2015年04月23日

◆未知との遭遇 

ヒット商品応援団日記No611(毎週更新) 2015.4.23.

「未知との遭遇 」は、周知のスピルバーグ監督による映画で世界各地で発生するUFO遭遇事件と、最後に果たされる人類と宇宙人のコンタクトを描いたヒット作である。映画のコンテンツとは異なるが、最近の消費はまさに「未知との遭遇 」を求める傾向が次第に強くなってきている。
このGWの旅行先についても、勿論お金をあまりかけない国内旅行を中心に、海外旅行についても円安を踏まえた安近短をベースに旅行が組まれている。その海外旅行でも香港や韓国、台湾といった国ではなく、例えばベトナムといった未知の国への旅行が増加傾向にある。消費増税前にはヨーロッパ旅行においてもフランスやドイツ、イタリアではなく、東欧のチェコやトルコといった「次」のヨーロッパの国々へと向かっていたが、同様の傾向は安近短にあっても同じ傾向を示している。
大きな消費傾向としては新しい体験、新しいものとのめぐりあい、そうした未知の世界の消費へと向かっている。それは単なる新商品、新サービスへの興味関心ということだけではない。こころ魅きつけるNEWSが求められているということである。それは収入が増えず、消費増税や物価上昇による消費抑制にあって、それでも新しい何か、NEWSのあるものへと向かっているということである。

例えば、首都圏でいうと、1年ほど前から駿河湾の深海魚を始め、今まで捨てていたもしくは漁師仲間で食べていた深海魚を美味しく食べさせる飲食店、それこそわけありの店に注目が集まっている。食べたことのない魚を魚を知り尽くした料理人がその技を提供するメニュー、そんな未知の体験である。勿論、食べる深海魚ではなく、沼津港深海魚水族館においても人気スポットの一つとなっている。また、深海魚ばかりか、北海道大雪山の麓の「山の水族館」においては、世界初の「川が凍る水槽」や、日本初の「滝つぼ水槽」などがつくられ、リニューアルして半年以内に、前年比数倍の入館者を集めている。実は、こうした見せ方によってではあるが、ありそうで無かった淡水魚の水族館にも観光客が集まっている。
また、先日日本最大の遊び、レジャー、特に「体験型」の予約サイトを運営しているasoviewと旅行業大手のJTBとが提携し話題となっている。これもまだまだ「未知」なる遊びが無数にあり、そこにビジネスチャンスがあるということである。

ところで2000年代に入り、消費における大きな潮流として現れたのが「表」から「裏」であった。安定はしているが何か新鮮さを感じない表通りから、裏通り・横丁に新しい何かを発見をするという消費傾向である。飲食店においても表メニューから裏メニューへ、そして裏であったまかない料理が表メニューとして出てくる。こうした傾向から生まれたのが「隠れ家」であった。そして、その「隠れ家」も「表」へと出てしまうことによって一般化しブームとして終わりを迎えた。
今回「未来塾」でティーンの聖地原宿を取り上げる予定である。その原宿も周知のように1990年代末から2000年代半ばまで「裏原」と呼ばれ、ヒップホップ系、ストリート系ファッションに若い世代、特に男性が殺到し一大ブームとなったことがあった。今回裏原と呼ばれるキャットストリートを久しぶりに何回か歩いたが、当時の活気を感じることは無かった。逆に、春休み期間ということもあって裏原とは別に「表」へと向かう人の流れが凄まじかった。特に、「表」である表参道や竹下通りには流行のポップコーンショップから英国掃除機メーカーの直営店までもが出店し、裏から表へと人の流れが変わったことを実感した。つまり、NEWSが裏にではなく、表にあるということである。

勿論、「表」にNEWSが無くなれば寂れていくのだが、そのNEWSとは新しい、珍しい、面白いということに極まる。そして、いつまでも新しい、珍しい、面白いということはあり得ない。常にNEWSを創っていかなければならないのだが、そのNEWSは小さくても構わないということである。1990年代にかけて未知を探す探検は冒険となり、秘境や未踏の地であった。そうした消費行動から、より日常的、より簡単に、よりお金を使わずに、できれば回数多く楽しみたいという傾向である。こうした傾向の象徴が「食べ歩き」である。この数年人を集めているどの商店街やエリアも必ず目にするのが「食べ歩き」である。原宿でもクレープの原宿といわれるように、更には流行のポップコーンも。シニア世代にとっての食べ歩きはチョット変わった場所、例えば神楽坂の料亭での「お得ランチ」、もしくはデパ地下の定番「駅弁フェア」や「郷土料理フェア」となる。少々高い価格であっても、現地まで行って食べることを考えればお得ということである。そうしたNEWSのある小さな「未知との遭遇」を楽しむ賢明な時代にいるということだ。(続く)



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Posted by ヒット商品応援団 at 13:25│Comments(0)新市場創造
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