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2013年06月20日

◆臨界点を超え、フェーズ(相)が変わる

ヒット商品応援団日記No556(毎週更新)   2013.6.20.

日本がワールドカップへの出場が決まった時、5000万人もの人がFacebookやツイッターを通して誰かに喜びを伝えたい、話したい、共有したい、そうしたつぶやきが横溢したと言われている。一方、復興庁の参事官が被災者への支援という最も心を寄り添わなければならないにもかかわらず、ツイッター上に愚痴とは言い難い多くの暴言をつぶやき、当然であるが広く社会が知ることになり、担当から外された。そして、この参事官のフォロワーは1,300人にも及んでいると言う。

随分前になるが、「見て見て見て〜」というギャグのお笑い藝人がいたが、芸人ばかりでなくごく普通の個人が「見て欲しい」、「聞いて欲しい」、「注目して欲しい」と願い、直接当人に言うのではなく、ネット上という不特定多数に向けた匿名世界を舞台にして発言する。その先駆けが周知の2ちゃんねるであるが、その掲示板が広く浸透し始めた時、「たんつぼ」とか、「汚物入れ」とか、あるいは男が女に、またその逆のなりすましゲームを楽しむ場所であるとか、様々な批判が浴びせかけられた。ネット世界は玉石混淆の象徴でもあったが、今やツイッターもそうしたフェーズ(相)に移行したようだ。

誰かとつながりたい時代とは、逆につながりの無い個人が浮遊する社会である。そして、匿名のネット世界が自らを明らかにして会話する良きメディア舞台に上がったと初期のツイッターを評価したことがあった。しかし、実名という特定世界は残しつつも、ツイッター利用者が急速に拡大するにしたがって、元の匿名世界へと向かっている。そして、10数年前に食事を採らずにサプリメントだけを補給しダイエットするいわゆるサプリメント依存症を思い起させた。食材を調理した食事というリアル世界ではなく、サプリメントという人工的につくられた補助食品を食事するという、一種の虚構世界に生きる現象、その健康被害が至る所に出てきたことは記憶に新しい。現在は健康であることへの補助食品として使われているが、ツイッターにおける過剰なつぶやきは次のフェーズへと移行すると見ている。副産物としてつぶやき中毒という一種の社会病理が生まれているが、過剰なつぶやきはその臨界点を超え、最早「つぶやき」ではなく、これでもかと自己主張するメディアへと変質してきたということである。

ところで数日前にAKB48の総選挙が行なわれ、意外にも(!)指原莉乃が1位となりセンターを務めることとなったが、マスメディアは競ってその一部始終を報道していた。以前から秋葉原という街がオタクというサブカルチャー、いやカウンターカルチャーの申し子達を産んでいることに注視してきたが、AKB48もそうした芽の一つと考えてきた。ところが今回の選挙結果はどこにでもある政治選挙と同様の在り方を見せている。AKBオタクではない私であるが、指原莉乃はアイドルとして恋愛禁止というメンバーの掟を破りスキャンダルを起こした女性である。その女性が選挙の結果1位となり、センターを手に入れたということである。恋愛禁止というモラルハザードはどうなるのか心配であるとするAKBフアンもいるが、フアンのコアとなるオタク達にとってどのように感じているのであろうか。オタクにとってアイドルとは触れてはならない存在としてある。オタクがオタクであるゆえんは触れえぬアイドルとの握手会が唯一交流できる方法であった。その禁を破ったアイドルはアイドルとは思わないであろう。恐らく、AKB48を支えてきたオタクフアンは離れていくと思われる。つまり、秋葉原駅北口から数分離れた雑居ビルの上の小さな常設ステージで歌い、踊っていたAKB48も、アジアに進出するまで広がり、オリコンのヒットチャートでは上位を総なめにするまでとなった。つまり、見事にマスプロダクト化し、次のフェーズへと進んできたということである。勿論、オタクではないフアンが圧倒的に増えることによってオタクの臨界点を超え、結果アイドルもまた変質してきたということであり、指原莉乃はその象徴である。

ところでツイッターというメディアはこれからどうなるかと言えば、インターネット初期の2ちゃんねるのような掲示板に近づいていくことが考えられる。実名で本音で語り合う、教えられたり、教えたり、そうしたコミュニケーションから新しい何かが生まれてくることを予感していたが、今や匿名世界というインターネットの先祖帰りのような動きとなっている。そうであれば巨大な匿名掲示板である2ちゃんねるとどこが違うのか。これも次なるフェーズへと後戻りしているように見える。
AKB48はどんなフェーズへと移行していくかと言えば、恋愛禁止というメンバーの掟を破りスキャンダルを起こした指原莉乃は福岡に移動(左遷)させられ、そして復帰を果たしセンターを勝ち得た女性である。そうした復帰への苦労を支えてきたのか、実はそのフアンには中年男性が多いと言われている。何か、サラリーマン人生の苦労・悲哀を彷彿とさせられ、アイドルという憧れの世界とは真逆のリアル世界の出来事のように思える。極論ではあるが、オタクフアンから普通のオジサンフアンへの変化であり、秋葉原の雑居ビルの小さな常設館から東京ドームをはじめとした5大ドーム公演や紅白歌合戦へ、裏舞台から表舞台というフェーズへの質的転換、オタクのアイドルから国民的アイドルへの転換ということである。

こうした質的転換を促すのは、臨界点を超える過剰さである。情報が広く瞬時に行き渡る時代にあって、しかも比較することが容易な時代である。そして、次第に興味関心事を入り口に一点へと集中する。集中は更なる集中を生み、過剰となる。それは単なる販売される商品についてだけではない。あらゆるデキコトも同様で、社会に存在しているもの全てが日々変化し転換している。
こうした転換と併行して、後戻りするネット世界では暴言により相次いでブログが炎上する一方、「クラウド」という概念が急速に広がりつつある。東日本大震災を機会に周知のクラウドファンデンイングを始めクラウドソーシングというネットを通じ広く呼びかけることによる新たなビジネスの可能性を相互(クライアントとワーカー)に探る方法が実施されている。AKB48というエンターテイメント世界で言えば、クラウドサービスを使って育てたニッポンの歌姫初音ミクこそクラウドの象徴であろう。また、全国各地に誕生し活動している2千数百もの「ゆるきゃら」もアナログではあるが、まさにクラウド的発想を取り入れて増殖してきたものである。意味的に言うと、これからのAKB48の競争相手の一つは「ゆるきゃら」ということだ。そして、勝手な推測であるが、初期のAKBオタク達は初音ミクを育てる熱狂的なフアンになっているのかもしれない。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 14:10Comments(0)新市場創造