2007年01月28日

◆進化の視点 

ヒット商品応援団日記No135(毎週2回更新)  2007.1.28.

量から質への転換と言われて6〜7年が経過した。バブルの崩壊を受けて、質の意味する世界を本物志向、こだわり、本業、モノから情報とサービスへ、といったキーワードで語られることが多かったと思う。それはそれで間違ってはいないと思うが、今その質が意味する世界も変わって来たと思う。私はその代表はなんと言ってもネット上でgoogleがやって来た世界だと思っている。世界中のあらゆる情報、無限とも思える情報を検索するという量への挑戦を愚直なまでに行い、その検索によって得られた世界こそ、私たちのあらゆるものへの変革を促すという質的変化を与えてくれた。今晩食べる料理は何にしたいか、健康状態や好みなど、その時いいなと思うレシピや飲食店の情報はいとも簡単に得られる。googleの地図にも驚いたが、youtubeのインターネット上のニュースは偽情報や混沌さやを踏まえた意味での「正確」&「全体」が得られるようになった。もはや既存のマスメディアと比べスピード速く詳細で真実があると断言する人すら出て来ている。マスメディアはネット上に表れた情報源を追跡確認をしてニュースにするといった方法へと転換している。今回のアパグループの耐震偽装のニュースについても、イーホームズ代表の藤田東吾氏の行動やコメントは半年前からネット上で多くの情報が流されていた。マスメディアは表、ネット世界は裏、といった従来の表裏の世界は表も裏もない時代になった。これほどライフスタイルを含め多くの質的変化を促したものはない。

ところで、もう少し長いスパンでこの40〜50年の時代変化を見ていくとよく分かることがある。例えば、1960〜70年代の電話の多くは大代表電話でオペレーターが担当へとまわすのがサービスであった。1980〜90年代にはダイレクトに担当部署へとかかることがサービスになり、周知の如く今や本人の携帯電話に直接かける時代となった。更におさいふ携帯など、今や携帯はケイタイへと進化した。このように新しい価値を増殖してきた訳である。1990年代、豊かな時代と言われた内容はこうした新しい価値転換のことであった。特に、1990年代半ばからのデフレはこの価値転換を急速に迫って来た。この価値転換の裏側にIT技術の発展と市場のグローバル化があったことは周知の通りである。しかし、同時に圧倒的なそのスピードに人の感覚が追いついていけない問題もまた出て来た。スローフーズ、不眠症、スローライフ、隠れ家、裏道、LOHAS、ふるさと、道草散歩、・・・・・ある意味バランスを取ろうとする人間の本性、本能であると思う。脳科学の茂木健一郎さんは創造性には「空白」が必要だと指摘している。空白があると脳は自然に埋めようと働き、そこに新たな価値発想も生まれてくるという指摘だ。この6~7年を停滞期とネガティブにいうのではなく、「空白」の時代であると私は理解している。

このブログにも書いて来たが、「今」はちょうど次へと進むための「踊り場」にいるという認識をしている。私はマーケティングという、顧客創造、市場創造を専門職としてきた。この10年、次の新しい価値を探るために勿論顧客研究をしてきた。いつしか昭和の時代へ、明治の時代へ、そして今日のライフスタイルの原型が「江戸時代」にあることへとたどり着いた。長いプロセス、進化の視点を持たないと「今」がよく見えてこないという直感があったからである。別な視点に立つと、今回不祥事を起こした不二家についても創業への原点回帰が言われている。その意味は、創業時の創造性はその時が一番「完成形」に近いからである。時間経過と共に、企業規模も大きくなり、複雑化していく。ある意味「偽物」になっていくということだ。その偽物が「今」を作り出している。つまり、過去を振り返ることは未来につながることだと思う。このブログで一年半ほど前に江戸のライフスタイルについて書いたことがあるが、次回から再度ふれてみたいと思っている。例えば、江戸時代を称して、エコロジー社会であったと言われている。いわゆる循環型社会であるが、木は勿論のこと、紙、灰、蝋(ロウ)といったリサイクルから、古着屋、損料屋・・・多くのエコ・ビジネスが盛んであった。こうした発想は今ではJRの切符の再生利用から、沖縄では黒糖を採った後のサトウキビの再生利用=メタノール生産まで進んでいる。茂木さんではないが、発想の転換、脳に「空白」を作り新たな発想を得るために「江戸のライフスタイル研究」をテーマに次号から書いてみたい。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 13:51│Comments(0)新市場創造
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