2010年01月31日

◆聖域、家計における教育支出の削減

ヒット商品応援団日記No440(毎週2回更新)  2010.1.31.

確か昨年9月頃のブログに、現状は消費氷河期の入り口あたりで未だ本格的には極寒状態ではないと書いた。その理由として、遊び・レジャー支出が減少する中で、固定フアン(リピーター)によって支えられている東京ディズニーリゾートの集客が減少傾向には至ってはいないこと。(昨年度との比較だけではないという意味)また、当時の家計調査による教育支出が横ばい傾向にあったこと、この2点によるものであった。所得が減少し続ける家計状態、わけあり商品や少しでも安いバーゲン商品、あるいは官製販促支援を受け燃費もお得なHVカーを・・・・・こうした生活防衛的支出にあって、好きを超えたディズニー・オタクに近い遊びへの支出と子供への教育支出。後者については、そんな親の子への気持ちの表れが家計支出の指標に出てきていると考えたことに依る。

周知のように、教育への支出(私費負担)は韓国に次いで日本は二番目に高い。OECDによると、データがあるすべての国で教育に対する国による財政支出は1995年から2006年の間に増加している。一方、私費負担は4分の3以上の国で国の財政支出の伸びを上回る率で増えておりOECD平均では教育支出の15.3%が私費負担となっている。日本の場合、この私費負担が33.3%とOECD平均を倍以上上回っており、OECD加盟国の中で日本より私費負担が高いのは韓国(41.2%)だけだ。つまり、日本は家計への負担が極めて高い国ということである。

ところで、この教育支出について1/27文科省から発表があった。塾や習い事といった「学校外活動費」が前回06年度の調査結果と08年度と比較し大幅に支出が減っている。高校では私立が1人当たり23.9%(6万2千円)減の約19万8千円、公立は9.8%(1万7千円)減の約15万9千円と、いずれも94年に現在の形の調査が始まって以来、最低になったと。しかも、この調査の実施時期は08年4月ー09年3月で、つまりリーマンショック以前も含まれており、この数字以上に現状は悪くなっているということだ。学費の高い私立高においても、学校外教育への支出減少は、多くの生活者に不況が広く浸透していることが分かる。ちょうど大学への受験シーズンであるが、学費の高い私大ではなく安い国公立大、しかも生活費の安い地方大学への志望が高くなっているという。
世帯収入別のデータや幼稚園から高校卒業までの学習費の総額も出ており、文科省のHPを参照されたらと思う。(文科省、『平成20年度「子どもの学習費調査」の結果について』より)

東京ディズニーリゾートの下半期の集客予想が公表されていないので何とも言えないが、子への教育私費負担の減少を見ると、やはり消費厳寒期に入っていると見なければならない。子は親にとって未来であり、子への教育費は取り崩したくない聖域である。しかし、その聖域が崩れ始めてきたということだ。
2010年度の国家予算の論議が国会でこれから始まるが、子ども手当を含めた教育関連予算がすんなり通ったとしても6月からの支給となり、その政策効果が出るのは夏頃からであろう。エコカー減税やエコポイント制の住宅への拡充があったとしても、需要の先食いであり、昨年から始まったこの制度がどこまで内需活性を伸ばしきれるか、暗澹たる思いがしてならない。

前回のブログでも書いたが、東京有楽町西武が今年度末をもって閉店すると報じられ、マスコミは一斉に苦境にある百貨店業界を取り上げた。いつものパターンで、「昔の百貨店には夢があった」などといったインタビューコメントを添えていたが、夢を持ち得ない時代にいることを指摘することはない。百貨店を支えてきた中流層はこの10年間で崩壊し、その中で最後のサバイバル競争に臨んでいるのが百貨店である。昨年9月、大阪梅田阪急百貨店が部分リニューアルしたが、その時従来のフロア構成を変えて、1階をスイーツ売り場とした。これも生き残るための一つの方策である。三越・伊勢丹グループを始め、高島屋もそうであるが、中国へ進出する、出店を加速させる、これも一つの方策である。従来のビジネス慣習から、自らMDし、リスクを負って1万円台のスーツを製造販売する、これも一つの方策である。売れ残ったお歳暮商品をわけあり商品として販売する・・・・・・・小売業は常に顧客の消費価値観を体現するものである。

情報の時代とは断片情報が行き交う時代のことである。数年前、食品偽装という体験を通し、断片情報の時代の生活の仕方を学んできた。体験、リアル、実感、そうした確かなものにしか価値を認めない、そうした自己防衛的ライフスタイルを持つに至った。また、断片情報は常に憶測を生み、憶測は更なる憶測を生む。それは噂になり、疑惑へと進み、結果不安を生じさせる。無数の小さな不安は、いつしか不信となり、内側へ、内側へと消費心理は向かう。そうした心理市場にあっては、安全、安心、更には信用、信頼という基本原則をかたくなに貫き通すということだ。
聖域といわれてきた子どもへの教育支出が削減に向かっている。こうした時代のビジネスは、信用・信頼という原則を愚直にまで実践し続けることだ。結果、閉ざされた心理の扉を開けることへとつながっていく。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:51Comments(0)新市場創造