2007年05月06日

◆変わる観光概念     

ヒット商品応援団日記No164(毎週2回更新)  2007.5.6.

連休前に東京ミッドタウンと東京駅新丸ビルがオープンし、連日10数万人の観光客が押し寄せている。私も連休の合間のウイークデーに観光(!)したが、ほとんどの人は東京周辺及び地方からの文字通りの観光客である。商業施設は時代のライフスタイルを提案していることから、その新しさ、珍しさ、面白さに人は注目し集まってくる。こうした情報集積度の高い都市観光の先駆者は、1990年代後半の渋谷109であった。当時、中学生の修学旅行先の一つが東京ディズニーランドと渋谷109で、今もこの傾向は続いていると聞く。また、数多くのイベントが開催されているが、特に女子ビーチバレーの浅尾美和の試合に多くのフアンが東京お台場に集結したと報じられた。
以前、「まだら模様の情報格差」というテーマでブログを書いたが、この連休における集客情況を見ていくと、話題という情報の集積度、その量と質において都市と地方との格差が生まれていることを実感する。

地方にも魅力ある情報集積をして再生復活した多くの町や村がある。私の友人が住む京都府旧美山町は日本一美しい里山のあるところである。林業が廃れていく中で里をかたくなに守っていくことから、結果多くの移住者が生まれ人口も増えて来た。宮崎県の綾町も同様で、日本一の照葉樹林のある村で、ここに大きな吊り橋をかけ今では年間100万人もの観光客が訪れている。古くは、大分湯布院や熊本黒川温泉、滋賀県長浜の黒壁、こうした地方に多くの観光客が訪れている。かたくなに里山や町並み、小川、樹林、こうした自然や文化を守って来た結果、それが都市生活者にとって魅力となってきたということだ。つまり、都市が失ってしまったものを回復するための本能行動と言えよう。東京近隣県の那須や蓼科、あるいは千葉房総に住まいを造り、「週末農民」といったライフスタイルが団塊世代を中心に広がっている。5月4日には私の住む隣町成城に会員制の農業クラブ「アグリ成城」(http://www.agris-seijo.jp/)がオープンした。小田急線の高架化に伴う土地(線路)利用の一環であるが、シャワールームなどの設備が整った至れり尽くせりのクラブで会費は年会費約13万〜52万となっている。

都市も地方も大観光産業時代を迎えている。ある意味大移動化社会になったということである。一番人気の沖縄にも多くの団塊世代が移住し始めているが、いわゆる定住としての移住ではない。都市との行き来を踏まえた移住である。ライフスタイル的に言うと、滞在型の「移動生活」だ。これから先、1泊2〜3万クラスのホテルが次々と作られると聞いている。サイパンやグアムに行くなら沖縄へといったことから観光客は増加していくと思う。しかし、逆のことを言うようであるが、従来の自然資源にウエイトを置いた在り方だけでは廃れていくと思う。地方では、あるがままの自然資源だけでは最早観光にはならないということだ。都市の中にも、東京ミッドタウンのような都市公園、アグリ成城のような都市農園が出来ており、わざわざ時間をかけて移動する必要はなくなる。回数多く来てもらおうとするならば、観光という概念を変えなければならない。これは私の持論であるが、キーワードで言うと、次の観光は生活文化観光となる。つまり、地方に残されている日常生活を楽しんでもらう生活、文化、人を舞台へと上げた第二の我が家、第二第三のふるさとのような関係づくりである。「また、あの人に会いたい」「心癒される生活」観光とでも呼べるようなものである。

今、都市において自然を取り戻す動きが活発である。多摩川には鮎が戻り、東京湾も一時期と比べきれいになった。お台場から豊洲にかけた海辺は海浜リゾート化していく。自然のままでの農業体験ではないが、農業もどきは既にある。今、東京は散歩ブームで、テーマを決めた散歩クラブが無数存在している。横丁裏路地に残されている昭和の生活文化を巡る散歩である。もし、地方観光を活性化させるものがあるとすれば、人と人との関係に着眼した地域文化あふれる「ふるさと観光」だと思う。東京はと言えば、1500兆円という金融資産を狙って世界の金融関連企業が集まる金融都市。あるいは東京ミッドタウンを中心にしたデザイン都市。どんな性格の都市を目指していくのかこれからであろうが、いずれにせよ世界中のモノや文化、人が集積された「地球都市TOKYO」観光ということになっていく。つまり、世界中の「今」というライフスタイルを手にすることができるということである。都市も地方も新たな観光産業という視点が求められている。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:47Comments(0)新市場創造