2008年08月11日

◆大人の夏

ヒット商品応援団日記No290(毎週2回更新)  2008.8.11.

北島康介が100m平泳ぎで金メダルとなった。アテネの時は「超〜きもちい〜い」とコメントしたが、今回の北京では涙で「なんも言えない」とコメントしていた。この4年間の様々な出来事を想い、言葉にならない言葉になったのだと思う。インタビューアーは無理に盛り上げようとするが、北島康介も4つ歳を重ね、「言葉にならない」大人になった北島康介にこころ動かされる。

ここ数年、サプライズという言葉に代表されるように、感動、感をどうゆさぶるか、といったことが、政治からビジネス、あるいはスポーツまで至る所で目的化されてきた。高校野球の選手宣誓に「感動を与えられるようなプレーを」といったところまで蔓延し、書店ではそうした本が店頭に並んでいる。間違ってはならない、結果として感動したことはあっても、目的化するものではない。目的化することによって、演出を逸脱した「やらせ」も出てくる。そして、最大の問題は「一過性」という、その時だけで終わってしまうということだ。

この時期、TV番組や新聞メディアは広島、長崎を始め太平洋戦争の悲惨さを体験世代から若い世代へと語り継ぐ内容を伝えている。それはそれで必要であるが、見られた方も多いと思うが、8月7日の「NHKスペシャル/解かれた封印・米軍カメラマンが見たNAGASAKI」(http://www.nhk.or.jp/special/onair/080807.html)は極めて良い番組であった。原爆投下後の長崎の被災者を撮った一枚の写真。死んだ弟を背負い、身じろぎもせず、焼き場で順番を待っている少年の写真である。唇を噛みしめ、真正面を睨めつけるように立つ少年は、戦争のおぞましさ、不条理さに、一人耐えているかのような、そんな写真だ。何万語を費やすメッセージより、この一枚の写真にこころ動かされる。

前回赤塚不二夫さんへのタモリの弔辞にふれたが、「あなたは私の父のようであり、兄のようであり、そして時折見せるあの底抜けに無邪気な笑顔は、はるか年下の弟のようでもありました」という失いつつある人と人との強い関係を、ああまだ残っていたんだと誰もが感じたことと思う。そして、赤塚不二夫さんの生き方を「あなたの考えはすべての出来事、存在をあるがままに前向きに肯定し、受け入れることです。それによって人間は、重苦しい陰の世界から解放され、軽やかになり、また、時間は前後関係を断ち放たれて、その時、その場が異様に明るく感じられます。この考えをあなたは見事に一言で言い表しています。すなわち、『これでいいのだ』と。」
「これでいいのだ」とする二人は、私にとって「素敵な大人の関係」であるように思える。

今年のお盆休みは少し変わったと言われている。私も1ヶ月以上前から指摘していたように海外旅行者数は減り、実家や自宅で休みを取る人が増えたと。遊びに行くなら近場、ホームグランドであると。勿論、ガソリン高騰などに対する自己防衛意識によるものが多いが、従来の騒々しいような欲望を抑えた「大人消費」とでも呼ぶにふさわしい、計画性のある生活経営へと向かっているように感じる。2008年後半の消費キーワードは予定される目玉商品が無いということもあるが、本格的な「大人消費」、赤塚流に言うならば「これでいいのだ消費」が始まるということだ。(続く)


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Posted by ヒット商品応援団 at 18:35│Comments(0)新市場創造
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