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2008年01月09日

◆OLD NEWの豊かさ 

ヒット商品応援団日記No232(毎週2回更新)  2008.1.9.

前回スモールビジネスへの再編、小単位化について書いた。これは生活者レベルに置き直すと、小さければ無駄を無くすことが可能でエコロジーにも直接つながるテーマであった。おそらく「小」の世界を「エコ単位」と呼ぶ時代が来たということである。マイ箸やエコバックといった小さなヒット商品を入り口に、エコ単位によるライフスタイルが基本になっていくと思う。

ところで10年ほど前に、幕内秀夫さん(管理栄養士・フーズ&ヘルス研究所代表)が「粗食のすすめ」を提案され話題になったことがあった。しかし、当時は健康というより、ダイエットの方に消費欲求が強かったため、幕内さんは粗食を素食(そしょく)、シンプル&ナチュラルという意味に言い換えられた。私ならば、素食(もとしょく)と呼んで、長寿の素・健康の素である「普通回帰」、以前の普通とはひと味もふた味も違う素敵な「普通」を提案すれば良かったのではと思っていた。この普通を千年に渡り連綿と続けているのが京都である。

「素食」というと、何か貧しいように受け止められがちであるが、実は極めて豊かな「普通」を指し示す世界である。周知のように、ハレの日とケの日という四季の生活カレンダーが今なお生活に根づいているのが京都である。ケの日、つまり普段は「始末」して暮らし、ハレの日はパッと華やかに。そうしたメリハリのある生活習慣が、食=台所に深く浸透している。例えば、ハレの日=お祭りだと鯖寿司ということになる。ケの日だと、今月も「渋うこぶう(しまつして、という意)暮らせる様に」と、にしんと刻み昆布をめおとだきにして、あずき御飯も炊き、大根と人参のなますを付け合せるといった具合に。京都や滋賀では近江商人の心構えである「しまつしてきばる」という言葉を今でも日常的に使っている。「しまつ」とは単なる節約ではなく、モノの効用を使い切ること、生かし切ることであり、「もったいない」というエコライフにつながる意味合いの言葉だ。

今までの都市生活者のライフスタイルは、「変化」をいち早く取り入れ楽しむといったいわばフローによるライフスタイルであった。特に海外の話題、ニュースといった「鮮度情報」による消費が中心であったが、最早一般化し表層ばかりを追いかけることを見直し始めてきた。結果、興味・関心は過去へ日本文化へと移ってきた訳だ。これが和ブームであるが、今の若い世代にとっては、古(いにしえ)が新しい・OLD NEWということである。数年前から京の町家に住みたいと移住する若者が多く、時を重ねた日本文化に新しさを感じているのだと思う。一時期コンクリートによる打ちっぱなし家屋や施設が流行ったことがあるが、そこに文化という奥行き、ストックを感じることは無かった。今日の古民家ブームの本質は千年建築に代表される日本文化を楽しむということだ。

昨年「偽」というキーワードがあらゆるところを席巻したように、情報に振り回される生活から、時を経た「確かさ」「深み」のある生活への転換が始まっている。こうしたOLD NEWは京都だけではない。足下には多くのOLD NEWが眠っていて、アースダイバーではないが掘り起こせばよいのだ。しかし、ただ単に古ければ良いという訳ではない。時を重ねてきた「古(いにしえ)物語」が必要である。海から遠く離れ、鮮度という資源を持たない京都は、身欠きニシンや昆布といった塩乾物に手を加える知恵やアイディアを産み出した。このOLDをNEW足らしめるには、やはり知恵やアイディアが必要ということだ。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:32Comments(0)新市場創造