2018年01月28日

◆全国に広がる路地裏観光  

ヒット商品応援団日記No701(毎週更新) 2018.1.28.



一昨年からこれからの市場創造に欠かせない着眼として訪日外国人とオタクがあると指摘をしてきた。2017年度の訪日外国人は2869万人、その消費額は4兆4161億円であったと観光庁から発表があった。円安の副産物あるいはLCCなどの格安旅行が世界の至る所で可能になったことによるものだが、次は夜遊び消費がテーマであるとメディアは取り上げている。しかし、すでに北米などで放映されているアニメ映画の影響もあって「忍者モノ」などのエンターティメントショーは東京では新宿や浅草、赤坂などで活況を見せている。あるいは東京新宿のゴールデン街には口コミにより数年前から多くの訪日外国人が深夜まで酒を楽しんでいる。

実は一昨年から東京ディズニーリゾートや富士山、あるいは浅草寺雷門、京都伏見稲荷神社や清水寺といった従来型の観光ルートから、日本の生活文化を体験できる「路地裏観光」へとシフトしていくであろうと予測していた。そして、「日本観光応援団」のガイドサイトを昨年秋テスト的にFacebookで立ち上げることとした。勿論、表通りの観光地ではなく、まだ知られてはいない日本人の生活感が色濃く残る「路地裏観光地」をテーマとしたサイトである。面白いことに、そこには散歩ブームもあって、日本人観光客も「未知」を求めて集まっていた。ああ、日本人自身も実は知らないんだと言うのが素直な感想であった。以降、訪日外国人が行くであろう「路地裏観光地」、その街歩きをスタートさせた。未来塾で取り上げた「街」の多くはそうした視点からの選択でもあった。

例えば大阪の場合、既に観光地となっていたミナミの黒門市場を始め、道具屋筋を中心とした裏難波、勿論再生した通天閣・新世界ジャンジャン横丁から西成へ、更に木津卸売市場、あるいは梅田裏ではお初天神裏参道を始め中崎町から天満卸売市場・天神橋筋商店街、・・・・・・・・さて次はどの街をどのように歩こうかと考えた街の一つが「京橋」であった。マスメディアで取り上げられることの少ないこともあって、あまり注目されることのない京橋であるが、大阪人の生活がある意味まるごと残っている「ザ・大阪」とでも表現したくなる街である。中でも立ち飲み居酒屋通りや屋台村「とよ」に是非行きたいと昨年秋大阪の友人に伝えてあったのだが、残念ながら果たせなかった。ところが先日その「とよ」が訪日外国人も行く海鮮居酒屋としてTVで紹介されていた。「とよ」は大阪人であればよく知られた昔から行列ができる屋台の海鮮居酒屋であるが、まさか訪日外国人までもがと驚かされた。

この「とよ」を実感したいと思ったのは、行列店には必ずいる名物オヤジとこれでもかといったサービス精神旺盛なてんこ盛りメニューを味わって見たかった。「とよ」には江戸時代に生まれた屋台商売の原型、そして大阪らしいサービスの原型が残っているからである。また、京橋駅北口にはもう一つの原型、「立ち飲み」居酒屋が軒を連ねており、これも昭和レトロの風景が残されていて、「オヤジの街」と言われてきた京橋が若い世代にも人気の街になりつつあるという、そんな点も行ってみたい理由の一つであった。こうした街にもすでに訪日外国人が訪れているということだ。
立ち食い、屋台、安価、食べ歩き時代にはマッチした業態・価格が京橋には残されている。こうした業態は散歩ブームを背景に数年前から都市部の商店街でも行われるようになってきたが、食べ歩くというエリア・回遊ができるようなテーマ集積がなされている場所は極めて少ない。東京ではこうしたエリアとしては上野アメ横の「夜市」ぐらいであろう。このアメ横夜市にはすでに日本在住の中国や韓国、あるいは東南アジアや中東の人たちが集まり楽しんでいる。エスニックTOKYOの夜遊びの象徴のような街となっている。(詳しくは、未来塾「エスニックタウンTOKYO」を参照してください。)

このブログにも京都観光における名所観光と言われる伏見稲荷神社や清水寺、あるいは金閣寺や三十三間堂といった名所観光には観光客が溢れ出るほどの混雑ぶりで、日本人観光客は嫌気がさして「ひいて」しまい減少傾向すら生まれている。そうした背景から昨年あたりから京都は周辺の観光開発が進み広域観光が始まっている。
以前町おこし・村おこしをテーマに講演を行なった京都府南丹市美山町もそうした広域観光地の一つとなっている。「美山」という名前の通り、日本の自然を始めとした原風景が残る地域で、コンビニもいや信号一つないそんな田舎の村である。聞けば学校にはプールが無く、夏には綺麗な美山川で生徒たちは泳ぐそんな村である。その美山にもインバウンドの波が押し寄せているという。特に、飛騨高山の白川郷・五箇山にある合掌造り集落群ほどの集積はないが、萱ぶきの家の集落があり、台湾をはじめとした多くの観光客が訪れていると聞いている。こうしたかやぶき住宅の集落見学に加え、体験テーマを「米」に設定し、約6時間の滞在中にしめ縄や箸、おにぎり作り、餅つきを盛り込んだメニューを実施している。観光参加者も手作りチラシを京都市内のホテルなどに置いてもらって集めたとのこと。

また、鳥取の友人からは数年前に境港に中国からの観光船が寄港し、米子のショッピングセンターでは1日で3億円の売り上げがあったと言っていたが、その後山陰地域にも訪日外国人が増え続けているという。それまでのゴールデンルートと呼ばれた観光ルートは大きく全国へと広がっている良き事例の一つであろう。特に隣の島根県にも続々と訪日外国人が押し寄せているという。島根には周知の出雲大社があり、訪日外国人が好きな城(松江城)もある。さらには訪日外国人が体験してみたい温泉(玉造温泉)と畳座敷の和風旅館が多く存在していることも魅力となっている。日本人にとって極々普通の生活様式であるが、インバウンドビジネスにあっては既にある資源をもとに、「普通の生活」「日常生活」というその地域固有の生活文化が観光魅力になっているということだ。よく言われることだが、京都人にとって多くの寺社仏閣という世界文化遺産に囲まれて生活しているのだが、そんな歴史遺産は日常であり、特別意識するものとはなっていないことと同じである。

3年ほど前の「爆買い」が終わっても続く日本観光と言えば、渋谷のスクランブル交差点、浅草寺雷門の巨大提灯、大阪道頓堀の巨大ネオン看板といった観光ランドマークと共に、行ってみたい体験してみたいところといえば、全国各地にある城、和風旅館、露天風呂、地方ならではの「食」、更に日本ならではの自販機やガチャガチャ、100円ショップ、ドンキホーテのような激安ディスカウントストア、コンビニやドラッグストア、特色のある居酒屋、すき焼きや寿司の食べ放題、多様なラーメンの食べ歩き、・・・・・・・・こうしてインバウンドビジネスの推移と傾向を見ていくとわかるが、全て海外にはないものばかりである。国民食から世界のジャパニーズヌードルとなったラーメン然り、小さなことを言えば抹茶や抹茶菓子もそうである。こうした楽しみ方は日本人も訪日外国人も同じで、例えば最近ではシニア向けの日帰りバスツアーに訪日外国人も参加し始めているという。日帰りバスツアーと言えば、人気の「食べ放題」を中心とした1万円前後の安価な観光である。

ところでその訪日外国人がこんなところにも出没しているという事例については前回の未来塾でも取り上げてきた。その象徴として昔の日雇い労働者のドヤ街であった大阪西成、東京では山谷に、バックパッカー向けのゲストハウスが次々とリノベーションして誕生していると。そして、その周辺の飲食店が賑わっていて、トリップアドバイザーによる2017年度の人気ランキングNo1に大阪西成のお好み焼きの「ちとせ」がランキングされている。
こうした安価なゲストハウス需要に応えた一つにあのフーテンの寅さんのロケ地で知られている東京葛飾柴又に同じようなゲストハウスが出来て帝釈天への参道に訪日外国人が現れてきたという。その宿泊施設は「柴又BASE」で、葛飾区の旧柴又職員寮を、ドミトリーを備えたバックパッカー向けのホステル(宿泊施設)にリノベーションしたというものである。ちょうど2年半ほど前になるが、今で言うところの寅さん映画の「聖地巡礼」の地である柴又が廃れて行く状況を未来塾「テーマから学ぶ」(観光地競争の「今」)として書いたことがあった。都市も地方も、街も村も、商業施設も商店街も、通りですらもが「観光地化」と言う集客競争の時代で、柴又は観光地としては衰退の一途をたどるであろうと言う内容であった。(冒頭の写真は参道の土産物店)
2020年の東京オリンピック・パラリンピックを目処とした民泊の法整備が遅れており、急激に増え続ける訪日外国人の宿泊需要に追いつかないことから、前述の大阪西成や東京山谷や、あるいは東京の中央線沿線には多くのゲストハウスが生まれ活況を見せている。こうした状況下での宿泊施設の誕生によって、多くの訪日外国人が柴又を訪れ、帝釈天の参道商店街も変わって行くことと思う。この参道を歩けばわかるが、従来の日本人観光客相手の草団子などの土産物店が多く、飲食店としては川魚料理・うなぎや天ぷらといった店があるがどれも相応の高い価格の食事処となっている。訪日外国人が好む安価で楽しめる居酒屋などの飲食店は極めて少ない。恐らくそうした店ができるまでは、単なる宿泊のみで飲食をはじめとした「遊び」には他の街へと流れて行くことと思われる。土産物店はあっても、日本人が「いいな」と思う日常的に使える店がほとんどないと言うことだ。これから柴又帝釈天がどのように変わって行くか、注視して行くつもりである。

こうした地域固有の生活文化、日本人が当たり前のこととして気付かずにいた「日常」は、インターネットによって、口コミによって、想像以上に早く拡散して行っていると言うことである。これも「いいね」時代、共感連鎖時代の特徴としてあると言うことだ。2年ほど前、「わさび事件」という小さな文化の衝突があった。わさびは日本独自の香辛料で訪日外国人にとって、きわめて珍しいことから寿司などには大量につけて食べる事があった。関西のある寿司店で過剰にわさびをつけて出したところ、わざとやったとして「バカにしてる」とネット上で非難の声が上がりその寿司店が謝罪したことがあった。そうした文化の違いは、お互いに経験し合うことによって、その文化の奥にある「良さ」がわかっていくものである。京都の美山町で行なわれている体験テーマが「米」となっているが、ご飯として食べるためだけの米ではなく、多様な食べ方や残った藁を使ったしめ縄を使った山里の暮らし体験などもそうした文化の良さの一つであろう。そこには昔からの知恵やアイディアが込められた暮らしの文化がある。そこにも古来からの「勿体無い」精神があり、これも日本固有の暮らし文化ということだ。こうした文化理解には多くの時間を要すると思っていたが、インターネット時代・「いいね」時代の共感連鎖は極めて早いということである。勿論、「負」の連鎖も同様であることも忘れてはならない。(続く)

*なお、テストではあるが、京都の友人も数年前から京都や大阪の路地裏に残っている祭りや催事、更には食事処をレポートしてくれています。興味のある方は私の Facebookのホームにもシェアしてくれているので、どうぞご覧ください。



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Posted by ヒット商品応援団 at 13:39│Comments(0)新市場創造
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