2009年12月13日

◆2009年度の消費模様

ヒット商品応援団日記No427(毎週2回更新)  2009.12.13.

前回過去3カ年のヒット商品の傾向について書いてみた。一昨日には今年の世相を表す漢字一文字「新」が清水寺から発表されたが、今年の消費市場の模様をキーワードとして表現するとどうなるであろうか。前回のブログを読んでいただくと分かるが、

2007年度の消費模様 「まだら」
2008年度の消費模様 「新価格パラダイム」
2009年度の消費模様 「生活再編集」

2007年当時は「格差」というキーワードと共に、2003年頃から始まったミニバブル的消費傾向とがまだら模様のように偏在していた。当時、ヒトリッチというキーワードが示すように単身女性が消費を牽引していた。しかし、2007年夏をピークに都心の地価は既に下がり始めていた。そして、2008年には「10年間で100万円収入が減少した」ことが明確に消費市場へと反映した。ユニクロ・H&M、あるいはPB商品、低価格小型PCに代表されるように「低価格帯」というキーワードが急速にあらゆる消費分野に浸透した年であった。
さて、2009年であるが、東京お台場のヴィーナスフォートが12月11日リニューアルし、3階部分に49店舗のアウトレットショップが入ったと報じられた。従来は都心にあるブランドショップと競合することから郊外にアウトレットモールが出来ていたが、ヴィーナスアウトレットは都心初のオープンとなった。その背景であるが、ブランド既存店の低迷を踏まえアウトレット利用客を少しでも取り込もうという点と、来年秋に羽田に第四の滑走路が本格稼働することを踏まえた中国富裕層を獲得するためであろう。更に言えば、総アウトレット化がここまで進行してきたということだ。

この3年間の市場模様をマーケティング的に言うならば、格差というまだら模様の消費は次第に価格という軸に再編されてきたということだ。一言でいえば、生活者は価格(=収入)を軸とした生活再編集を行ってきたということである。この再編集の在り方であるが、例えばリアル店舗で商品を確認し、ネット通販やアウトレットショップで購入する。わけあり商品を美味しく、あるいは上手に使うことが日常化する。あるいは、GSがセルフ式に変わったように、自給自足型消費、セルフ化へと進んできた。その象徴が内食であり、家庭菜園であろう。
流通もこうした消費動向を踏まえ、イトーヨーカドーではキャッシュバックセール、イオングループでは既に1ヶ月早く冬物衣料のバーゲンが始まり、百貨店も福袋に名を借りたバーゲンが行われている。ブログに何回も指摘してきたが、エブリデーバーゲン、エブリデーロープライスが当たり前の時代となった。家電量販店もビッグカメラのようにアウトレット商品の常設売り場を設けた。旅で言うならば、随分前からH.I.S.はLCC(ローコストキャリア)を使った安価な旅を売り出していたし、同様にホテルや旅館は空室となった部屋を格安で提供してくれる一休を使うということが日常化していた。つまり、生活者、流通、生産者、3者共にリニューアルしてきたということだ。

恐らく5年後10年後に、2007〜2009年にかけて大きなパラダイム転換があったと指摘されると思う。一昨日、今年の世相を表す漢字一文字「新」が清水寺から発表された。戦火が絶えず、環境も大きな課題になり、「新たな心で生まれ変わって」という主旨であったが、時代の踊り場・曲がり角にいるという認識を踏まえてだ。昨年の世相一文字は「変」であり、「新価格パラダイム」という消費模様にも符号する。今年の「新」は新たに生活再編集が始まった年と言えるであろう。「新」は真であり、心であり、更には信である。様々な受け止め方があるが、時代の転換点を迎え多くの「新」が消費にも現れてきたということである。少し前に、「愚の力」というテーマで自己認識の重要性に触れたが、つまり「自ら変わろう」という大きな潮流を迎えたということだ。

転換期の変化は、まず価格破壊から始まる。初期のダイエー、ユニクロのフリース、マクドナルドの100円バーガー、最近では回転寿司も既成への価格破壊であろう。実はこの2年ほどの間、生活者は「価格」という良き体験をしてきたということだ。ただ単に安いものと、それなりの質を伴った安さ、両者の体験という意味である。断片ばかりの過剰情報の中で、唯一信じられる自己体験によってである。興味・関心という情報から、リアルさ・実質への原点回帰と呼ぶことも出来る。ただ、物不足であった時代に戻るということではない。好みや個性と価格とのバランス感覚がこの体験によって培われたということである。ここに新たなライフスタイルが生まれてくる。どんなライフスタイル変化として現れてくるか、次回以降書いてみたい。(続く)


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Posted by ヒット商品応援団 at 13:29│Comments(0)新市場創造
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