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2010年02月11日

◆サバイバル時代の知恵

ヒット商品応援団日記No443(毎週2回更新)  2010.2.11.

ここ2年ほど、10年間で100万円所得が減少した時代、いわば所得減少に伴ってどんな消費傾向が見られてきたかを書いてきた。そうした消費傾向を「巣ごもり消費」と呼んできた訳であるが、「消費は所得の関数」としての意味合いと共に、もう一つの消費価値観を再考してみたい。そのことは何よりも価格競争を脱することや新市場の創造への着眼につながるからである。
「消費は所得の関数」、その現象としては低価格商品や低価格店への志向は勿論のこと、更に回数減、となって現れてくる。ある意味、使えるお金の中で単純に金額と回数を減らすという消費である。しかし、昨年のヒット商品であるLED電球やHV車のように、最初は少々高くつくが長い目で見れば財布にも地球にも優しい「エコはお得」といった価値観商品、新しい市場も生まれてきた。一方、車で言うと、都市部ではカーシェアリングが急速に普及し始めている。両者の根底にある価値観は、所有価値と使用価値である。多様な価値観の時代に向かっていると、そう決めつけて終わることは簡単であるが、しかし答えにはならずその多様さについて考えてみたい。

ところで、1980年代から数年前まで、「トレンド」というキーワードがマーチャンダイジング&マーケティングで言われてきた。簡単に言えば、新しい、珍しい、面白い、そんな消費傾向(トレンド)を探り、その商品をどこよりも早く、顧客に提供しようとするビジネスである。しかし、それは競合社によってすぐに類似商品が生まれ、価格競争市場に向かう。この繰り返しを続けてきた訳である。そして、今なおこうしたマーケティングによる消費傾向は巣ごもり生活においても続いてはいるが、新しいは「既にあるもの」へ、珍しいは「使い回し」へ、面白いは「私の好み」へ、そんな変化が顧客の側に見られるようになった。「既にあるもの」を「使い回し」て「私の好み」にする、そんなライフスタイル観である。

もっとくだけた表現をすれば、「冷蔵庫にある残り物をプロの料理人がごちそうに変身させ、しかもお得」、いわゆる賄い料理のような、生活のプロ志向化、生活の達人に向かうライフスタイルと言える。極端な表現をすれば、消費のプロから生活のプロへの転換ということである。下取りセールの成功、今なお続くアウトレット人気、リサイクルショップの普及&定着、・・・・・・こうしたエコロジー的視座による見直しが、個々の生活の細部にわたって進行しているということである。結果どういうことが起きているか、例えば使いこなせない圧力釜や洗濯機等の家電メーカーは使い方教室を開催し、人気となっている。あるいは、衣類の修復やしみ抜きのプロ福永真一さんやクリーニングのプロ中村祐一さんに注目が集まるのも、既に「有るもの」を生かし切る、価値を最大化させる知恵が求められている良き事例である。

3年ほど前、「今、地方ビジネスがおもしろい」というテーマでブログを書いたことがあった。地方に埋もれた「既にあるもの」に着眼して欲しいと願ってであったが、ネット通販という方法によって、次々にヒット商品を生んでいることは周知の通りである。「既にあるものへの再認識」とは、価値観でいうと「有用性」への認識ということである。生活者にとって、単純な新しい、珍しい、面白いといった欲望としての消費に、「有用性」という新たな物差しを持ち始めたということだ。その有用性には「長い目で見た費用対効果」もあれば、「使い回すことによる新たな満足」もある。その新たな満足には、「私」としての好み以外に、守るべき家族の健康や、もっと広げればエコにも良いといった「公」としての小さな満足もある。こうした認識は巣ごもり生活を通じ再認識し得られたものであるが、小資源国日本ならではの一種の能力、日本人が先駆的に持っているDNAのようなものだ。

経済指標を持ち出すまでもなく、企業も生活者も生き残るための戦いをしている。この「有用性」を企業経営という世界に当てはめてみると生き残り策が見えてくる。日本は世界の中で圧倒的に老舗、継続し続ける企業が多い。1400年以上続く大阪の宮大工金剛組を持ち出さなくても、地方を歩けば数百年続く会社は山ほどある。良く言われることであるが、継続を可能とするには「変化対応力」が不可欠であると。しかし、同時に「守るべき何か」「継続すべきは何か」を明確にするということである。
企業経営における「有用性」という視座に立てば、まず「有るもの」を見直し、使い回したり、転用したり、知恵を駆使して生き延びてきた。「有るもの」、それは技術であったり、人材であったり、お金では買えない信用・暖簾であったりする。勿論、こうした無形のものの前に、有形の土地や建物、設備といった資産の活用も前提としてある。つまり、サバイバル時代の重要な戦略は、変えるべきことと、継続すべき、守るべき何かを明確にすることから始まる。

洋食器の製造で知られている新潟燕三条では、金型製造技術や研磨技術が携帯電話や小型航空機の部品製造にまで転用されている。タオルの産地である四国今治のタオル製造の再生もしかりである。農産物でも、10年ほど前から米やりんごを中国を始めヨーロッパへと輸出している。日本酒もしかり、ドバイショックでその後どうなったか確認していないが、中東にスイカまで売りに行っている。国や業界という垣根を越えて、それぞれ「有るもの」を自在に生かし切る知恵の結果である。
サバイバル時代に生き残るための知恵、それは既に「有るもの」に対し、少し離れて見る、俯瞰的な視座を必要とする。それは企業も生活者もサバイバル時代を生きることにおいて同じである。そして、提供する側の目的や意図とは違って、使い回したり、転用したり、何かの替わりに使ったり、思いがけないところでヒット商品が生まれる、それがサバイバル時代の特徴だ。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:40Comments(0)新市場創造