2009年01月25日

◆不況期のヒット商品

ヒット商品応援団日記No335(毎週2回更新)  2009.1.25.

年が明け、新聞紙面はトヨタを始めとした自動車産業の赤字決算予測やリストラ策に続き、ソニーの営業赤字が2600億に、2008年度の貿易黒字は8割減、新日鉄は過去最大の減産に入り、君津高炉も休止に入ると報じた。日銀によると2008年度の経済成長率は下方修正されマイナス1.8%、2009年度はマイナス2%になるとの発表。こうした背景を映し出すかのように、昨年12月度の百貨店売上は前年同月比9.4%減と発表。
いかに日本経済が米国を始めとしたグローバル経済に組み込まれているかであるが、当の米国のサブプライムローンは金利が次の段階へと上がる2009年度を目前にして、更に膨大なローン破綻、不良債権が発生するという。勿論、住宅は今なお下がり続け、あの辛口評論でブッシュ批判をしてきたクルーグマン教授はまだ適正価格まで下がっていないという。更に、回復には2年〜4年かかるという。つまり、嫌な話であるが、本格的な不況はこれからだということだ。

多くの人と同じように私もオバマ氏の大統領就任演説をYoutubeで見て、和訳された文章を読んだ。既に、多くのマス・メディアやブログでその評価や期待について論評されているので、その是非や私見は述べない。演説におけるシナリオ構成の、その戦略性・表現については高校・大学と詩作に励んでいたとのことだが見事と言う他ない。周知のように米国は移民の国、つまり人造国家、人工国家であり、こうした「一つになる」セレモニーイベントを指導者のみならず国民自身も求めているのだなと改めて思う。と同時に、ああ国家も、企業も、誰もが危機に直面すると原点に立ち戻るのだなと思った次第だ。しかし、現実は想像以上に困難であろう。

ところで、昨年1年間で目減りしたとはいえ。日本の個人金融資産は莫大である。恐らく、正式な発表ではないが、1400兆円ぐらいはまだ保有していると思う。その個人金融資産が株式投資や消費へと回ればと、冗談のような話が一部の経済学者の間で真顔で議論されている。結論から言うと、マイナス金利政策の一つとして、個人が持っている国債や銀行預金に課税するという政策である。課税されるのであれば消費などに回るであろうという考えである。これはケインズの「一般理論」の中でパーティジョークとして扱われた理論であるが、こんなことを学者までもが冗談ではなく論議されているとはコトの深刻さを表していると思う。

最近私のブログにたどり着くキーワードがタイトルとなっている「不況」と「ヒット商品」である。結論から言おう。そんな簡単なヒット商品などあろう筈はないと。過去に学ぼうにも、そんな過去はない。過去あった不況とは根底から異なる不況だ。手前味噌になってしまうが、この1年半ほど私が書いてきたブログを読めば、収縮する消費者心理に対する少しのヒントにはなる。しかし、今ヒットしている商品の成功の芽は少なくとも、5年前、10年前に蒔かれたタネによってだ。1月23日小型衛星「まいど1号」の打ち上げが成功した。これも東大阪の中小企業が技術者の心意気を見せようと2002年に協同組合として集まったその成果である。あるいは、最近注目されている1個1000円弱の「ももいちご」も同様である。徳島県佐那河内村という山間でつくられた苺であるが、山間ということから日照時間が少ない土地柄だ。逆に、生育が遅くなることによって生まれた良さを生かした桃のような苺である。品種は「あかねっ娘」だそうだが、今の苺へと品種改良を重ねるには10年という時を要したと聞く。私たちはこうした困難な時を経た成功や成果に拍手を送るのである。

この1年ほどヒットした商品を見ていくと一つの傾向が分かる。数年前から言われている「隙き間市場」は、更に狭まり「ピンポイント市場」へと移行したことだ。市場規模という言い方をすると、更に「小型化」ということになるが、別の言い方をすると「より個人化した市場」である。つまり、テーマも限定し小さくした専門世界で、サイズや量も小さく、簡単便利で、価格も小さく、といった「最小戦略」「ミニマム戦略」となる。そして、こうした「小」を組み合わせれば従来のオーダーメイドやカスタムメイドといったサービス度の高い商品に近くなる。また、家族回帰、家族の絆を取り戻す動きには、小さな単位を組み合わせることによって家族単位になりえるような考え方である。

もう一つが昨年春からブログで書き続けてきた「価格」という壁をどう超えるかというテーマである。その象徴例として急成長しているスーパー「OKストア」を取り上げてきた。生半可な付加価値など、低価格、価格差の前では吹き飛んでしまうとも書いてきた。OKストアと同じように、廃刊、部数を落とし続けて雑誌業界にあって、唯一部数を伸ばし利益を挙げている「おまけ付き雑誌」の宝島社についても同様である。そして、「わけあり競争」市場になり、その内容次第で物が買われる、そんな市場へと移行している。その「わけ」は単なる「こだわり」ではなく、ある意味ここまでやるのか、とことんやった結果なのか、といった常識を超えた「わけ」が購入を促進させる。

オバマ新大統領もそうだが、今という時は原点に帰ることから始めることだ。創業時、新たに事業を始めた時、新商品を開発し導入した時、次々と未知の問題、初めて出会う困難さに直面したと思う。そんな覚悟からしかヒット商品は生まれない。(続く)


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Posted by ヒット商品応援団 at 13:48│Comments(0)新市場創造
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