2016年07月24日

◆ポケモン探しの旅が始まる

ヒット商品応援団日記No653(毎週更新) 2016.7.24.

いつもであればこの夏のr旅行需要などをテーマにしてブログを書くのだが、大きな消費変化が見当たらない。昨年夏については「消費後退の夏 」というタイトルで次のように書いた。

『JTBによれば今年の夏の旅行の特徴となっているのが「観劇、イベント参加、スポーツ観戦」(1.1%増)の増加が目立つという。また、利用交通機関では、レンタカーを含む乗用車の利用が5.6ポイント増で約7割に拡大。JR新幹線は1.4ポイント減の13.4%に縮小したと。今年の夏の消費を見ていくと、メリハリ消費から後退した感が強い。昨年の消費増税によってワンコインランチや激安・デカ盛りといったデフレ型消費が再燃したが、ここにきてそうした消費が加速しそうである。
そして、今後もこうしたデフレ型消費の傾向が続くかと言えば、景気が好転する材料は全くない。消費を活性するための新交付金、いわゆるプレミアム付き商品券が話題となっているが、一過性のものであってこの夏限りである。特に、地方にとっては必要であるとは思うが、地方創生という根本課題に対する解決とは無縁である。よくよく考えれば、プレミアム付き商品券というお得商品券は、デフレ型官製プロモーションのことである。現政権の誕生を促したのは、日本経済の再生、景気の回復であった。第一の矢、第二の矢がこうした消費後退を生んでおり、残るは第三の矢となるが、未だ出てきてはいない。』

「プレミアム付き商品券」を各市町村が行う「ふるさと納税」に置き換えた程度の違いしかない。これも都市の市民税の一部を任意の自治体へ移転する寄付行為であるが、その主旨から外れた「お得」プロモーションとなっており、これもデフレ型消費の一つであろう。
3月以降の家計支出(二人以上の世帯)を見ても全てマイナスとなっており、推測ではあるが6月も同様であろう。そして、唯一昨年との違いを挙げるとすれば、国内旅行人数は、7,485万人と前年から微減となる見込みであるのに対し、海外旅行人数は、260万人(前年比+7.4%)となる見込みであると。これも円高傾向と燃油サーチャージが2016年4月には0円となり、海外旅行には行きやすい状況になったということで、これも「お得」旅行の選択肢の一つである。

ところで日本の消費に大きな役割を果たしてきた訪日外国人需要はと言えば、順調にその旅行者数は増えている。6月の訪日外国人数(推計値)は、前年同月比23.9%増の198万6000人。また1~6月累計の訪日外国人客数は1171万4000人と、6月に入り1000万人を超えたと発表があった。JTBによれば2016年の訪日客数の予測は前年比19.0%増の2350万人であると試算しているが、リピート客が増えており、ある意味日本の観光化は着実に進んでいると言えよう。つまり、以前から指摘しているように、以前のような爆買い消費ではなく、日本文化消費型旅行に向かっているということだ。
ちなみに訪日外国人の消費動向を見極める一つとなっているのが百貨店売り上げであるが、6月の売上高は3.5%減で4か月連続のマイナスとなっている。その内訳であるが、訪日外国人による売上高は20.4%減(約130億円)と3か月連続前年割れしたが、購買客数は14%増(約 23万人)と41か月連続前年を確保している。つまり、購買単価が大きく落ち込んだということである。この数字からも爆買い消費は既に過去のものとったということだ。
また、百貨店のもう一人の顧客である富裕層はどうかと言えば、株価下落の影響もあり、美術・宝飾・貴金属(-9.2%)の失速を受け、 雑貨が15か月ぶりのマイナス。主要5品目全てが前年を割っている。百貨店業界も一つの曲がり角に来ているということであろう。

こうした消費動向に加え気になるのが、SC(ショッピングセンター)の売上である。5月度の既存店は前年同月比▲1.8%(前月▲1.0%)となり、3ヶ月連続でマイナスとなった点にある。また、日常消費の中心となっているスーパーについてもあまり良い景況とはなってはいない。日本スーパーマーケット協会によれば、売り上げ面ではほとんど横ばい状態であるが、来客数 が低迷していることに加え、仕入原価の落ち着きにより、販売価格に転嫁できず、収益の改善がなされていないとのこと。そして、今後の見通しについても明るい見通しは立っていないとの判断をしている。

暗い情報ばかりであるが、去年の夏と今年の夏との消費における最大の違いがあるとすれば、それは「ポケモンGO」であろう。任天堂や日本マクドナルドの株価が上がったことではない。基本的には無料であることから、間違いなくかなりのスマホ&アイフォーンユーザーはダウンロードし、あらゆる場所でポケモン探しが始まる。2016年4月時点のスマホ利用者数は5496万人、利用時間の8割をアプリが占めているという調査結果が出ている。ちなみにアプリ別の利用者数は、1位が「LINE」で4305万人、2位は「Google Maps」で2737万人、3位は「Google Play」で2686万人となっている。
そして、ポケモンGOはニンテンドーDSやWiiと同じように個人でも家族でも、年齢・性別を問わないゲームである。そうした意味で、マーケットは極めて大きい。場所によって現れるポケモンが150種類ほどあって変化があることから、そのポケモン探しはやればやるほとはまっていく。それだけ探すための移動は広く激しくなるということだ。もちろん、残念ながら立ち入り禁止区域に侵入したり、ホームから落ちる事故といったことは当然起きることとなる。しかし、移動が激しくなればなるほど、関連する消費も増えることとなる。日常的な行動範囲が広がり、さらに広がり、小さな旅、ポケモン探しの冒険の旅が始まるということである。それは単なるスマホの充電器が売れるということではない。低迷する消費の救世主、勿論2016年ヒット商品番付の東の横綱は間違いない。150種のポケモンがどんな街に、どんな横丁に、更には寺社や観光スポットあるいは公園に、現れてくるか、これも未知を楽しむ冒険の旅となる。そして、ある時、あなたの店の前でポケモン探しのフアンが現れるかも。ポケモンが隠れてくれるような策がマクドナルド以外にも企業やお店の側でも考える時がくるかもしれない。(笑) 勿論、集客プロモーションとしてではあるが、それを分かった上でポケモン探しに熱中するオタクが誕生し、ポケモンが住む聖地もネット上で論議されるであろう。(続く)
  
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Posted by ヒット商品応援団 at 13:38Comments(0)新市場創造