2008年04月13日

◆あの手、この手消費

ヒット商品応援団日記No256(毎週2回更新)  2008.4.13.

大手ファミレスのデニーズは全店舗573店の内、不採算店130店舗ほどを3カ年の内にクローズドさせると報じられた。すかいらーくもバーミヤンを始め既存店のてこ入れが急務となっている。外食から中食へ、そして内食へという傾向の一つの象徴であろう。ところで、相次ぐ値上げラッシュに対し、前回の「共同解決」という方法と共に、生活者の「あの手、この手」の対応が始まった。勿論、価格を中心に置いた消費の傾向である。

以前から百貨店のTV通販で扱われていたが、今「訳(わけ)あり商品」が再注目されている。たらこの切れ子などが代表例であるが、サイズやグラム数、色や形といった規格外商品を安く提供するもので、お取り寄せ通販から町の専門店に至まで人気となっている。
また、アウトレットや質流れ品などのブランド品にも注目が集まっている。これらも一種の「訳あり商品」である。欲しい商品は、やはり手に入れたいという欲求を満足させる、いわゆる「時間という鮮度遅れ」の訳あり商品である。

もう一つの大きな傾向は、「最後まで使い切る」仕組みである。このブログでも取り上げたことがあるが、横浜のローソンから賞味期限切れの廃棄処分される弁当類を貰い受け、安い300円定食として提供している「さなぎ屋」なんかはその代表例である。この延長線上には「フードバンク」のようなビジネスもあり、広い意味でのリサイクルの仕組みで、あらゆる生活領域に浸透していくであろう。そして、リサイクル先進国であった江戸の知恵に多くを学ぶべきで、特に「修繕」ビジネスは修繕道具を含め復活していくであろう。カタログハウスのように、ある意味「修繕」も商品の重要な部分であるということだ。

勿論情報の時代であり、ネットオークションや比較サイトの活用は今まで以上に活発化する。そして、その対象は土地や家屋から、趣味のコレクションまで、更にこんなモノまでがと驚くものまで網羅される。また、一方では情報弱者、特にお年寄りなんかは、こうした方法による享受の外側にいる。今回の後期高齢者医療制度導入の混乱を見ても分かるように、情報は届かない。また、残念なことではあるが、こうした情報弱者に対する詐欺等の情報犯罪もまた増加していくと思う。不謹慎な表現かもしれないが、犯罪者ほど「あの手、この手」のマーケティングしている人間はいない。

ところで先月3/15号のBRUTUSの特集テーマは「みんなの食堂」であった。BRUTUS流の切り方であるが、無名の食堂への注目である。どこにでもある食堂、しかしどこにもない「普通が一番」と呼ぶにふさわしいのが食堂である。そこには食材の産地やいわれ、こだわりといった人を驚かせるものはない。しかし、気軽に、手軽に、安く食べられる、どこか懐かしくて落ち着けるのが食堂である。少し前まで、当たり前であった「普通」の楽しみ方、「日常」の楽しみ方への回帰である。
子供達を喜ばせるデザートやメニューはないが、食堂には大手ファミレスが無くしかけている「内食」の良さがある。それを手作りと言ってもいいし、個性的、おふくろの味でもかまわない。生活者の生活防衛の「あの手、この手」の一つに、この食堂も入ることだろう。ちなみに、私が見る限り、チェーン店でこの食堂らしさを維持しているのは大戸屋である。(続く)


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Posted by ヒット商品応援団 at 13:55│Comments(1)新市場創造
この記事へのコメント
初めまして。
訳アリグルメを調べていたら
偶然辿りつきました。
また、寄らせて貰います。
Posted by お取り寄せ通販特集 at 2009年08月29日 22:12
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