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2010年12月12日

◆2010年ヒット商品番付を読み解く

ヒット商品応援団日記No475(毎週更新)   2010.12.12.

日経MJから今年度のヒット商品番付が発表された。毎回同じようなことを書いてしまうが、夏から秋にかけてブログを更新しなかったので取り上げなかった商品や出来事が番付に入っているだけで、その多くがブログに取り上げたものばかりである。今回も個々のヒットの背景は割愛し、今年のヒットの傾向や着眼すべきポイントについて記すこととする。ちなみに上位番付けは以下の通りである。

東横綱 スマートフォン、 西横綱 羽田空港
東大関 エコポイント、    西大関 3D
東関脇 猛暑特需、西関脇 LED電球
東小結 200円台牛丼、   西小結 坂本龍馬

エコポイントという「官製販促」や百年に一度と言われ自然災害の様相を見せた「猛暑特需」は一過性のものであり、こうした特需の波にのることは必要ではあるが、自ら新市場を創造開拓した商品とは少し異なるためここでは分析対象から外すことにする。
そこで今年度見られたヒット商品の傾向や着眼すべき点を挙げてみたい。

1、ライバル参入による市場の革新競争。結果、市場の拡大へ。

東横綱のスマートフォンであるが、携帯市場は周知のアップルのiPhone(ソフトバンク)の導入に続き、Googleも基本ソフト「アンドロイド」で参入。ライバル企業であるドコモやauも新機能・新機種をもって続々と参入した。2年ほど前の高機能と単機能、高価格と低価格といった携帯市場の構造を根底から変えることとなり、日経MJによると、2010年度の携帯販売台数は前年度比88%増の440万件と推測され、単なる市場のリニューアルではなく全く新しい市場が創造されたということだ。
ところで、昨年度西大関にランクされたLEDであるが、今年度も西関脇にランクされた。これも導入当初7000円台であった電球は競合社の参入により、今や2000円台となり、エコポイントの交換対象商品ということもあり、電球市場全体のほぼ半数を超えた。これと同じことが、家庭用の洗剤市場においても起こったいる。周知のように昨年前頭にランクされた花王のアタックNeoに引き続き、ライバルであるライオンのトップナノックスが好調。従来の液体洗剤と比較し、1/2の洗剤量で済み、節水、節電効果を高め、市場を根底から変える商品の一つとなった。また、更に昨年東大関にランクしたノンアルコール飲料キリンのフリーに続き、ライバルサントリーからはカロリーや糖度も0としたオールフリーを販売し、これも好調で前頭にランクされた。
こうした市場は従来のような類似による単なる価格競争市場ではない。LEDについては量産効果=価格の引き下げ=利用しやすい価格となり、今や価格競争になっているが、他のランクされた後続商品は商品の革新性を更に進化させており、ある意味で革新さを競争している。結果、それが見事に市場全体を変え、拡大していると言えよう。デフレ経済下にあって、価格競争から脱却する良き事例である。

2、待たれるキラーコンテンツ

西横綱に羽田空港、西大関に3Dがランクされた。このランキングはこれからの期待を込めてという意味に理解すべきである。この両者共に必要なのが「キラーコンテンツ」である。羽田空港は単に便利になった、世界標準である24時間化が実現できるようになったということを超えた意味、東アジアのハブ空港のことを含めてであるが、移動選択肢を持つこととしかもこれほど首都の近くにある国債空港という質的転換がはかられる空港である。そのためにはLCC(ローコストキャリア)の積極的な参入が不可欠である。分かりやすい国内事例でいうならば、航空・新幹線と共に安くて気軽な高速バス路線が完備されるようなものである。ANAも来年1月にLCCの新会社を立ち上げるようであるが、LCC乗り入れが常態化するならば羽田空港はキラーコンテンツを得て、大きな経済刺激を与えてくれる。恐らく、インバウンド、アウトバウンド共に、大きな変化が生まれることは確実である。
また、西大関の3Dであるが、今月東芝から課題であった眼鏡なしで見ることができる3DTVが発売されるように半歩進化してきている。しかし、アバター以降、キラーコンテンツ足りえる映画等が開発されてはいない。3D技術を含めたリアルな画像、合成ではなく実況画像開発への挑戦が続けられていて、サッカーなどへの適用が考えられているようであるが、今ひとつ「何が」キラー足りえるのかが明確になっていない。任天堂からも眼鏡なしで3Dを楽しめるゲーム機が発売されたが、これもコンテンツ次第であるが、場合によってはゲーム機の方が先行すると推測される。

3、常態化するデフレ時代

200円台の牛丼が東小結にランクされたが、居酒屋におけるメニューも200円台均一となり、更にはセルフスタイルの居酒屋まで出て来た。B級グルメは商品化されスーパーで販売され次なる進化を見せている。番付には入ってはいないが、いわゆる規格外のわけあり商品は野菜や果物、缶詰、・・・・こうした広がりは水産物にも波及し、未利用魚というわけあり商品まで生まれて来た。つまり、こうしたデフレ型業態、商品が生活の中に常態化、日常化しているということである。12月から家電エコポイントが約半減することから、11月末には家電量販店に行列ができたのも、こうした少しでも安くという価格への反応が根強くあるということだ。
ところでデフレの常態化を象徴的に表しているのが前頭にランクされた「銀座」であろう。より選られた商品を集積し本来の百貨店の本道を目指し増床した銀座三越と、カジュアル量販のフォーエバー21や家電量販のラオックスを導入した銀座松坂屋。このように2つの異なる商業・専門店がモザイク模様のように散在するようになったのもデフレならではの現象である。
また、ファッション商品の番付に「ファー小物」が前頭に入っているが、数年前にオシャレはしたいが洋服までは高くて手が届かない若い女性にヒットした柄タイツと同じデフレ現象である。節約のために○○に代える代替消費、あるいは××したつもり消費といったアイディア消費である。「デフレもまた楽し」といった生活者のたくましさすら感じる時代となった。

4、欲望喪失世代というマーケット

2010年度もそうであったが、ここ数年前頭程度のヒット商品は生まれるものの、上位にランクされるような若い世代向けのメガヒット商品はほとんどない。1960年代〜70年代にかけて、資源を持たない日本はそれらを求め、また繊維製品や家電製品を売りに世界各国を飛び回っていた。そんな日本を見て各国からはエコノミック・アニマルと揶揄された。1960年代からの高度成長期のいざなぎ景気(1965年11月〜1970年7月/57ヶ月間の年平均成長率11.5%)が象徴するのだが、3C(カラーTV、クーラー、車)と言われた一大消費ブームが起きた。そうした消費欲望の底にはモノへの渇望、生活のなかに多くの商品を充足させたいとした飢えの感覚があった。国家レベルでは資源への飢え、外貨への飢え、多くの飢えを満たすためにアニマルの如く動き回り、個人レベルにおいても同様であった。1980年代に入り、豊かさを感じた当時の若い世代(ポスト団塊世代)は消費の質的転換とも言うべき多くの消費ブームを創って来た。ファッションにおいてはDCブームを始め、モノ商品から情報型商品へと転換させる。情報がそうであるように、国との境、人種、男女、年齢、こうした境目を超えた行動的な商品が生まれた。その象徴例ではないが、こうした消費を牽引した女性達を漫画家中尊寺ゆっこは描き「オヤジギャル」と呼んだ。
さて、今や欲望むき出しのアニマル世代(under30)は草食世代と呼ばれ、肉食女子、女子会という消費牽引役の女性達は、境目を軽々と超えてしまう「オヤジギャル」の迫力には遠く及ばない。私が以前ネーミングしたのが「20歳の老人」であったが、達観、諦観、という言葉が似合う世代である。消費の現象面では「離れ世代」と呼べるであろう。TV離れ、車離れ、オシャレ離れ、海外旅行離れ、恋愛離れ、結婚離れ、・・・・・・執着する「何か」を持たない、欲望を喪失しているかのように見える世代である。唯一離さないのが携帯を始めとした「コミュニケーションツールや場」である。「新語・流行語大賞」のTOP10に入った「〜なう」というツイッター用語に見られる常時接続世界もこの世代の特徴であるが、これも深い関係を結ぶための接続ではなく、私が「だよね世代」と名付けたように軽い相づちを打つようなそんな関係である。例えば、居酒屋にも行くが、酔うためではなく、人との関係を結ぶ軽いつきあいとしてである。だから、今や居酒屋のドリンクメニューの中心はノンアルコールドリンクになろうとしている。
断定はできないが、これからも前頭程度の消費は見せるものの、世代固有の世代文化を象徴するようなヒット商品は生まれてはこないであろう。いずれにせよ、ブログにするか書籍にするか決めてはいないが、「パラダイム転換期、その世代消費論」といった各世代に見られる価値観変容をテーマに書くつもりである。

西小結に坂本龍馬が入ったが、これもNHKの「龍馬伝」を中心に1月のブログに書いたので興味ある方はご覧いただきたい。また、番付に電気自動車が入っていないのはおかしいと指摘する方もいるかと思う。私もその一人であるが、電気自動車への転換は考えられないぐらい早くなる。既に、ガソリン車を電気自動車へとモデルチェンジする電池等が売られており、2011年はこうした電気自動車へのリニューアルに話題が集まるであろう。また、電子書籍を読むための端末がソニーなどから発売されたが、これも急速に浸透し、単に安く手軽に読める電子書籍としてではなく、音楽付き書籍のような新しい試みも始まっている。こうした試みを含め電子書籍の新たな可能性、特にマンガのようなコンテンツの場合など世界市場開拓へとつながる。つまり、今年のヒット商品スマートフォンや3Dは序章のようなもので、2011年度は本格的なデジタルライフの波を迎えることになる。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 14:00Comments(0)新市場創造