2016年01月15日

◆混迷の年が始まる

ヒット商品応援団日記No633(毎週更新) 2016.1.15.

今年も元旦の新聞各紙を読みどんな年となるのかコメントするのが常であるのだが、年々テーマとならないような記事ばかりで、これでは新聞が売れないのもわかるような気がする。
ところで国会がスタートしたが、今年は参院選があるということから1000兆円を超える赤字財政にもかかわらず、特別補正予算には低年金者向けに給付金3万円配布といった施策が用意されている。更には、ここに来て軽減税率どころか、10%の新消費税の先延ばし案まで新聞紙上を賑わしている。政治はどんどんポピュリズム化し、なんでもあり、朝令暮改は常であるとばかりに少し前まで言っていたことを反故にするようなことが蔓延している。

あまり政治的なことをコメントするブログではないのでこれ以上言及しないが、周りを見渡せばEUの経済は相変わらず危機状態にあり、それ以上にシリアや北アフリカからの難民流入、さらにはヨーロッパ文明とイスラムという宗教との衝突が起こっていると指摘されている。昨年世界のベストセラーとなったミシェル・ウエルベックが書いた近未来小説「服従」にその西洋文明とイスラムという宗教の衝突の意味が描かれている。その内容であるが、2022年の仏大統領選において、既成政党の退潮著しく、極右国民戦線と穏健イスラム政党の決選投票となり、結果は穏健イスラム政党が政権を取るというストーリーである。極めてシリアスな状況にEUの今日があることがわかる。

最近ではサウジアラビアとイランとの宗派抗争があるが、その裏側には石油価格の大幅下落がある。そして、上海株式市場の暴落。2016年に入り、2回ものサーキットブレーカーが作動し、場中で取引停止となるなど、厳しい幕開けとなった。以前から指摘されている中国経済の混迷がさらに深まっているということだ。周知のように、日本の株式市場においても連日の大幅下落である。
一方、周知のように米国はそれまでの金利を引き上げ、リーマンショックの清算を行い、更にはシェールオイル革命によって世界一の産油国になったばかりでなく、輸出まで行うという。世界経済を見れば、米国の一人勝ちである。そして、中国をはじめ世界に広がったマネーが米国へと戻ってきているようだ。あのジョージソロスがあの中国の電子商サイトを運営するアリババの保有株式をほとんど売却したと話題になっている。その意味するところはわからないが、リーマンショックのような金融危機ではないが、テロ戦争、宗派抗争、難民問題、領土・領海問題、核実験、そして、石油下落をはじめとした株式市場の暴落、・・・・・・絡み合った複合危機といった言いようのない混乱にある。

平和と表裏にあるのが観光である。年間約8500万人の観光客が訪れる世界一の観光大国であるフランスは同時多発テロ後、非常事態宣言が発令され厳戒態勢が続くパリでは観光客が激減していると報じられている。一昨年の中国からの観光客数は200万人を超えたと言われているが、昨年からその代替旅行先は日本となっている。そして、多くの旅行関係者は欧州から日本に旅先を変更する中国人が多く、日本における“爆買いツアー”はさらに加速すると。また、最近ではトルコにおいても自爆テロが起こり、ドイツ人観光客が亡くなっている。さらにはISと共にクルド民族とは半分戦争状態にある。こうした傾向は中国人観光客のみならず、多くの国の観光客が欧州を避け日本を訪れると。つまり、訪日外国人によるインバウンドビジネスは今年も続くということである。他国の不幸を喜ぶのではなく、平和の意味を再度考えなければということだ。

ところで、CoCo壱番屋の冷凍ビーフカツが廃棄されずにスーパーや仕出し弁当店などに横流し流通しているという事件が起きた。勿論、産業廃棄物処理業者のダイコーは悪質極まりない企業で、以前から繰り返し行っている常習企業のようだ。今回の事件を聞いて、あの「汚染米流通事件を想い起した人も多いと思う。8年近く前になるが三笠フーズによる事件である。今回の事件と同様汚染された事故米の流通先は多様で、原材料として使用した酒造メーカーは、農水省が公開をためらっているなか、自ら公開した。いち早く汚染された米使用商品を公開し自主回収に向かった薩摩宝山をはじめとした焼酎・日本酒メーカーであった。そして、その後汚染米と知っていながら使って嘘をついた美少年酒造は破綻し、本当に知らずに使っていた西酒造(薩摩宝山)は逆に顧客支持を取り戻し、焼酎の一大ヒット商品となった。この2社の間にあるのは顧客を信じる真摯さ、誠実さであった。
今回の事件も流通した事業者がCoCo壱番屋製の商品であること、さらには廃棄商品であること、こうした事実を分かって取引したかどうかである。これも当たり前のことであるが、加工食品には原材料の内容など表示義務があるにもかかわらず、そうした表示がない商品を扱った流通業者は「おかしい商品」として疑うのが普通である。知らないでは済まされないということである。顧客支持を得た西酒造(薩摩宝山)となるか、あるいは破綻した美少年酒造となるか、流通した関係企業は真摯に応えなければならない。

年明け早々、外にも内にも、嫌な事件が続発している。昨年横浜都筑区の傾きマンション事件の時、「再び、心は内へと向かう 」とブログに書いたことがあった。杭打ちどころかほとんどの商品は見えないところで作られており、一度の嘘はたちまち疑心暗鬼を生むそんな心理市場となっている。CoCo壱番屋は異物が混入しているのではということから自主的に廃棄処分としたが、ペヤングやきそばもそうであったが、日本マクドナルドのその後を良き反面教師として学んでいる。よくリスクマネジメントというが、そんなテクニカルなことではなく、心底顧客を信じ公開し真摯に応えるという商人として至極当たり前のことが求められている。そんな混迷の年が始まった。(続く)
  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:23Comments(0)新市場創造