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2008年07月16日

◆ライフスタイルの素(もと)

ヒット商品応援団日記No283(毎週2回更新)  2008.7.16.

多くのマーケッターの最大関心事は、石油や穀物の原材料高による値上げが更に進んだ場合、生活者のライフスタイルにどのような「質的変化」を与えるかという一点につきる。今回の原油高については、1970年代のスタグフレーションを引き起こした第一次・第二次石油ショックと較べそれほど大きくはないものの、深刻さは生活の細部にまで問題化している。

昨年後半から私が指摘してきた変化は、結論からいうと厳選&回数減であった。今まで以上に厳しく選ぶ傾向、それは価格は勿論のこと、素材のクオリティからデザイン&スタイルまで、付加価値などという生半可な世界などすぐに見破ってしまう消費のプロが顧客となったという事実。更には、例えば毎週1回行っていた外食が2週間に1回となったり、シーズン毎に買っていたウエアは1年に1回となり、着回しコーディネートしたり、といった具合に回数を減らす消費傾向。あるいは、どうしても欲しいブランドはアウトレットでまとめ買い、といった消費も当然含まれる。つまり、ある意味では減選という「量的変化」についてであった。

こうした消費傾向は、いわば生活の質を落とさずに、節約したりやりくり算段したりといった生活を工夫する消費である。恐らく、これから出てくる論議は、収入ベースで考えると、1992年頃の生活水準であるとか、いや1985年頃である、といった過去に戻る論議となる。確かに、将来の収入に悲観的にならざるを得ない情況認識は多くの生活者の実感としてあり、一つの方法には違いない。しかし、もう一つの可能性は収入に合った、身の丈サイズの新たなライフスタイルの創造である、と私は考えている。

ライフスタイルというカタカナの世界が日本にもたらされたのは1960年代であったと思う。米国のTV番組を通じてもたらされたが、初めて具体的な商品を通じライフスタイル実感を提供してくれたのは故・石津謙介さんによる「VAN」であった。団塊世代にとっては懐かしいブランドであるが、単なるファッションではなく、アイビールックという米国の学生文化の臭いがするライフスタイルを提案し、大きな衝撃を広く社会に与えた。辞書をひけばわかるが、Lifeには生活としての意味と共に、生き方や生命としての在り方までを包含した世界としてある。つまり、ライフスタイルというキーワードはまさに今まで無かった概念世界であった。そして、今では当たり前となっているT.P.O.という時、場所、場面ごとの商品提案も新鮮であった。

以降、百貨店を中心に様々なライフスタイルが提案される。第一次、第二次オイルショック、ニクソンショックを経て、様々な角度、切り口によるライフスタイルが提案されていく。DINKS(ダブルインカムノーキッズ)というライフスタイルなんかもその一つであった。バブル崩壊以降、それまでの米国を中心とした「洋」のライフスタイルから「和」への転換、あるいは「スピードライフ」から「スローライフ」へと、ライフスタイルの見直しが始まる。団塊ジュニアによるセレクトショップが生まれ、個性化というキーワードと共に、自らライフスタイルを創っていく方向へと進化していく。

そして、21世紀を迎え、注目されたライフスタイルがLOHASであった。元々、米国スタンフォード大学で学びMBAを取得したビジネスエリートが、自ら創ってきた物質文明への批判、見直しが始まりであった。日本においては2004年4月の「ソトコト」創刊によって広く認知されることとなる。しかし、江戸のライフスタイルをスタディすればすぐ分かることであるが、日本は最もLOHASな国であったし、今もそうである。その潮流に「和」ブームがある。1年半ほど前に、この日本版LOHASについて次のように私は書いた。

LOHASが今なお最も生活現場に色濃く残っているのが京都である。「始末(しまつ)」ということばがあるが、単なる節約を超えて、モノを最後まで使い切ることであり、その裏側にはいただいたモノへの感謝、自然への感謝の気持ちが込められている。そして、「始末」には創意工夫・知恵そのもでもある。誰でもが知っている、「にしんそば」も「鯖寿司」も、内陸である京都が生み出した美味しくいただく生活の知恵・文化である。もう一つ素晴らしいのが、季節、祭事、といった生活カレンダー(旧暦)に沿った暮らし方をしており、「ハレ」と「ケ」というメリハリのある生活を楽しんでいる点にある。京都をLOHASの代表としたが、こうした風土に沿った固有の文化ある暮らしは、地方を歩けばいくらでもある。

まだ仮説の域をでないが、グローバリゼーションという新たな妖怪に対し、日本版LOHASこそ次なるライフスタイル創造という質的転換への着眼、あるいはヒントになるのではと思っている。適当なキーワードが無いため、ここでは日本版LOHASという表現を使うが、勿論2004年日本で展開されようとしたブランドとしての日本版LOHASではない。戦後60数年、私たちはライフスタイルを全て外から取り入れてきた。しかし、実は足下に知恵やアイディア溢れたライフスタイルの素が眠っていたということだ。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:47Comments(0)新市場創造