◆スポンサーサイト

上記の広告は2週間以上更新のないブログに表示されています。 新しい記事を書くことで広告が消せます。  

Posted by スポンサー広告 at

2017年01月18日

◆未来塾(27)「パラダイム転換から学ぶ」 働き方が変わる(後半)

ヒット商品応援団日記No669(毎週更新) 2017.1.18.

バブル崩壊以降、産業構造が変わり、働き方も変ってきた。今回はそうした変化の象徴的な事例として電通の過労死事件という社会的事件を軸に経営・働き方共にどんな変化が求められているかを主要なテーマとした。

「パラダイム転換から学ぶ」

働き方も変わってきた
電通の過労死事件から見える
その「ゆくえ」


第12回(1998年)
 コストダウン さけぶあんたが コスト高

第14回(2000年)
ドットコム どこが混むのと 聞く上司 

第21回(2007年) 
「空気読め!!」 それより部下の 気持ち読め!!

第一生命「サラリーマン川柳」より



今一度、徒弟制度に着目

産業構造が変わり、仕事の場もさらに海外へと広がり、しかもオフィスだけでなく、自宅、あるいは移動中、といったように仕事の内容に従い多様となってきた。こうした「場」を問わない働き方は人口減少時代、特に生産年齢人口が減少する時代にあっては、主婦はもちろんのこと、定年後の高齢者もまた働くという多様な人たちが正規雇用・非正規雇用といった雇用形態を含めた多様な働き方として既に現実化している。
こうした多様な働き方を進めていくにあたり、業種や雇用形態の違いはあっても、仕事の進め方についてのマニュアルや業務指示書のようなものが個々の企業には用意されている。グローバル化すればするほどこうしたマニュアル類は不可欠なものとなってくる。また、品質を維持向上させるためには、現場を見守りチェックするためには「人」の派遣の他にインターネットを使った双方向のTVカメラによる品質管理も行われ始めている。「徒弟制度というと、何か前近代的なことのように思えるが、それは「学び」を通した成長の仕組みであって後継者を育てることを意味している。」と書いたが、この徒弟制度が生まれたのは近江商人による「人を育て、商売の成長を果たす」経営の仕組みであった。

その近江商人の心得に周知の三方よし」がある。近江商人の行商は、他国で商売をし、やがて開店することが本務であり、旅先の人々の信頼を得ることが何より大切であった。そのための心得として説かれたのが、売り手よし、買い手よし、世間よしの「三方よし」である。取引は、当事者だけでなく、世間の為にもなるものでなければならないことを強調した「三方よし」の原典は、江戸時代宝暦四(1754)年の中村治兵衛宗岸の書置である。
行商を「新規営業」、他国を「海外」、更に世間を広く「社会」に置き換えても商売の本質は変わらない。10数年前にCSR、社会責任あるいはコンプライアンスというキーワードで企業倫理の仕組化が課題になったことがあった。既に江戸時代にあって、日本流CSRを実践してきたのが近江商人であった。

ところでこの「三方よし」には「人」を育て、一人前になると暖簾分けをして自立させるという、いわば企業の「成長」の仕組みが内在している。丁稚奉公という言葉はすでに死語なっているが、近江商人の奉公制度に「在所登り制度」(ざいしょのぼりせいど)がある。近江出身の男子の採用を原則とし、住み込み制をとったものである。出店は遠国にあるため毎年の薮入りはできない。12歳前後で入店してから、5年ほど経ってから初めて親元(在所)へ帰省できる。これが初登り(昇進)である。以後、数年ごとに登りが認められ、登りを繰り返していく。このとき、商人に向かないと判断されると解雇となる場合もあった。厳しい奉公であるが、一定の時期になると、別家を認める際の祝い品のなかには、たいてい暖簾が含まれている。別家とは独立のことであるが、祝いの中の暖簾を称し、「暖簾分け」とも言われている。その暖簾であるが、大切な屋号を長年の勤功と信用の証しとして与えている。そして、独立して出店することになるのだが、今でいう店長の勤務意欲を刺激するために、給料以外に利潤の一部を配当する制度もあった。こうして多店舗展開していくのだが、資金調達の方法として作られたのが、乗合商い(組合商い)と呼ばれる一種の合資形態をとった共同企業の形成であった。

こうした制度的なことも参考となるが、一番重要なことは「奉公」という考えで、今風でいうなら上司は兄であり、店主は親のような関係の中での働き方であった。厳しくもあるが、また愛情を持った「教え」であった。そして、奉公を長時間労働のように思われがちであるが、それは住み込みということからくるもので、実際はそうでもなかったようだ。そして、重要なことは、この教えは日々のコミュニケーションが基本となり、12歳ほどの少年である丁稚は「見様見真似」で覚えていくこととなる。現在の企業研修はマニュアルがそうであるように「理屈」から入り、体験といえばOJTをはじめとしたプログラムが用意されているが、基本は個人研修&労働である。そして、成果によって評価され、そこに自己責任という壁があり、愛情の入る隙間はない。そして、重要なことは「見様見真似」とは、「言われてする仕事」から自らその経験を踏まえた「考える仕事」へと向かうことにある。それは単なる技術習得のみならず、三方よしの「3つのよし」を成し遂げる意味を自ら会得することへと向かう。「自習」し、「自立」への道である。「世間よし」の世間とは奉公における「公」のことでもあり、高い倫理性を自覚する。これが仕事を通じた人間的成長、近江商人の言葉で言えば「登り」(昇進)となる。今回の電通における高橋まつりさんの過労死事件は、現場がどうであったかわからないのでコメントできないところがあるが、この「考える仕事」に向かう環境や仕組みが足りなかったのではないかと思う。

パラダイム転換によって変わる働き方

バブル崩壊後産業構造の変化に対応した雇用の変化が始まる。既に周知のことであるが、その最大の変化は非正規社員の増加である。言葉を変えれば雇用の多様化となる。デフレが本格化する1997年以降
正規雇用は減少し続け、2005年には3,300万人程度となっている。一方、非正規雇用者数は、94年に前年より減少した後、95年に1,000万人を超え、2005年には1,600万人程度となった。いわゆる約3人に一人が非正規雇用者となっている。
そして、これも周知のことだが、飲食業を始めとしたサービス業における非正規雇用の比率は高い。つまり、パートやアルバイトといった雇用が産業を支えているということである。これら内閣府によるデータは2005年度までで最近のデータによればさらに非正規雇用が増え、卸売・小売業・飲食業におけるパートやアルバイトの比率が高まっている。ちなみに最近の平成25年度のデータでは、正規・非正規の比率は63.3%・36.6%となっている。
この最大理由は人件費が軽減できるというもので、デフレが本格化した1997年以降如実な結果となっている。しかも、それまで増えていた世帯収入は右肩下がりになる。以降、価格競争は常態化する。そして、問題となっているのが正規・非正規における賃金格差である。



全パート社員を正社員へ

パラダイム転換期とは、経営する側にとっても、働く側にとっても、「常に仕事が変わる時代」であり、ある意味「常に創業期にある時代」での働き方となる。しかも、その変化は極めて早く、常に「制度化」は遅れてしまう。例えば、正規・非正規といった雇用形態の違いにおいても昨年政府もやっと「同一労働同一賃金」へと向かう方針がとられ始めた。
確か7~8年前になるかと思うが、生活雑貨専門店のロフトは全パート社員を正社員とする思い切った制度の導入を図っている。その背景には、毎年1700名ほどのパート従業員を募集しても退職者も1700人。しかも、1年未満の退職者は75%にも及んでいた。ロフトの場合は「同一労働同一賃金」より更に進めた勤務時間を選択できる制度で、週20時間以上(職務によっては32時間以上)の勤務が可能となり、子育てなどの両立が可能となり、いわゆるワークライフバランスが取れた人事制度となっている。しかも、時給についてもベースアップが実施されている。こうした人手不足対応という側面もさることながら、ロフトの場合商品数が30万点を超えており、商品に精通することが必要で、ノウハウや売場作りなどのアイディアが現場に求められ、人材の定着が売り上げに直接的に結びつく。つまり、キャリアを積むということは「考える人材」に成長するということであり、この成長に比例するように売り上げもまた伸びるということである。。

更には前回のブログにも触れたが、多くの外食産業、ファミレスやファストフード店で深夜営業から撤退する店舗が相次いている。既に数年前、牛丼大手のすき家はかなりの数の深夜営業店の閉鎖に踏み切っている。その時も問題となったのが、アルバイトによるワンオペ(一人運営)で、その労働環境の厳しさが指摘されていた。現在の外食産業は優れた厨房機器の開発により、調理という熟練の技をあまり必要としない。更には店内調理をあまりすることない調理済食品もしくは半調理食材によるメニューとなっている。こうした調理とともに食材などの店舗への搬入もシステマチックになっており、経験のないアルバイトでも十分やっていける店舗運営となっている。
しかし、深夜営業をやめる理由として「人手不足」を挙げているが、こうした業態の経営そのものが「やり直し」を命じられていると考えなければならない。東京に生活していれば知らない人はいない24時間営業の立ち食いそば店に「富士そば」という会社がある。富士そばではその経営方針として「従業員の生活が第一」としている。勿論、アルバイトも多く実働現場の主体となっている。そして、従業員であるアルバイトにもボーナスや退職金が出る、そんな仕組みが取り入れられている会社である。ブラック企業が横行する中、従業員こそ財産であり、内部留保は「人」であると。そして、1990年代後半債務超過で傾いたあの「はとバス」の再生を手がけた宮端氏と同様、富士そばの創業者丹道夫氏も『商いのコツは「儲」という字に隠れている』と指摘する。ご自身が「人を信じる者」(信 者)、従業員、顧客を信じるという信者であるという。
やり直しの事例は他にもいくらでもある。要は経営のやり直しはリーダーが働く者に耳を傾け決断すれば良い、そんな時代が本格的に到来したということだ。深夜労働が全て悪いわけではない。働いて良かったと思える「充実感」こそが問われているのだ。


パラダイム転換から学ぶ


電通の過労死事件を軸に、パラダイム転換期の働き方を考えてきたが、いわば経営全体の「やり直し」改革の中で働き方が創られ、「人」の成長が結果企業業績を左右していることがわかる。今論議されている「同一労働同一賃金」は製造業における時間単位で働く工業化社会の働き方の基本であり、これはこれで改善していくことが必要ではある。そうした工業化社会を経て、バブル崩壊以降情報とサービスの社会に転換し、しかも産業構造の転換期にいる。その本質は経営のやり直しで、新しい価値創造を目指した産業・ビジネスの中で「人」をどう生かしていくのか、また生きがいとまでいかなくても「充実」した「働き方」をどう創っていくのか、更にもう一人の「人」である顧客・市場の変化を視野に入れた「やり直し」となる。そのやり直しがまず直面するのが「生産性」という壁であろう。

AI(人工知能)によって働き方が変わる

情報とサービスの時代を牽引しているひとつが技術革新である。1990年代、製造現場で開発され使われてきたロボット技術は今日AI(人工知能)へと進化してきた。生産性という点では最も生産性の高い、人手に勝る革新である。
その象徴である日本製囲碁AIがプロの趙治勲九段に初めて勝って話題となったが、AIの活用分野は既に幅広く実施されている。周知の自動車業界ではgoogleとトヨタの自動運転技術などがその代表例であろう。面白いのは世界的な通信社のAP通信は、企業決算ニュースを中心に人工知能による記事の自動生成を活用している。よく言われているようにAI搭載のコンピューターは「人」に取って代わる時代がくるのではないか、そんな事例の一つであろう。人を支援し、社会の高度化を進める為に生まれたのがAIであるが、そんな技術革新にあって「人」がやるべき仕事として次のようなことが言われている。
1、ロボットを運用および教育する仕事
2、高度な接客を追求する仕事
3、芸術やスポーツやショービジネスの仕事
4、アイデンティティを追求する仕事
技術革新によって働き方が劇的に変わったのはやはりバブル崩壊以降の平成時代からであろう。特にインターネットの普及が生活の隅々まで活用され、その延長線上にスマホがあり、そのスマホはIoTによる生活家電という、つまりライフスタイルに必要なものにまで最適な心地よさを手に入れる便利な時代になった。しかも、音声対応という「人間らしさ」を持ってである。

単純化した労働はどんどん少なくなる

こうした傾向は既に1990年代から進み、製造現場の多くはロボット化され、いわゆる人手はロボットの管理運営へと移行し、働く人数はどんどん少なくなり、仕事の内容も高度化してきた。こうした製造現場だけでなく、ホワイトカラーと言われた事務系の仕事はコンピュータによって処理されそのほとんどで人手を必要としなくなった。それら全ては「生産性」という観点から推進され、どれだけ早く、どれだけコストをかけずに、精度高い均質な成果が得られるかである。
前述のように人手を必要としていた飲食業はどうなるのであろうか。原材料などは「わけあり商品」を探し、調理はどんどん自動化され、生産性の観点から、ワンオペ、一人回し、しかも家賃という固定費を考えると24時間営業し、・・・・・・・・「やり直し」というキーワードを使ったが、こうした「生産性」からこぼれ落ちてしまい、それでも顧客が求める「何か」へと転換しなければならないということである。既に何回か触れたことがあるが、競争環境にあって他にはない「独自」は何か、それは「人」であり、その人が紡ぎ出す「文化」である。今、老舗に注目が集まっているのもこうした背景からであり、その老舗は数百年続く店もあれば一代限りかもしれないが街のラーメン屋もある。首都圏の商店街を見て回ったが、活気ある商店街と衰退した商店街との「差」はまさに「人」の差にある。例えば、周りを大型商業施設に囲まれ、衰退するかの ように誰もが考えられた江東区の砂町銀座商店街には、個性豊かな「あさり屋」の看板娘や昭和の匂いのする銀座ホー ルには人の良い名物オヤジがいる。そうした多彩な「役者」が日々商売してい 商店街である。

「マッチング」という既にある異なる「何か」をつなぎ新たな価値を創る試み

こうした「人」の成長も、「文化」の熟成も多くの時間を必要とする。それではパラダイム転換期における働き方、仕事はどうすれば良いのか幾つかの着眼点がある。そのキーワードのひとつは「マッチング」である。例えば広告業界のようにビジネス主体が既成メディアではなく、Googleのような検索エンジンの側に移っていることは広告業界におけるパラダイム転換のところでも指摘をした。「検索」というと単なる探す手段であるかのように見えるが、この手段無くしては過剰な情報が溢れ出るネット世界を自由に使えない時代にいるということである。つまり、使う側、顧客の側に立ったビジネスということができる。このように使う側に立った時何が求められているかが分かれば、求める人と求められる人とを「マッチング」させるソリューションビジネスが生まれてくる。ただ、今までのような単なる紹介業ではなく、より求められることの精度を高め、ミスマッチを無くし、スピードを持って、勿論安く提供しあえればである。しかも、今まで無かった組み合わせによる市場は大きい。数年前に注目された不用品の「あげる、もらう」のジモティから始まり、ブランド品であればオークションではなく買取価格の精度が高いブランディアといったようにマッチングも進化し多様化してきている。

こうしたマッチングは今始まったばかりである。今注目されているマッチングの一つがベビーシッターの派遣である。東京をはじめとした都市部の課題であるが、託児施設を造ろとしても住民の反対や物件も少なく、更に土地の賃料も高く施設の建設費もかかる。しかも、保育士の資格者はいるものの他より賃金が安いこともあってなかなか募集しても集まらない。そんな休眠保育士と子供を預けたいお母さんの要望をネットでつなぐ安価な新しいサービスである。こうした身近で困っている問題解決にIT技術、ネットを介してつなぐビジネス。こうした解決ビジネスはいくらでもある。
こうした分かりやすいマッチングの他に、例えば異業種との組み合わせ、老舗とIT企業、国や言語を超えて。こうした未だかってなかったマッチングでの新市場創りに於ける「働き方」はどうかといえば、創造的であるために想像力が不可欠なものとなる。そこには今までとは異なる新創業となり、働き方もこれまでとは異なるであろう。それは働く時間に於いて既に出てきており、コア時間を守った自由な出退社時間、週休3日制、更には働く場は一切問わない、こうした自由な働き方になるであろう。前述のベビーシッターの派遣という方法もあるが、大企業だけでなく中小企業においても子連れ出勤のような仕組みを取り入れている場合もある。子連れの親が営業で外出していたり、手が離されない時、周囲のスタッフが代わりに子供をサポートする。昔の村の共同体・コミュニティで子供を育てるような、日本的なことを言えば「お互い様」の考えのもとに運営をしている企業もある。
一方、衰退してきた農水産業にIT技術を取り入れた試みが数年前から全国各地で始まっている。その一つが農業ハウスであるが温度や日照管理といったことだけでなく、肥料や水やりまで最適な生育環境を成し遂げ、人手をかけずに生産性も高い収穫量を得るといった新しい農業が始まっている。データ管理とその分析が重要な仕事となり、働き方も変わってきた。
また、廃れた石灰製造メーカーとぶどう農家とがコラボレーションして、石灰を使ってぶどう栽培に適した土壌改良を行ない、ワイン作りが高知で行なっていると報道されていた。どこまで美味しいワインができるか数年先楽しみであるが、このように従来の発想でのコラボレーションとは異なる、まさにマッチングの時代がきているということだ。

生産性を超えるもの

どんなビジネスも世界を市場としたグローバル競争にあって、「生産性」抜きでは成立し得ない時代である。それはどんな企業も他に追随を許さない唯一無二、固有の技術なり、他に変えがたい「何か」を持って競争している。しかし、この「生産性」を超えることは簡単なことではない。
前述のAI(人工知能)のところでいくらAIが進化しても人がやる仕事として、<4、アイデンティティを追求する仕事>があると書いた。アイデンティティ、自己同一性、もっと簡単に言ってしまえば、自己と国との同一性であれば日本人となる。つまり、日本人である「私」はどうであるかということになる。国を所属する企業に置き換えても、家族であっても、町であっても同様である。個人化社会にあって、個人労働が進めば進むほど、グローバル化が進めば進むほど、この属する世界の「理由」「らしさ」「一体感」が必要となってくる。最近、企業における運動会が盛んに行われるようになったのも、この一体感づくりである。国家イベントであればオリンピックもその一つであろうし、町起こしのB1グランプリも同様である。
また、1990年代、若い世代において「私って何!」更には相手に同意を求める「私って、かわい~い!」という言葉が流行ったが、相手に、社会に「認めて欲しい」欲求としてあった。今静かなブームとなっているパワースポット巡りや神社の御朱印帳集めなども、「私確認」の儀式の側面を持っている。つまり、「何か」にすがりたいという欲求である。

そして、このアイデンティティを求める先はやはり「人」に行き着く。人の手が加わらない仕事がどんどん増加していくに従って、つまり「人」という存在感が希薄になっていくに従って、逆説的であるが「人の存在価値」「自分確認」の必要が増大していく。
また、「人を感じさせるもの」が益々人気となっていく。「手作り」「手わざ」「伝承」、つまり「人の温もり」が感じられるようなサービスや商品がますます求められていくこととなる。例えば、看板おばあちゃんや頑固おやじがそうしたアイデンティティの代用となっていく。勿論、家族でもてなすレトロな「家族食堂」なんかが流行るのもこうした理由からである。生産性という世界とはある意味真逆な欲求である・

会社へのアイデンティティ、帰属意識と「働き方」という視点に立てば、労働時間や諸待遇の充実と共に、会社や所属チームとの一体感を踏まえた「働きがい」が必要となり、しかも自ら問い確認していく仕組みが必要となる。現在における生産性は一律的に「成果」「結果」によってのみ評価される。長時間労働の多くは会社から強制された場合もあり、勿論それらは論外である。しかし、その多くは、自ら長時間労働を行うことがある。何故、自らなのか、何故残業時間を過少申告するのか。それは、得られた「成果」に見合った生産性がないことを本人が一番知っているからである。あるいは周囲を見て、「申し訳ない」という思いからであろう。

お互い様精神

こうした「申し訳ない精神」は欧米の雇用契約概念にはない、ある意味日本的な考え方である。しかし、例えばプロ野球は個人事業主であり、個人労働であるが、同時にチーム貢献も評価されているように、数値化できないこともまた評価・貢献の要素となる。先発には先発の評価があり、中継ぎも抑えも、そして当然であるがバッティングピッチャーも異なる評価がある。そして、個人労働であってもチームとして勝負するのがプロ野球である。チームメンバーは互いに助け合うことが試合に勝つ前提である。申し訳ないという自己責任精神とともに、日本には「困った時はお互い様」という解決するための知恵は古来からあった。そうした会話が成立するように、どれだけお互いに丁寧に「人」を見ていくか想像を巡らしていくかである。アイデンティティという視点に立てば、経営者・管理職もそこに働く個人も、互いに足りない点を確認し合える仕組みが必要な時代を迎えているということだ。更に、何よりもこうした「お互い様関係」から新しいイノベーションも生まれるということである。

そして、パラダイム転換期とは常に変化し創業期でもあると、真っ白な紙に絵を描く経営になると指摘した。つまり、仕事は常に変わり、働き方にも正解は無いということでもある。電通という企業を中心に時代の変化に適応した働き方について学んでみた。その電通も責任を取って社長が代わり、どんな次なる電通を目指すのか見守っていきたい。
冒頭のサラリーマン川柳ではないが、これから始まるトランプ米国という激変の時代の「空気読め」である。そして、立ち向かっていくには、個人で1社で難しければ、お互い様精神で解決していこうということだ。



<お知らせ>
「人力経営」―ヒットの裏側、人づくり経営を聞く。新書756円
アマゾンhttps://www.amazon.co.jp/人力経営%E3%80%82―ヒットの裏側、人づくり経営を聞く%E3%80%82-mag2libro-飯塚-敞士/dp/443410800X
電子書籍版もご利用ください。
  
タグ :電通


Posted by ヒット商品応援団 at 13:51Comments(0)新市場創造