2014年10月19日

◆決定的に足りないのはアイディアである

ヒット商品応援団日記No595(毎週更新) 2014.10.19. 

学習すべきテーマや対象を決めて深掘りする「未来塾」も10回となった。街や商店街、あるいは小売り現場やスポーツなど一見脈絡がないように見えるが、学習すべき共通するものは時代の価値潮流とどう向かい合っているか、その「アイディア・着想」と「行動&継続力」である。こうした課題解決のためにも、顧客の「移動」を簡便であまり費用をかけずに行えるインフラ整備は不可欠となっている。

決定的に足りないのはアイディアである11月になったら公開するが未来塾として「東京町田市」をその対象とした。詳しくは11月の未来塾を読んでいただきたいが、その参考事例として東京・月島のもんじゃストリートを取り上げた。駄菓子屋の店先で売られていたもんじゃ焼きは都心開発に伴い駄菓子屋は少なくなり、もんじゃ焼きも廃れていった。1988年離れ小島であった月島に地下鉄有楽町線が出来たことを機会に、その顧客対象を子供から大人にしたもんじゃ焼きが10店舗からスタートした。そして、周知の明太子もちといった変わり種メニューが次から次へと提供され今や70数店舗にまで成長し、東京の観光名所の一つとなった。決定的に足りないのはアイディアである

次の写真はもんじゃストリート(西仲通り商店街)から見た超高層ビルである。開発された高層ビル群に囲まれたもんじゃストリートという対比はいかにも東京らしい風景である。


よく景気の指標として「移動」の実態がどうであるかが注視される。行楽といった遊びもさることながら、日常の移動、通勤通学から買い物あるいは病院通いといった生活するに不可欠な移動についてである。最近東京一極集中の弊害と共に、一方人口流出が止まらない地方にあって地方交通が経営として立ち行かない現状の困難さが言われている。特に、地方バス会社の7割が赤字経営で苦しんでいると聞く。
今から5年ほど前に鹿児島阿久根市のAZスーパーセンターが買い物に困っている高齢者のために100円バスを運行しており、そうしたことを含めブログに書いたことがあった。阿久根市は人口22,300人ほどのごく普通の過疎の地方都市で高齢化率も極めて高い。異色の非常識経営として業界に紹介されたスーパーであるがその名の通りAからZまで仏壇から車まで販売する、近くにコンビニがないからと24時間営業を行い、中山間部のお年寄りのために自ら100円バスを運行する。結果、阿久根市は勿論のこと周辺市場の顧客開発をも可能とし経営として成立させた。

こうしたAZスーパーセンターのように全てを自前で行う力のある企業は日本全国全てのモデルにすることは難しい。しかし、消費を活性化するためにも「移動」の問題を解決する試みが始まっている。その先駆けであると思うが、埼玉のイーグルバスでは利用実態のデータをベースにダイヤを合理的に編成し運行コストを軽減したり、病院にバス停を作るといった新たな路線を開発して売り上げを上げる。これもAZスーパーセンター同様、顧客要望に沿った経営である。単純化して言うならば、顧客要望の無い時間帯に無人のバス運行を止め、顧客要望のある病院にバスを運行させ新たな収入を得る、至極当たり前の経営をしたということである。

こうしたバス固有の改革と共に、町単位で移動=消費を活性する試みもある。例えばバス運行会社と温泉施設とのコラボレーションのように、バス運賃も安くし、温泉利用料金も割り引くという顧客へのお得を提供するといった方法である。まるで近江商人の三方よし、売り手(バス会社・温泉施設)よし、買い手(顧客)よし、世間という地域よしのような仕掛けである。
あるいは最近では街単位でメディア=消費を活性化する試みも始まっている。例えば、今年で3年目になるかと思うが、東京下北沢という街の地域密着型SNS「I LOVE 下北沢」が行うカレーフェスティバルもそうした試みの一つである。下北沢東会という商店会とともに今年は下北沢の105店舗が参加する変わり種カレーが食べられるカレーフェスティバルで、飲食店のみならずスーパーまでもが参加するテーマを設けた期間限定の活性化策である。参加店は集客を考え、食べ歩きしやすいような商品を作り顧客の反応を見ているが、こうしたなかからヒット商品も生まれてくるであろう。

やっと政府も景気が横ばい状態から下がる傾向にあることを認め始めた。特に、消費が回復しないことが大きく、私に言わせれば既に「自己防衛的消費」に向かっているという理解である。その自己防衛の中心には「安心」と「安価」の2つの「安」があることは言うまでもない。この2つの「安」への入り口の一つに「移動」があることを書いたが、前々回のブログに書いた「感じ取る事実」ではないが、移動はまさに明日を感じ取れる事実としてある。顧客が動いてくれることこそ、明日を感じ取れるということだ。今回のブログのテーマを移動としたが、感じ取れるように、感じ取れるようなアイディアこそが問われているということである。
ご当地グルメのB-1グランプリも今回で9回目となり、福島郡山で行われている。今回は40万人という多くの来場者を予定しており、最早単なるイベントには終わらない、町おこしというビジネスインキュベーションとなった。よくよく考えれば、三方よしにおける、売り手よし、買い手よし、世間という地域よしという仕組みを全国各地を巡って運営する、これこそが小さな単位の「地方創世」であろう。そして、コラボレーションの時代とは「三方よし」が基本となる。(続く)


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Posted by ヒット商品応援団 at 13:39│Comments(0)新市場創造
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