツイッターの「つぶやき」が消費を促進させる良きコミュニケーションになっているとの指摘である。その代表的商品として桃屋の「ラー油」やSBの「おかずラー油」を取り上げていた。
ラー油と言えば、数年前から石垣島ぺんぎん食堂の「石垣島ラー油」が一部の好事家のお取り寄せ商品として話題になっていたが、こうしたつぶやきコミュニケーションがマス市場への広がりにかなりの効果を上げてきていることが分かる。

1ヶ月ほど前から従来の巣ごもり消費から少し活性化し始めてきたと指摘してきたが、その打開策の一つが消費体験の人づてコミュニケーションということだ。裏返せば、いかに多くの情報偽装を体験してきたかということである。既成マスメディアに対する不信とまでは言わないが、信用出来る情報は消費体験を持った生活者の「つぶやき」、「思わず出た言葉」、つまり「本音」ということだ。ブームとしての「わけあり商品」は終わったが、その火付け役である東京圏の地域スーパー「OKストア」のMDコンセプトであるオネスト、正直さ、を思い起こさせる。正直に安い訳を店頭に表示する、という方法が生活者の支持を得たということであった。

過剰な情報が行き交う真っただ中にあって、一生活者の小さな「つぶやき」が信頼出来る社会とは皮肉でもなんでもなく、全ての主体が生活者・個人に移行したということである。そして、無縁社会にあって、ひとときのつながり、ゆるい関係を結ぶメディア、特にツイッターへの関心は至極当然と言えよう。更に言えば、ツイッターの持つ「同時性」、今ここで何かを共有しているという感覚は、小さな単位ではあるが「時代共有感覚」といっても良いかもしれない。「つぶやき」で言えば、「あああの人も同じように感じているんだ」という時間感覚の共有である。
恐らく、マスメディアは桃屋のラー油の消費者を指して、「桃ラー」などと取り上げるかもしれない。大仰に言えば、個人が情報源・発信者になり、時代感覚をもたないマスメディアはその後を追う時代になったということだ。

この1−3月のヒット商品については、マクドナルドの「ビッグアメリカ」シリーズや旧エコ基準品の薄型TVについては既に取り上げてきたのでここでは取り上げない。また、2月にバンダイから「ハイパーーヨーヨー」が売り出されたが、販売は好調とのこと。これも10年ぶりに復活した玩具である。昨年の現代版ベーゴマ「ベイブレード」と同じ過去に遡った商品である。今月24日にはオタクの聖地秋葉原に「ガンダムカフェ」を併設したバンダイのキャラクターを集積したショップがオープンする。これにも多くのオタク、フアンが集まるであろう。つまり、昨年からのヒット商品の延長線上に全てある商品である。

以前から、当分の間「大型のヒット商品」は生まれないと指摘をしてきた。逆に、「つぶやき」が届く範囲内のヒット商品、小さなヒット商品は生まれる、という時代になったということでもあった。その「つぶやき」が一つの普遍性、普遍的な価値が見出せた時、「つぶやき」は「つぶやき」にリンクし、大きなヒット商品へと孵化していくと思う。ある意味、身体の多くは巣ごもりしているが、頭だけ外へ出し、時代の空気感を感じ取っている情況だと思う。そんな空気感のなか、つぶやくように歌うシンガーソングライター植村花菜さんの「トイレの神様」が静かにヒットしている。(続く)


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Posted by ヒット商品応援団 at 13:41│Comments(0)新市場創造
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