2017年01月03日

◆真っ白な紙に絵を描く時代がやってきた 

ヒット商品応援団日記No668(毎週更新) 2017.1.4.

あけましておめでとうございます。
今年もまた新聞各紙の元旦号を読んだが、昨年同様目指したい国内外における理想像、政治、経済、社会、における「像」を打ち出したところは一社もなかった。特に、昨年国内外に起こったことは年末のブログに書いたように全てが「真逆の結果」になったことによる。朝日新聞は英国のEU離脱やトランプ次期大統領の誕生を生み出した「民主主義」について「試される民主主義」というテーマで書き、日経新聞はいささか自嘲的であるが「<当たり前>もうない」と身近な事柄に引き寄せて書いていた。読売新聞はといえば、社説で「反グローバリズムの拡大防げ」とし、トランプ外交の対応の必要性を説いている。これも朝日新聞の民主主義の根本、大衆が選んだ政権・政策のポピュリズムの裏返しの提言である。いずれのメディアも予測不能であることを言外に認めている、そんな取り上げ方であった。

実はその民主主義、ポピュリズム(大衆迎合主義)については国内にも起こっており、私は舛添都知事の政治資金私的流用疑惑問題等について取り上げ、「劇場型政治の変容」と題し、物言うマジョリティ・都民が劇場の主人公として追求したことを書いたことがあった。劇場型政治の先鞭をつけたのはあの小泉元総理であるが、その主人公が大衆・都民へと変わってきたという指摘であった。その変容のメカニズムであるが次のようにブログに書いた。

『舛添要一という人物についてであるが、「朝まで生テレビ」に颯爽と登場し、舌鋒鋭く多くの論客を圧倒した。以後政治家になり、母親を介護し、厚労大臣にまで上りつめる。そして、次の総理候補としてもてはやされた。それら人物像はTVによって創られたイメージの高さによってであり、「政治とカネ」の問題で辞職した猪瀬前都知事に代わって、大きな「期待」を持って誕生した都知事であった。しかし、TVによって創られたいわば「人気者」は、繰り返し、繰り返し、謝罪の言葉は言うものの、違法ではないもののその公私混同の「セコさ」や「屁理屈」が伝えられるとどうなるか。謝罪は本気でも本音でもなく、「嘘」と感じさせてしまう。当然「期待」は失望どころか、一気に「怒り」へと変容する。
物言うマジョリティの怒りは、抗議や批判の声として都庁へと4万件以上寄せられ、さらには舛添都知事が疑惑の精査を依頼した「第三者」の弁護士事務所には会見後非難の電話が殺到し、電話回線がパンクし、つまり炎上する事態にまで至った。』

TVによって創られた「人気者」は、TVを通じたマジョリティの「物言う力」によって辞職へと追い込まれる。情報の時代にあっては、TVによっていとも簡単に「人気者」を創ってしまう。多くのタレントが間違ってしまうのは、自分の才能(タレント)によって人気者になったと錯覚してしまう。人気者はTVという増幅する「映写機」によって映し出された虚像であって、実像ではない。
ここまで書けばああそうだったんだと理解いただけると思うが、この「物言うマジョリティ」の存在を一番実感理解し、この「力」を持って都知事選挙に打って出たのが、小池都知事であったということである。スローガンである「都民ファースト」とは「あなたが主人公」というメッセージそのものであったということだ。「人気者」という言い方をするならば、鳥越俊太郎氏はTVが作った人気者であって、小池百合子氏は市民が作った人気者であった。最初は少数であったが、選挙戦が進むに従って、「緑」を身につけた市民が増えてくる。「緑」は「緑」を呼び、SNSの増幅拡散のように広がり、その実像が次第に伝わっていく。結果、圧倒的な勝利、これも選挙前の政治評論家やマスメディアにとって予想外の結果であった。

ところで今年はどんな年になるか、多くの人は混迷、混乱、不透明、といったキーワードを挙げ、その対応について提言をしている。特に欧州ではいくつかの選挙があり、シリアからの難民が減ることはない。隣国韓国では周知の朴政権下では職務停止によって何一つ決めることができないまさに混乱の年明けとなっている。そして、元旦早々、トルコ・イスタンブールでは銃乱射事件が起き、40名近くが亡くなる惨事が報じられた。昨年の年頭のブロでは「混迷の年が始まる」と書いた。しかし、今年についてその延長線上で「混迷がさらに深まる」とは書かない、いや書くべきではないと考えている。勿論、事実は事実として受け止めなければならないが、グローバル化というパラダイムシフトの揺れ戻しが始まっており、そうした発想・認識の転換を自ら行う時がきていると考えるからだ。予測不能の時代とは真っ白な紙に絵を描くようなものである。誰もが手探りをしながらでないと進めない時代であり、ポジティブに考えるならば誰にでも可能性がある時代ということだ。
何故なら、多くの生活者は昨年1年間嘘とは言わないがどれだけ予測が外れたか、嫌という程実感している。自然災害と一緒にしてはならないが、熊本地震のように本震より余震の方が大きく被害が甚大であったように。つまり、予測、予想、従来から言われてきた常識、既成の価値観に重きを置かない時代であるとの認識が強くなったということである。一言でいえば、何があってもおかしくない時代にいるということだ。

確か昨年の3月のブログにて、消費増税の延期発表に際し、経済の浮揚策について「できうるならば、元の5%に戻すこと」が必要であるという主旨のことを書いたことがあった。いわゆる減税である。市場が心理化されている時代にあっては、「明日は明るい」「不確実なことは何もない」と生活実感できる身近な政策こそが必要との観点からであった。こうした政策は誰もが国の借金が1000兆円を超す財政状況にあることは知っているが、財務省が反対しようが、政治が決断すればできないことではない。もやもやとした先が見えない「不安」という妖怪を消してくれることが問われているのだ。真っ白な紙に絵を描くとはこうした発想を転換し決断することでもある。

このような考えか生まれる背景には、例えば小池知事がそうであったように、顔の見えないひとくくりにされてきたマジョリティ・大衆を信じることから始めるということである。そのことは、常にマジョリティとしてではなく、たった一人に語りかけることとしてある。ビジネスでいうならば、既に10数年前から言われている顧客主義という原点に立ち戻るということである。人は信じられていると感じた時、本音のコミュニケーションが初めて始まる。そして、その実感・思いは次第に友人知人という第三者に伝えたい、そんな思いが醸成されていく。こうした「密な関係」に今一度立ち返るということである。勿論のこと、密な関係を結ぶ前提には政治であれば情報公開であり、小売の現場では店頭での会話ということになる。

そして、真っ白な紙にどんな絵を描くのかである。勿論、そのヒント・着眼は密な関係を結んだ顧客・市場の中にある。小池知事の例を挙げるとすれば、それは築地の豊洲移転について市場関係者のみならず多くの都民の心の中に澱のように溜まっている「不安」を感じ取り、都知事になった後、間近に迫った豊洲移転を延期させるという決断をする。今までの延長線上であればまずは移転し、オープンさせ、その後不安を除去する施策を実行するだろう、まさにそうした常識を覆したのである。この決断の素は都民の中に眠っていることを受け止めたということである。

こうした従来からあるパラダイム価値観、常識を捨て、今一度絵を描きなおす、そんな時が来ているということである。これから1年、いや数年先までわからないことばかりが突如として起こる。その時、顧客の中に、市場の中に、従業員の中に耳を傾ければ、「やり直し」というつぶやきが聞こえてくるはずである。うまく絵が描ききれてはいないが、昨年値上げの失敗から学んだユニクロのように。あるいは多くの外食産業、ファミレスやファストフード店で深夜営業から撤退する店舗が相次いている。人手不足、というのが表向きの理由であるが、こうした業態の経営そのものが「やり直し」を命じられていると考えなければならない。東京にいれば知らない人はいない24時間営業の立ち食いそばに「富士そば」という会社がある。富士そばではその経営方針として「従業員の生活が第一」としている。勿論、アルバイトも多く実働の主体となっている。そして、アルバイトにもボーナスや退職金が出る、そんな仕組みが取り入れられている会社だ。ブラック企業が横行する中、従業員こそ財産、内部留保は「人」であると。そして、1990年代後半債務超過で傾いたあの「はとバス」の再生を手がけた宮端氏と同様、富士そばの創業者丹道夫氏も『商いのコツは「儲」という字に隠れている』と指摘する。ご自身が「人を信じる者」(信 者)、従業員、顧客を信じるという信者であると。やり直しの事例は他にもいくらでもある。要はリーダーが耳を傾け決断すれば良い、そんな時代が本格的に到来したということだ。
戦後続いて来たパラダイムシフトの揺れ戻しは米国や欧州のみならず日本も同じである。突如として起こるであろう変化に惑わされることなく、やり直しを決断する時が来た。思い切って、真っ白な紙に絵を描く人達、企業、町、そんな応援を今年もまた続けて参ります。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 13:30│Comments(0)新市場創造
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