2014年12月28日

◆未来塾(12)「2014年を振り返る」

ヒット商品応援団日記No600(毎週更新) 2014.12.28.

未来塾の「学び」をスタートさせて11回Web上に公開してきた。「未来」という少々構えたネーミングにしたのは、あのP.ドラッカーの著書「すでに起こった未来」の主旨に倣ってつけたことによる。ドラッカーは常に明日はどうなるのか、未来を知るにはどうしたら良いのか、マーケッター、ビジネスに携わる人の指針について、次のように述べている。

“未来は分からない。未来は現在とは違う。
未来を知る方法は2つしかない。
すでに起こったことの帰結を見る。
自分で未来をつくる。”

“つまり、自分で未来をつくることと共に、「すでに起こったことの帰結を見る」という方法をもとに次の行動を起こしていくしかない。「すでに起こった帰結」とは、次々と起こる変化、消費の変化はもとより社会の変化を観察すること。そして、それら変化は一時的なものではなく、大きな潮流としての変化、生活価値観の変化であることを検証する。更に、この変化は意味あるもの、つまり重要なことであると認識した時、その市場機会をもたらすものであるかどうかを問うこと。例えば、20年前から指摘されきた「少子高齢化」のように動かしがたい事実を集め、それがどんな方向へと進んでいくのかを見定めていく方法である。今回の未来塾は2014年を振り返り、この「動かしがたい事実」のいくつかを整理してみた。

未来塾(12)「2014年を振り返る」

横浜洪福寺松原商店街12月27日暮れの賑わい


「未来塾」

時代の観察

2014年を振り返る


活力の源、都市の2面性

ところで、街を歩き感じたことの一つが街は「文化」そのものであるという事実であった。住んでみたい街No1と言われる吉祥寺については『100の都市があるとすれば、100の固有があり、その固有を生かした100の街づくりがある。そして、この街づくりを「村づくり」や「商店街づくり」、あるいは「店づくり」に置き換えても同じである。つまり生活者マーケティングが時代のキーワードになったということである。』と。この固有こそが文化であり、吉祥寺の場合その象徴が「ハモニカ横丁」であった。私はそのハモニカ横丁をこう表現した。未来塾(12)「2014年を振り返る」

『吉祥寺駅北口から一歩入るとタイムスリップしたかのような商店・飲食店街が密集している路地がある。ハモニカ横丁と愛称されているが、そのハモニカの如く狭い数坪の店が並んでいる。餃子のみんみんのように、地元の人から愛されてきた店も多いが、一種猥雑な空気が漂う横丁路地裏にあって、なかにはおしゃれは立ち飲みショットバーや世界のビールやワインを飲ませるダイニングバーもあり、若い世代にはOLD NEW(古が新しい)といった受け止め方がなされている、そんな一角がある。人の温もりがするどこか懐かしさのある路地裏飲食街である。』
この固有な文化が生まれる背景を私は都市がもつ「2面性」であると指摘をした。この2面性という整理軸で吉祥寺の特徴を整理すると、パルコを始めとした時代の流行であるファッショントレンドを発信する表通り散策メディアと人が行き交う闇市の猥雑さや懐かしさを感じる路地裏散策メディア。こうした新旧異質さが交差する街、それが吉祥寺である。

未来塾(12)「2014年を振り返る」
こうした2面性は元気な街の一つである秋葉原・アキバについても同様に存在するものであった。その秋葉原であるが、 次のように表現した。
「秋葉原の駅北側の再開発街とそれを囲むように広がる南西の旧電気街を、地球都市と地下都市という表現を使って対比させてみた。更に言うと、表と裏、昼と夜、あるいはビジネスマンとオタク、風景(オープンカフェ)と風俗(メイド喫茶)、デジタル世界(最先端技術)とアナログ世界(コミック、アニメ)、更にはカルチャーとサブカルチャーと言ってもかまわないし、あるいは表通り観光都市と路地裏観光都市といってもかまわない。こうした相反する、いや都市、人間が本来的に持つ2つの異質な欲望が交差する街、実はそれが秋葉原の魅力である。」と。

未来塾(12)「2014年を振り返る」
活力ある街は必ず相反する2面性を持っているという事実である。勿論新しさだけでもダメで、古きままだけでもダメであるということである。新しさだけという世界もあるが、それは常に「新」を導入できるブランド力や仕組みを持つことが必要となる。時代のトレンドを発信する新しさ、街で言えば原宿や表参道であり、商業施設であればルミネなどが代表例であろう。ただこうした街や商業施設ですら、裏原宿や裏青山といった面白い後背エリアがあり、ルミネという商業施設の場合は、「新」を導入できる専門店のみが生き残るという仕組みが活力源となっている。

テーマの進化と競争

いずれにせよ元気の源はやはり人が行き交う商業にある。この元気さについては江東区にある砂町銀座商店街や横浜の松原商店街、街では吉祥寺や秋葉原などに良く表れていた。そして、その商業集積は時間経過とともに商業者と顧客によって創られ、一つのテーマ性を持つに至る。その代表例が秋葉原、アキバである。アニメやコミックといったサブカルチャー・パーク及びAKB48というアイドルの聖地であるが、アキバが教えてくれたのはサブカルチャーコンテンツのマスプロダクト化、つまり表現は良くないが大衆化・一般化への方法である。オタクのアイドルであったAKB48を国民的アイドルへと成長させた方法である。その方法は「恋するフォーチューンクッキー」を見ても分かるように、顧客の参加(ダンス)を促し、舞台の主人公にしたことにある。このように秋葉原という街は訪れる人全てを秋葉原劇場の主人公にしている点にある。そして、パーツ、アニメ、マンガ、コスプレ衣装、フィギュア、・・・・メイドカフェ、エスニックな飲食店、といった「街の密度」が高まっているような感がする。サブカルチャーのテーマパークとして世界中から人を集める聖地の秘密はこの「テーマ密度」の高さにある。この密度こそ、顧客を未知の探検を促し、宝物探しにかき立てる。つまり、未知との遭遇観光地ということである。未来塾(12)「2014年を振り返る」

こうしたテーマエリアの成功例の一つとして「月島もんじゃストリート」を取り上げたが、 元々駄菓子屋の軒先で子供のおやつとしてもんじゃ焼きを大人相手のもんじゃ焼きを提供する飲食店が10店舗ほど現れ始める。ここから良い意味での競争が始まり、「変わり種」のもんじゃ焼きが次から次へと生まれてくる。つまり、月島の町おこし、もんじゃ焼きのテーマパークが創られたということだ。テーマパークという言い方をするならば、吉祥寺はハモニカ横丁が象徴する「OldNewタウン」、砂町銀座商店街は「昭和人情商店街」となり、横浜の洪福寺松原商店街は文字通り「ハマのアメ横」となる。全て集積密度、テーマ密度の高い街であり、商店街であった。また、横浜の港北ニュータウンは「ベビーカーの街」と呼ばれるように明確なテーマを持った街となっている。

未来塾(12)「2014年を振り返る」
そして、人を魅きつけるテーマは常に顧客によって進化していく。その進化を促すものは「未知」という新しい発見があるかどうかによって決まる。2015年、政府は地方創成を目標とした新交付金をはじめ経済対策を用意するとの発表があったが、まさにこの「未知」の商品化、事業化、テーマパーク化ということになる。そして、この「未知」の世界は顧客である都市生活者にとっての未知であり、どんなところに興味関心があるのかが開発テーマとなる。また都市においては訪日外国人市場がそうであったように、ともすると手前勝手な売りたい商品やサービスばかりになりがちである。インターネットの時代にあってクールジャパンも進化し、その代表であった和食を既に一般化し、次なるクールジャパンをラーメンが目指している。つまり、今や外国人にとっては渋谷のスクランブル交差点や武蔵小金井のタバコ店の看板犬こそが「未知」の魅力ということだ。
新消費税の再引き上げは先送りされたが、旧来の市場認識を変えるための時間としなければならない。2015年もこうした未知を求めて、未来塾を公開し発想転換の応援をしていくつもりである。(続く)












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